***もっと酔わせて vol.3 〜総つく〜***



 
 -soujirou-

高等部の非常階段。

ここが、牧野と類がよく会ってる場所だ。

それは牧野と司が付き合ってる頃から変わらない。

あの2人の関係を、いまさらとやかく言うつもりはないけれど。

彼氏としちゃあ、面白くはない。

「あれ、総二郎」

「西門さん?どうしたの?」

「―――おれがここに来ちゃいけないか?牧野が、類とどっかに消えたって言うから」

「消えたって・・・・」

「ここは、俺と牧野にとって癒しの場所だから」

「そこに俺はいちゃいけないわけ?」

類の目に、挑戦的な光が見えた。

こいつの気持ちはわかってはいたけれど。

でも、こんなに挑戦的な態度をとる奴だったか?

「ちょっと、2人とも・・・・・ていうか、西門さんは何か用事だったんじゃないの?」

「用事がなくちゃ会いに来ちゃいけないか?俺はお前の彼氏だろうが」

その言葉に、牧野の頬が微かに染まる。

「そ、それは―――」

「けど酔った勢いってやつでしょ?」

すかさず割って入る類に、やっぱり他意を感じる。

「類、何が言いたい?」

「総二郎が酔った勢いで言った言葉なんて、信用できるのかなって思ったんだけど」

にやりと笑う類。

その言葉にカチンときて、思わず類を睨みつける。

「てめえ・・・・・言っていいことと悪いことがあるぜ」

「なら、今までのも全部本気だった?さんざん女を口説いてるのを見て来たけど」

言われて、ぐっと詰まるが・・・・・

「―――昔のことだろ?」

「そう?でも総二郎ってそんなイメージだし。牧野だってそう簡単に総二郎の言葉信じられないんじゃない?」

牧野を見ると、類の言葉に困ったように目を泳がせている。

「―――おれの言葉が信じられないわけ?」

「だって―――酔った勢いっていうのは本当じゃない。そんなの、たくさんの人に言ってるでしょ?」

「だからって、お前に冗談でそんなこと言うと思ってるのかよ」

「そんなの、酔ってるんだからわからないじゃない!」

「酔ってねえよ!」

思わず叫んだ言葉に、牧野が目を見開く。

「だって―――」

「酒でも入んなかったら―――お前に告白なんか、できなかった」

「意外と臆病だからね」

「類、うるさい」

じろりと睨むと、ひょいと肩をすくめる類。

「マジで―――俺は、お前が好きだから。だから―――俺のこと、信じてくれ」

ただ信じてほしくて。

それだけを思って牧野を見つめた。

その瞬間、牧野の瞳からは大粒の涙がこぼれた・・・・・。



 -tsukushi-

「やきもち妬いたの?」

あたしの言葉に、西門さんの頬が微かに染まった。

「悪いか。だいたい、お前が類と消えたりするから―――」

「別に、消えてないし。あの場所に類といるのなんて、いつものことだよ」

「それが気に入らねえ。どうにかなんねえのかよ」

「そう言われても・・・・・。あの場所は、あたしと類にとって特別なんだよ」

非常階段で2人でいたあたしと類。

あたしにとっては当たり前の日常なんだけどな。

「―――じゃ、その代わりに俺にも特典くれよ」

「特典?」

「そ。例えば―――」

そう言って、西門さんは何かを思いついたようににやりと笑った。

その笑みに、あたしの背中を嫌な汗が伝う。

「え―と、あたしこの後用事が―――」

さりげなく目をそらし、そのまま離れようとしたあたしの腕を、西門さんの手が掴む。

「この俺から、逃げられると思ってる?つくしちゃん」

「てか、なんで特典?」

「お前が類とあの場所で会うことを許すから」

「べ、別に西門さんの許しは―――」

いらないと思うんだけど?

「俺がそれを我慢する代わりに、お前から特典をもらう」

「―――で、その特典って?」

「一緒に暮らそう」

「―――――はあ!?」

西門さんの言葉に。

文字通り、あたしは固まってしまったのだった・・・・・。





  

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