『―――大好き、だよ。すごく―――すごくね―――愛してる―――』
遠くの方で、なぜかあたしの声が聞こえる。
―――頭がぼーっとする・・・・・。
「―――どうせなら、俺に直接言えっつーの」
突然聞こえてきたその声に驚き、あたしはがばっと体を起こす。
「よお、ようやく起きたか。もう昼だぞ」
そう言って笑ったのは、ベッドに腰掛けた西門さんで。
見渡せば、ここは西門さんの部屋で―――
そして目の前の大画面テレビでは、なぜかあたしと類が寄り添う映像が―――
それは、昨夜のあたしたちの様子・・・・・・
「な―――何これ!?」
「ああ、ずいぶん飲んでんな」
「そ、そうじゃなくて!なんでこんな―――」
「映像があんのかって?そりゃあきらがこっそり撮ってたからだろうな。おかげでお前の本心も聞けたってわけだ」
確信犯的に微笑む西門さんに。
あたしは体温が一気に上昇したのを感じた。
「あ、あれは―――!お、お酒飲んでたから!」
「へ―え?じゃあれは本心じゃねえの?俺のことを愛してるって」
ぐっと顔を近づけられて。
「そ、それは―――!」
「―――つくしちゃん?で、酒飲んでたとは言え、なんでこんなに類にくっついてんのか聞きたいんだけど」
そう言ってあたしを見つめる瞳に、ちらちらと嫉妬の炎が見えて。
あたしは思わずベッドの中で後ずさる。
「お、覚えてないよ、そんなの酔ってたんだから―――」
「へ―え、酔ってるとお前はこんな風にべたべたくっつくわけだ?じゃあこれからは俺のいねえとこで酒なんか飲ませらんねえよなあ」
ずるずると後ろに下がろうとするあたしの腕を、西門さんの腕がグイっとつかんで引きもどす。
「類のことも、あきらのことも好き―――。親友だから?まあ納得してやらなくもねえよ。けど、お前もいい加減もう少しあいつらのことを少しは警戒しろ。特に類は―――お前のこと単なる親友としか思ってねえわけじゃねえって、わかってんだろうが。無防備にあんな風にひっつくんじゃねえよ」
「―――痛い、よ、西門さん。離して―――」
「ああ、離してやるよ。お前が俺の聞くことに答えてくれたらな」
ぐっと近づく西門さんの目は、怖いほどに真剣そのものだった。
「な、何・・・・・?」
「酔った勢いなんかじゃなくて―――ちゃんと素面の状態で聞きたい。俺のこと―――どう思ってる?」
どきんと、胸が鳴る。
ものすごい速さで脈打ってるのが、つかまれた腕からも伝わりそうだった。
「そ、そんなの―――言わなくたって・・・・」
「今、聞きてえんだ、お前の口から。ちゃんと―――聞かせてくれよ」
ごくりと唾を飲み込む。
それでも喉がからからに乾いていて。
声が思うように出ていかない。
「―――愛してるって、言ってくれよ」
西門さんの手が、あたしの頬をなでる。
「お前の、その口で―――」
「言ったら―――どうなるの・・・・・?」
「―――何でもしてやるよ。お前のためなら―――だから、言ってくれよ」
間近に迫る、そのきれいな顔を見つめる。
「―――何にも―――してくれなくてもいいよ」
「―――何で」
「いてくれるだけでいいから―――あたしのそばに」
その言葉に、西門さんの目が見開かれる。
「そばに、いて。こうして触れられるところにいてくれたら―――他には何もいらないから」
「いるだろ、いつだって―――お前こそ、俺から離れていくなよ。この手から―――離れるな」
そっと、触れるだけのキスをして。
その温もりを確かめる。
「―――愛してるよ。あたしは―――西門さんが好きだよ」
喉が痺れるみたいな感覚。
ようやくあたしの口から紡ぎだされた言葉に、西門さんが嬉しそうに微笑む。
「おれも―――愛してる」
そうして今度は深く口づけて。
二度とこの手を放したくないって、そんなお互いの思いをかみしめていた―――。
「さすがにあいつらももう大学に行ったか」
2人でリビングに行くと、そこはきれいに片づけられていて。
「もうお昼だもんね―――。コーヒー飲む?」
「ああ。―――牧野」
「ん?」
コーヒーメーカーをセットするあたしを、じっと見つめる西門さん。
「何?」
「―――今度の週末、うちに来てくれないか」
「え―――西門さんちに?」
「ああ―――お前を、親に紹介したいんだ」
その言葉に。
あたしは危うく手にしたコーヒーカップを落とすところだった・・・・・。
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