***Sweet Angel vol.51***




 -rui-

 「うひゃあー、ちっちぇえー!」
「見ろよこの手!」
 入院3日目、今日はあきらと総二郎がお見舞いに来た。
 俺とつくしの腕に抱かれた優斗と快斗を見て興奮した声を上げる。
「しかし本当にそっくりだなあ。お前ら見分けつくの?」
 あきらの言葉に俺とつくしは顔を見合わせた。
「こっちが優斗」
 そう言って俺は自分の腕の中の優斗を見て笑った。
「で、こっちが快斗だよ」
 つくしも自分の腕の中の快斗を見た。
 総二郎が目を丸くする。
「へえ、さすが。こんがらがったりしねえの?」
「父親だからね。自分の子、間違えたりしないよ」
 と、俺が言うと、2人がちょっと顔を顰める。
「ま、俺らにもそのうち見分けつくようになるだろ」
 そうあきらは肩を竦め、
「だよな。毎日会ってたら、誰が父親かわかんなくなるんじゃねえの?」
 と、総二郎も言って笑う。
 その言葉に俺はむっと顔を顰めた。
「それはない。子供だって、いくら小さいからって自分の親くらいわかるよ」
「どうかな〜」
「ちょっと、やめてよ3人とも。あ―――」
 つくしがそう言った途端―――
「ふみゃああ」
 つくしの腕の中の快斗がぐずり始め、伝染したかのように優斗もぐずり始める。
「お、なんだ?」
 あきらが驚いて腰を浮かす。
「おっぱいかな。オムツは替えたばっかりだし・・・・・」
 つくしが言うと、あきらと総二郎は微かに頬を染め、顔を見合わせた。
「「おっぱい・・・・・」」
 が、つくしはそれに気付かず、早くあげなくちゃいけないと焦ったのか、パジャマの前ボタンをプチプチと外し始めたから、慌てたのは俺のほうだ。
「つくし、ちょっと待って。2人とも外出てよ」
 と止めようとしたが、時既に遅く―――

 パジャマがはだけ、つくしの胸が露に―――

 「つくし!」
 慌ててつくしの前に立つ俺。
 それでもまだつくしはきょとんとして俺を見上げている。
「え?」
「まだ2人がいるのに!」
 見れば、2人ともつくしの胸元に目が釘付けで・・・・・
「―――あ」
 そこで漸く、つくしが気付いて慌てて胸元を隠す。
「授乳するから、2人とも出てて」
 俺が2人を睨みつけると、2人は顔を見合わせ・・・・・
「別に俺ら平気だぜ?」
 とあきらが肩をすくめる。
「そうそう、赤ちゃんに授乳するのなんて当たり前だし?恥ずかしがるようなことじゃねえだろ?俺らの仲で」
 総二郎もそう言ってにやりと笑う。
「俺が平気じゃない。いいから出てって」
 ぎろりと睨みつけると、2人は溜息をついて肩を竦めた。
「へいへい。んじゃ、30分くらいその辺うろついてるわ」
「また後でな、つくし」
「あ、うん、ごめんね」

 2人が出て行ってしまうと、俺は溜息をついた。
「授乳するときは、せめてあいつらに出てってもらわないと」
「だって、2人で泣かれるとすごいボリュームで・・・・・。早くあげなくちゃって焦っちゃうんだもん」
 頬を染めながらそう言い、つくしはまた授乳するべく胸元を肌蹴、乳首を丁寧に消毒した。
「わかるけどさ、あいつらには見られたくない」
 つくしは快斗の口に乳首を含ませると、しっかりとその体を抱きかかえた。
「あたしは別に、平気だけど・・・・・」
 しれっと言われたそのセリフに、俺は腕の中の優斗がぐずるのをあやしながらも目をむいた。
「平気って!」
「だってさ・・・・・もう家族みたいなもんでしょ?それに西門さんの言うとおり、授乳するのは当たり前のことなんだし、別に恥ずかしがること・・・・・・」
「俺はいやだ」
 俺は優斗をあやしながらつくしの隣にどかっと座った。
「何で平気でいられるわけ」
「だって・・・・・」
 つくしが快斗を抱きながら、困ったように俺を見上げた。
「授乳が当たり前だって、それはわかるけど、だからって他の男にそんな姿見せたくない」
「誰に見せたって平気ってわけじゃないよ」
「じゃ、あの2人だからいいの?余計にむかつくね」
 吐き捨てるように言った言葉に、つくしがため息をついた。
「もう・・・・・。快、もういいの?じゃ、優と交代しようね」
 一旦立ち上がるとベッドに快斗を寝かせ、俺の腕から優斗を受け取った。
「お待たせ〜。おっぱい飲もうね〜」
 ベッドに座り、優斗に乳首を含ませる。
「・・・・・すっかりママっぽくなったね。昨日はまだ危なっかしかったのに」
「ふふ、看護婦さんの教え方がうまいんだよきっと。でも・・・・・こうしておっぱい飲んでる赤ちゃんって、すごくかわいい・・・・・。こういうのって、他の人もそう思うのかな。そういう可愛さ・・・・・みんなにも見てもらいたいなって思ったの」
「だからか・・・・・」
 俺は再び溜息をついた。
 つくしがなんとも言えない顔で俺を見上げ、微笑んだ。
「ごめんね。あんまりかわいいから・・・・・自慢したかったの」
 俺はその言葉に答える代わりに、つくしの額にキスを落とした。
「良いよ、今回だけは許す。けど・・・・・やっぱりあいつらには見せちゃダメ」
 頑固に言う俺に、つくしは呆れたようにくすくすと笑う。
「しょうがないな。じゃあ言うこと聞いてあげる。我侭なパパだね〜」

 優斗に向けられるつくしの笑顔は眩しいほどにきれいで・・・・・。
 なんだか少し、妬けてくる。
「・・・・・早く退院の日にならないかな」
「どうして?」
「夜は俺、帰らなくちゃいけないし・・・・・。1週間もつくしが夜いないのは寂しい」
 そっと髪を撫で、その耳をなぞるとぴくりと反応するつくし。
 微かに頬が染まる。
「・・・・・つくしは、寂しくない・・・・・?」
「そりゃ・・・・・寂しいよ、あたしだって・・・・・・」
 上目遣いに俺を見つめる瞳が潤む。
 そっと、啄ばむように口付ける―――と、

 「ふみゃああっ」
 突然ベッドの上の快斗が泣き出した。
「わっ、何?類、見てあげて。もしかしておむつかも」
「・・・・・・わかった」

 うちに帰ってきても、暫くはこの天使たちに邪魔されそうだな、と俺は思ったのだった・・・・・。







  

お気に召しましたらクリックしていってくださいね♪