***Believe vol.1 〜総つく〜*** |
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*こちらは「Fantasista」「Promise」から続くお話になります。 「また喧嘩したのかよ」 美作さんがうんざりしたように言うのに、あたしはむっと顔をしかめる。 「だって・・・・・」 「今度は何が原因だよ?」 「お義母様が、男の子を産めって言うから」 「って―――お前、妊娠したのか!?」 美作さんが身を乗り出してくるのに、思わずのけぞる。 「そ、そうじゃなくて!これからのこと!」 「なんだよ、焦らせんなよ」 「―――とにかく、そう言われたから言ったの。そんなの、生まれる前からわかりませんって。そしたら、今は産み分けができるんだから、なんとかなるはずだって。それでつい、あたしもむきになっちゃって・・・・・産み分けなんて、絶対しないって―――」 「言ったのか?おまえなー・・・・・」 美作さんが大きなため息をつく。 「だって・・・・・言っちゃってから、しまったとは思ったんだよ。でももう、お義母様の目がものすごい怖いことになっちゃってて・・・・・やばい、と思って逃げてきちゃった」 「―――で、これからどうするつもりだよ。ずっと俺のとこにいるわけにいかないだろ?どうせ総二郎にはすぐばれるんだし」 西門総二郎という、茶道の次期家元という男に嫁いでもう3ヶ月が経とうとしていた。 初めは反対していた彼の母親も、最終的にはあたしを認めてくれ、幸せな結婚生活を送る―――はずだったのだけれど。 事あるごとに、お義母様と意見のぶつかるあたし。 ただおとなしく従うということができない性分で、ついつい余計なことを言ってしまうのが原因なのだけれど。 総二郎は忙しく、あたしとお義母様のそういう問題にもかまっていられないというのが現実で・・・・・ あたしはそうやってお義母さまとぶつかるたびに、美作さんの家へ逃げ込んでいたのだった。 「―――夕方には帰るよ。ごめん、いつも迷惑かけて」 そう言ったあたしの頭を、優しく撫でる美作さんは。 呆れたような、それでいて優しい笑みを浮かべていて、やっぱりこの人の傍は安心できると実感させられた・・・・・。 「あれ、やばいとこに来ちゃった?」 突然聞こえてきた懐かしい声に、はじかれたように振り向く。 そこにはやっぱり懐かしい顔が。 「類!!」 「お前、いつ帰ってきたんだよ!?」 笑顔を浮かべ、部屋に入ってくる花沢類。 「今朝、着いたんだ。連絡しようと思ったんだけど結構過密スケジュールでさ、会えるかどうかもわからなかったし。でも取引先の都合で予定変更。3日間、暇になったから遊びに来た。牧野―――じゃないんだっけ。つくしはどうしてここに?あきらと不倫でもしてるの?」 自然に呼ばれた名前に、ちょっとドキッとする。 「変なこと言わないでよ、不倫なんてするわけないでしょ」 「ま、喧嘩するたびに俺んとこ来てたら、怪しまれても無理ねえけどな」 美作さんがくすくす笑う。 「だって・・・・・実家には弟夫婦がいるし、優紀も結婚しちゃったし、桜子や滋さんは海外だし。美作さんのとこくらいしか―――」 「それだけじゃねえだろ?俺んとこにいれば総二郎の奴が絶対迎えに来るってわかってる。だから来るんだろうが」 にやにやと笑って言う美作さんに、ちょっと悔しくてじろりと睨む。 「べ、別に―――。迎えに来てほしいと思ってるわけじゃないもん」 「お前のそういう意地っ張りな性格も喧嘩の原因の1つだろ?」 「う・・・・・」 言い返す言葉もなく凹んでいると、類がちょっと考えるような素振りをして、口を開いた。 「じゃ、今回は俺のとこに来る?」 「は?」 その言葉に目を丸くするあたし。 「少し、あの家を離れてみるのもいいんじゃない?総二郎は俺が帰ってきてることまだ知らないし」 類の言葉に、美作さんの瞳が輝きだす。 「それ、おもしれーな。総二郎の泡食った顔が目に浮かぶわ」 「ええ?ちょっと、美作さんまで!」 「そのくらいしてみろって。総二郎にだって反省すべきとこがあんだし。お前が真剣に離婚でも考えてるってなったら慌てると思うぜ」 「離婚!?」 その言葉に青くなり。 対照的に楽しそうに笑っている2人の男を眺め見たのだった・・・・・。 |
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