***Sweet Angel vol.46***




 -tsukushi-

 ―――パ――――ン!!

 という大きな音とともに打ち上げられる花火たち。
 道明寺邸の屋上でそれを眺めながら、あたしたちは思い思いの格好で楽しんでいた。

 あたしは大きなカウチソファーに類と並んで座り、手を繋いで・・・・。

 「ね、赤ちゃんにもこの音、聞こえてるよね」
「ん、これだけの大きな音だからね。びっくりしてるかも」
「楽しんでるよ、きっと」
「つくしのほうが楽しそうだよ」
 類がくすくすと笑う。
「だって、花火ってなんか興奮する。類は嫌い?花火」
「う〜ん・・・・・煩いよね。でも・・・・・つくしとこうして一緒に見るのは、ちょっと楽しい」
「ちょっとだけ?」
 なんとなくおもしろくなくってそう聞くと、類があたしを見て笑う。
「音が、大きすぎるんだよ」
「確かにね。でも、それがまた良いんだよ。迫力、あるじゃない?」
 そう言って、また夜空を見上げる。
 
 次々に上がる花火で、まるで昼間のように明るくなった空。

 あたしのお腹では、さっきからとんとんと元気にキックしてる赤ちゃんたち。
 また来年、ここで花火を見るときにはきっと2人の可愛い子供たちが一緒にいるはずで・・・・・。
 そう思うと、不思議な気持ちだった。

 「命って、なんかすごいね・・・・・」
「うん・・・・・」

 改めて、この世に生を受けたことに感謝する。
 そして、新しい命を授かったことに・・・・・。

 「あれ・・・・・なんだろう」
「へ?」
 類の呟きに、思わず変な声が出る。
「ほら、あれ・・・・・。こっちにくるみたい・・・・・・」
 指差す方を見ると、花火が上がっているのとは違う方向に、光が動いているのが見えた。
「何・・・・・?」
 
 全員の視線が、そちらへと向いた。
 徐々に近づいて来るそれの姿が、次第にはっきり見えてくる。

 そしてそれがなんだかわかると、みんなの表情が驚きに・・・・・・


 バラバラと大きな音を立てながらあたしたちの目の前に現れたのは、1基のヘリコプターだった・・・・・。

 屋上のヘリポートに舞い降り、そこから現われたのはもちろん―――

 「道明寺!!」

 黒いランニングにジーパンという姿でヘリコプターから降り立った道明寺は、にやりと微笑みながら、あたしたちのほうへゆっくりと歩いてきたのだった・・・・・。

 「よお、何だよお前ら、揃ってアホヅラしやがって。屋敷の主が現われたのがそんなに不思議なことかよ?」
 道明寺の言葉に、最初に反応したのは類だった。
「そりゃ、驚くでしょ。日本に帰ってくるなんて聞いてなかったからね」
 と言って肩を竦める。
 その言葉に、道明寺は声を上げて笑った。
「そりゃそうだ。言ってなかったからな」
「びっくりした!何で急に?仕事は?」
 あたしの言葉に、道明寺はちらりとあたしの方を見た。
「その仕事で、来たんだけどな。それは明日から。たぶん今日はここに集まってるだろうと思って、今日の仕事を早めに片付けて飛んできた。何とか間に合ってよかったよ」
 そう言いながら、あたしの傍まで来た道明寺は、じっとあたしのお腹を見つめた。
「すげえな。この間は全然目立たなかったのに・・・・・。双子だって?また無理して、倒れないようにしろよ?」
「うん、気をつけてるよ」
「そうか」
 ほっとしたように微笑む道明寺のところへ、みんなが集まってくる。
「司、お前連絡くらい入れろよ」
 そう言ったのは美作さん。
「マジ、驚かせすぎ。ここんとこ電話にも出なかったくせに」
 そう呆れ気味に言ったのは西門さん。
 F4が揃うのも、あたしたちの結婚式以来だった。
「わりいな、さっきまでマジで忙しかったんだよ。でも牧野のことが心配だったし・・・・・あと、これ持ってきてやったぜ」
 そう言って、道明寺はにやりと笑うと持っていた紙袋とぽんとあたしに投げて寄越した。
「へ・・・・・何?」
 袋を開けて、中に入っていたものを出してみると・・・・・
「あ!!これ!」

 入っていたのは、あの結婚式のときの写真で・・・・・。

 「いつの間にこんなの、撮ってたの?」
 隣で写真を覗き込んで来た類が目を丸くする。
「式の前に・・・・・3人がね、あたしとの写真・・・・・記念に撮りたいっていうから・・・・・」

 それは、ウェディんドレスに身を包んだあたしと、3人それぞれとのツーショットの記念写真。
 あまり時間がなかったから、急いで撮ってもらったものだけど・・・・・。
 
 さすがというべきか、カメラマンの腕がよかったのだろう。
 どれもとてもきれいに仕上がっていた。

 「そっか。だから・・・・・。変だと思ったんだ。3人ともなかなか式場に来ないから」
 類の言葉に、3人が顔を見合わせる。
「それそれ。絶対類に感づかれると思ったから、慌てちまったんだよな」
 道明寺の言葉に、美作さんと西門さんが肩をすくめる。
「で、司が連れてきたカメラマンだったからそのまま司と一緒にN.Yに帰っちまって・・・・・。いつになったら見られるのかと思ってたぜ」
「まさか直接持ってくるとはな」
「まあそう言うな。遅くなっちまったけどよ。良く撮れてんだろ?」
「ああほんと。きれいに撮れてんじゃん。なあ、つくし」
 美作さんと写ってる写真。
 他のもそうだけど、どれもまるで本当の結婚写真みたいで・・・・・なんだか照れくさくなる。

 「確かにきれいだけどさ・・・・・。まるきり重婚みたいだよ、これ」
 不機嫌そうに写真を見て呟く類。
 並べられた3枚の写真。
 確かに、これじゃ重婚に見えるわ・・・・・。
 そう思い、あたしは乾いた笑いを浮かべたのだった・・・・・。







  

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