-rui-
「うひゃあー、ちっちぇえー!」 「見ろよこの手!」 入院3日目、今日はあきらと総二郎がお見舞いに来た。 俺とつくしの腕に抱かれた優斗と快斗を見て興奮した声を上げる。 「しかし本当にそっくりだなあ。お前ら見分けつくの?」 あきらの言葉に俺とつくしは顔を見合わせた。 「こっちが優斗」 そう言って俺は自分の腕の中の優斗を見て笑った。 「で、こっちが快斗だよ」 つくしも自分の腕の中の快斗を見た。 総二郎が目を丸くする。 「へえ、さすが。こんがらがったりしねえの?」 「父親だからね。自分の子、間違えたりしないよ」 と、俺が言うと、2人がちょっと顔を顰める。 「ま、俺らにもそのうち見分けつくようになるだろ」 そうあきらは肩を竦め、 「だよな。毎日会ってたら、誰が父親かわかんなくなるんじゃねえの?」 と、総二郎も言って笑う。 その言葉に俺はむっと顔を顰めた。 「それはない。子供だって、いくら小さいからって自分の親くらいわかるよ」 「どうかな〜」 「ちょっと、やめてよ3人とも。あ―――」 つくしがそう言った途端――― 「ふみゃああ」 つくしの腕の中の快斗がぐずり始め、伝染したかのように優斗もぐずり始める。 「お、なんだ?」 あきらが驚いて腰を浮かす。 「おっぱいかな。オムツは替えたばっかりだし・・・・・」 つくしが言うと、あきらと総二郎は微かに頬を染め、顔を見合わせた。 「「おっぱい・・・・・」」 が、つくしはそれに気付かず、早くあげなくちゃいけないと焦ったのか、パジャマの前ボタンをプチプチと外し始めたから、慌てたのは俺のほうだ。 「つくし、ちょっと待って。2人とも外出てよ」 と止めようとしたが、時既に遅く―――
パジャマがはだけ、つくしの胸が露に―――
「つくし!」 慌ててつくしの前に立つ俺。 それでもまだつくしはきょとんとして俺を見上げている。 「え?」 「まだ2人がいるのに!」 見れば、2人ともつくしの胸元に目が釘付けで・・・・・ 「―――あ」 そこで漸く、つくしが気付いて慌てて胸元を隠す。 「授乳するから、2人とも出てて」 俺が2人を睨みつけると、2人は顔を見合わせ・・・・・ 「別に俺ら平気だぜ?」 とあきらが肩をすくめる。 「そうそう、赤ちゃんに授乳するのなんて当たり前だし?恥ずかしがるようなことじゃねえだろ?俺らの仲で」 総二郎もそう言ってにやりと笑う。 「俺が平気じゃない。いいから出てって」 ぎろりと睨みつけると、2人は溜息をついて肩を竦めた。 「へいへい。んじゃ、30分くらいその辺うろついてるわ」 「また後でな、つくし」 「あ、うん、ごめんね」
2人が出て行ってしまうと、俺は溜息をついた。 「授乳するときは、せめてあいつらに出てってもらわないと」 「だって、2人で泣かれるとすごいボリュームで・・・・・。早くあげなくちゃって焦っちゃうんだもん」 頬を染めながらそう言い、つくしはまた授乳するべく胸元を肌蹴、乳首を丁寧に消毒した。 「わかるけどさ、あいつらには見られたくない」 つくしは快斗の口に乳首を含ませると、しっかりとその体を抱きかかえた。 「あたしは別に、平気だけど・・・・・」 しれっと言われたそのセリフに、俺は腕の中の優斗がぐずるのをあやしながらも目をむいた。 「平気って!」 「だってさ・・・・・もう家族みたいなもんでしょ?それに西門さんの言うとおり、授乳するのは当たり前のことなんだし、別に恥ずかしがること・・・・・・」 「俺はいやだ」 俺は優斗をあやしながらつくしの隣にどかっと座った。 「何で平気でいられるわけ」 「だって・・・・・」 つくしが快斗を抱きながら、困ったように俺を見上げた。 「授乳が当たり前だって、それはわかるけど、だからって他の男にそんな姿見せたくない」 「誰に見せたって平気ってわけじゃないよ」 「じゃ、あの2人だからいいの?余計にむかつくね」 吐き捨てるように言った言葉に、つくしがため息をついた。 「もう・・・・・。快、もういいの?じゃ、優と交代しようね」 一旦立ち上がるとベッドに快斗を寝かせ、俺の腕から優斗を受け取った。 「お待たせ〜。おっぱい飲もうね〜」 ベッドに座り、優斗に乳首を含ませる。 「・・・・・すっかりママっぽくなったね。昨日はまだ危なっかしかったのに」 「ふふ、看護婦さんの教え方がうまいんだよきっと。でも・・・・・こうしておっぱい飲んでる赤ちゃんって、すごくかわいい・・・・・。こういうのって、他の人もそう思うのかな。そういう可愛さ・・・・・みんなにも見てもらいたいなって思ったの」 「だからか・・・・・」 俺は再び溜息をついた。 つくしがなんとも言えない顔で俺を見上げ、微笑んだ。 「ごめんね。あんまりかわいいから・・・・・自慢したかったの」 俺はその言葉に答える代わりに、つくしの額にキスを落とした。 「良いよ、今回だけは許す。けど・・・・・やっぱりあいつらには見せちゃダメ」 頑固に言う俺に、つくしは呆れたようにくすくすと笑う。 「しょうがないな。じゃあ言うこと聞いてあげる。我侭なパパだね〜」
優斗に向けられるつくしの笑顔は眩しいほどにきれいで・・・・・。 なんだか少し、妬けてくる。 「・・・・・早く退院の日にならないかな」 「どうして?」 「夜は俺、帰らなくちゃいけないし・・・・・。1週間もつくしが夜いないのは寂しい」 そっと髪を撫で、その耳をなぞるとぴくりと反応するつくし。 微かに頬が染まる。 「・・・・・つくしは、寂しくない・・・・・?」 「そりゃ・・・・・寂しいよ、あたしだって・・・・・・」 上目遣いに俺を見つめる瞳が潤む。 そっと、啄ばむように口付ける―――と、
「ふみゃああっ」 突然ベッドの上の快斗が泣き出した。 「わっ、何?類、見てあげて。もしかしておむつかも」 「・・・・・・わかった」
うちに帰ってきても、暫くはこの天使たちに邪魔されそうだな、と俺は思ったのだった・・・・・。
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