-tsukushi- 「こんなところにヘリポートが・・・・・?」 あたしは目を丸くした。 みんなで道明寺を見送るために外に出たあたしたち。 入り口の方に向かうのかと思ったら、ホテルの敷地内を奥へ奥へと進む4人。 そして突然目の前に現れたのは、大きなプロペラの回るヘリコプターだった・・・・・。 驚くあたしの前で、平然と会話するF4。 ―――このノリについていける日が来るのか?あたし・・・・・
4人の少し後ろで固まってたあたしを見て、類が優しく笑う。 「牧野、何してんの?こっちきなよ」 「あ、うん・・・・・」 あたしが傍へ行くと、道明寺があたしを見て笑った。 「何緊張した顔してんだよ。ヘリくらい、慣れとけよ」 「そんなこと言われたって・・・・・」 「・・・・・お前にも、迷惑かけたな」 急にそんな殊勝なこと言うから、あたしは戸惑ってしまった。 「別に・・・・迷惑なんて、思ってないけど・・・・・」 あたしの言葉に、道明寺はにっこりと笑った。 「また、遊びに来るわ」 「・・・・・うん」 「元気でな、司」 「あんまりがんばりすぎんなよ」 「・・・・・元気で」 F3が笑顔で道明寺と握手する。 先にヘリに乗っていた西田さんが司に声をかける。 「司様、少しお急ぎください。飛行機の時間が・・・・・」 「今行く。―――じゃあな!」 そう言って手を上げると、道明寺は颯爽とヘリに乗り込んでいった。 西田さんから声をかけられた道明寺は、もう仕事の顔になっていた。 あたしの知らない、道明寺の顔・・・・・ でも、その本質はやっぱりあたしの知ってる道明寺で。 会えて良かった・・・・・。 そう思った。 空に舞い上がるヘリを見送って・・・・・ あたしたちはまた、ホテルへと戻ったのだった・・・・・。
「しっかし今回は司のやつにしてやられたな。最初からこうなる予定だったんだろ?」 帰りの車の中で、美作さんが疲れきったように言った。 ハンドルを握っているのは西門さんだった。 「最終手段だって言ってたよ?その前にレイさんを説得できれば、必要なかったって・・・」 あたしの言葉を聞いて、西門さんがちらりとこちらに視線を向けた。 「縁談の話があったんだって?司のやつ」 「うん」 「結局断っちまったんだろ?いくら政略結婚だって言ったって・・・・思い切ったことするよな」 「え・・・どうして?」 あたしが聞くと、2人は顔を見合わせ・・・・・ 「・・・ま、牧野はしらねえ方がいいかもな」 「だな。気にすんな」 「ちょっと・・・・・」 隣に座っていた類が、くすくすと笑う。 「類まで・・・・何よ?」 「・・・すごい大物だったってことだよ。レイの娘と結婚てことになれば、世界的なニュースになってたと思うよ」 「え・・・・・」 あのレイさんて、そんなに大物だったの・・・・・? 「聞きたい?あの人の正体」 「・・・・・いや、いいや。なんか怖くなってきた」 知らないほうが、いいこともある。 どっちにしろもう済んでしまった話なわけだし・・・・・。 結局その話をそれ以上することもなく、あたしたちは漸く帰路についたのだった・・・・・。
-rui- あきらや総二郎と分かれ、家路についた俺と牧野。 さすがに疲れたのか、牧野も口数が少なくなっていた。 「大丈夫?まだ頭痛い?」 俺の言葉に、それでも笑顔を向けてくれる。 「ううん、大丈夫」 「部屋で休もう。何か飲み物持ってこさせようか?」 「んー、平気」 部屋に入り、バッグを置くとすぐにベッドに身を投げ出す牧野。 「はー、なんか1日しかたっていないとは思えない・・・・・」 牧野の実感の篭もった言い方に思わず噴出す。 「確かに。司と牧野が関わると、いつもこんな感じだけどね」 「変なこと言わないで。あたしじゃなくって、道明寺だよ」 不本意そうに顔を顰める牧野。 俺はくすくす笑いながら牧野の横に寝転がり、その顔を見つめた。 すぐ間近に迫った牧野の顔。 牧野は俺の視線にすぐ赤くなり、照れたように顔をそらせてしまう。 「牧野、こっち向いて」 そう言うと、牧野はおずおずとこちらに視線を向ける。 上目遣いに俺を見る牧野。 その表情が、俺を煽ってるんだってことにいつになったら気がつくんだか。 「いろいろあって疲れたけど・・・・でも、最後に牧野の気持ちがちゃんと聞けてうれしかったよ」 そう言って笑うと、牧野も嬉しそうにちょっと照れたように微笑んだ。 「・・・・・あのまま、牧野が司と一緒に行っちゃったらどうしようかと思ったけど・・・・」 「それ、ありえないよ」 「ん。でもやっぱり心配だった。総二郎やあきらも最近俺がいても関係なく牧野のこと口説きにかかるし・・・・・」 「え・・・・・」 「毎日心配ばっかりしてるよ。気の休まる暇がない」 「類・・・・・」 溜息をついて言えば、牧野が不安そうに眉を寄せる。 俺はそんな牧野を安心させるようにそっと牧野の頭を抱き寄せ額にキスを落とした。 「・・・・・早く卒業して、結婚したい」 耳元で呟くと、牧野の体がピクリと反応する。 耳が真っ赤になって、ものすごく照れているのがわかる。 「・・・・・既成事実、作っちゃおうか」 さらに声を潜めて耳元に囁くと、牧野が突然がばっと体を起こした。 「だ、駄目だよ!そんなの!」 「どうして?牧野は俺と結婚したくないの?」 「そ、そうじゃなくって・・・!」 「じゃ、何で?」 「だ、だって、まだまだ大学で勉強したいことがたくさんあるし、今のままじゃきっとあたし、類の隣には立てないもん」 牧野の答えをある程度予想していた俺は、困ったような顔をしている牧野の腕を引っ張り、腕の中に封じ込めた。 「・・・・・・わかってる。冗談だよ」 「じょ、冗談って・・・!」 「今すぐにでも結婚したいのは本当だけどね。でも、今結婚しても、俺もきっと牧野の隣に立てない。まだまだ半人前だからね。だけど・・・牧野の隣を、他のやつに譲る気はないから。忘れないで」 「・・・・・忘れたりしない・・・・・て言うか、あたしだって、同じ気持ちだもん。類こそ忘れないで。あたしが一番好きなのは類なんだから。それに・・・・・類のことを一番好きなのもあたし。この場所は、絶対譲らないんだから」 「牧野・・・・・」 普段恥ずかしがってなかなか言わないことを、照れながらもぎゅうっと俺にしがみついて強気な口調でそう宣言する牧野がかわいくて、言ってもらったことがうれしくて、俺は牧野の顔を両手で俺のほうに向けさせると、そのまま唇を奪った。 何度も口づけを繰り返すうちに、牧野の体からは力が抜けていった。 ―――やりすぎたかな・・・・・?
そう思って唇を開放してその顔を覗き込むと・・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・・」 牧野は、静かな寝息をたてて眠りについていたのだった・・・・・
―――この状況で寝られるのって、牧野くらいじゃないの・・・・・?
俺は呆れつつも、無邪気な寝顔で安心したように眠る牧野の横で、しばらくその寝顔を見つめていた。 そのうち俺にも睡魔が襲ってきて・・・・・・ そのまま2人で夜まで眠っていたのだった・・・・・。
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