-tsukushi-
「いいじゃん、一緒に住んじゃえば」
類の言葉に、あたしは溜め息をつく。
「簡単に言わないでよ。あの西門さんだよ?あたしがあの家に住むの?」
「いやなら、マンションでも借りれば。楽しそうじゃん」
そりゃあね、あたしだって。
ようやく実ったこの恋を大切にしたいし。
西門さんといつも一緒にいたいという気持ちはあるけれど。
でもいきなり同棲なんて。
「いいなあ、同棲。もしマンション借りるなら、俺遊びに行くから」
完全に面白がってる類を恨めしげに見て。
「人ごとだと思って・・・・・」
「人ごとだし。だいたい、何を迷ってるんだかわからない。一緒にいたいなら、一緒にいればいい。そうできない理由もないでしょ?」
類の言葉に思わず詰まる。
「そりゃ、まあ―――」
「もしかして、総二郎と同棲っていうのが怖いとか?」
あの総二郎だし?
と、にやりとする類に。
ぎくりとするあたし。
「じゃ、こうすれば?」
「な、何?」
「俺も一緒に住むとか」
意味のわからない提案に。
あたしは目が点になったのだった・・・・・。
-soujirou side-
「却下」
俺は一言、そう言った。
ようやく気持ちの通じ合った牧野と、いつも一緒にいたくて。
『一緒に住もう』と牧野に言ったのは昨日のこと。
それに対して、なぜか今日類が『俺も一緒に住みたい』と言って来た。
冗談じゃない。
同棲なんて、2人でするもんだ。
どうしてそこに類が入ってくるんだっつーの。
「いきなり同棲っていうのが、抵抗あるんでしょ?牧野は。なら、3人で住むとかならいいんじゃないの?」
にこにこと楽しそうな類に。
俺は額に青筋を浮かべて。
「だから、なんでお前も一緒に住むんだよ?俺は牧野と一緒に住みたいって言ってんのに!」
「けど、牧野は迷ってる。このままだとその企画も流れると思うんだけど」
「なんで」
「牧野の性格からして、親にもらった金でマンション借りて同棲なんて、納得するとは思えない」
その言葉に、俺もぐっと詰まる。
確かに、それは俺もそう思っていたけれど―――。
「だから、それなら俺のマンション使えば」
「―――は?」
「大学の傍に、あるんだよ。通学に便利だからとか言って、親が買ったマンションが。自炊するのが面倒で、たまにしか使ってないけど」
「なんだそりゃ。初耳だぞ」
「言ってなかったからね。だいたい、何にも置いてないから行っても寝るくらいだし。だから、そこ使ってもいいよ。ただし、俺も一緒に住むっていう条件付きならってこと」
確信めいた類の笑顔に。
俺は、白旗を上げるしかなかった・・・・・。
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