「総二郎に聞いたんだ。牧野がここに就職したって」
類がつくしを抱きしめたまま言う。
「―――帰ってきてたなんて、知らなかった」
以前はメールなどのやり取りがあった総二郎とも、最近は疎遠になっている。
だから、F4のことは新聞やテレビで報道されることくらいしか知らなかったのだ。
「知らせようかと思ったんだけど―――携帯、変えたでしょ。番号も」
「あ―――前のが、壊れちゃって。新規の方が安かったから」
「総二郎も、連絡取れないってぼやいてたよ」
そうか、番号変わったことも知らせてなかった・・・・・。
「―――一緒に、食事でも行こうかと思ったんだけど」
その言葉にドキッとして、つくしは類から離れてその顔を見上げた。
「今日は、約束ある?」
「―――聞いてたの?さっきの電話」
「声かけようと思ったらちょうどかかってきたから、待ってた。邪魔しちゃ悪いと思って」
彼との約束。
別に後ろめたいことなんてないはずなのに、つくしは何となく居心地が悪くなって類から目をそらす。
「あの―――同僚の先生と、食事することになってて―――」
「彼氏?」
まっすぐに見つめる視線を感じて、つくしはごまかすこともできず小さく頷いた。
「先月から、付き合ってて・・・・・」
「―――そう。じゃ、そのあとでいいや」
「え?」
「その食事の後。迎えに行くから、会おうよ」
「や、でも―――」
「その後も予定ある?」
「ないけど―――」
「じゃ、いいじゃん」
にっこりと、有無を言わせぬような微笑み。
つくしは何と言っていいかわからず―――
「じゃ、またね」
呆然としているつくしをよそに、類はそう一言言い残すとその場を後にしたのだった・・・・・。
その後のつくしは、授業にも身が入らず、入る教室を間違えたりと散々で・・・・・
類が一体何を考えているのか。
昔からわかりづらい男ではあったけれど。
ただ一つわかることは、久しぶりに会った花沢類に、つくし自身とても動揺しているということだった・・・・・。
|