-soujirou-
まったく油断も隙もない。
今日は家の用事があって・・・・・それでも何とか早めに用事を片付けて類の家に行ってみれば、リビングに類の姿はなくて、身重のつくしをあきらが抱きしめてやがる。 思いっきり殴りつけてやれば、不本意そうに俺を睨みやがる。 「あきら」 俺の話を聞いて類もあきらを睨みつける。 さすがに分が悪いと思ったのか、目を逸らし頭をかくあきら。 「んなこええ顔すんなよ。つくしがあんまりかわいいこと言うから、ちょっと抱きしめたくなっただけだって」 「かわいいこと?つくし、お前何言ったんだよ」 俺の言葉に、つくしがぎくりとした様子で目を逸らす。 その様子にまたカチンと来る。 「おい・・・・・」 「べ、別にたいしたこと言ってないよ。かわいいことなんて・・・・・」 「俺も聞きたいな、それ」 隣で類が、静かに微笑みながら言う。 その微笑につくしの顔色が変わってるあたり、単なる優しい笑みじゃないってことが伺える。 「だから・・・・たいしたことじゃなくて・・・・・マイフェアレディーのこと、ちょっと言っただけ」 「マイフェアレディー?」 俺があきらを見ると、あきらの方はすっかり諦めたように肩を竦め、ソファーに座りなおした。 「生まれてくる子が女の子だったら、マイフェアレディーみたいにしたいって俺が言ったんだよ。そしたら、つくしが『きっと女の子が生まれたらあたしのことなんか相手にしてくれなくなっちゃうんでしょ』って言ったんだよ。それって、すげえかわいくね?」 にやりと笑うあきら。
つくしを見ると、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてる。
俺は類と顔を見合わせ・・・・・ 「・・・・・なるほどね。そりゃあかわいいわ。俺でも抱きしめるな。ってか、俺ならキスしてるかも」 「・・・・・総二郎」 じろりと俺を睨む類。 「けど気にいらねえ。何でそれをあきらに言うかな。もしそれを言い出したのが俺だったら、俺にも言ってたのか?そのセリフ」 俺の言葉につくしは困ったような顔をし、あきらがくすりと笑った。 「お前、それ愚問。俺たちはつくしの『恋人』、だろ?」 「・・・・・そっか」 「類、怒るなよ。つくしはお前のもの。それは百も承知だから。たまには俺たちにもおすそ分け、してくれたっていいだろ?つくしにとって、俺たちも必要だってことは認めてるんだし。俺たちの役目はつくしを守ること。それはずっと変わらない。でもそれは、お前や生まれてくる子供たちを守るってことでもある。大丈夫。俺たちはちゃんとその役目を果たすよ」 あきらの話に、類は肩を竦めてため息をついた。 「・・・・・ずるいな。それを言われたら、これ以上怒れない」 類の言葉に・・・・・ つくしはほっと息をつき、俺とあきらは顔を見合わせて笑ったのだった・・・・・。
「つくしは、落ち着いてるみたいだな」 帰り道、俺の車に乗ったあきらに言った。 「ああ。さすがにもう無理はしねえだろ」つくし自身、あれにはずいぶん堪えただろうし・・・・・。まあでも後3ヶ月。つくしがちゃんと出産できるように俺たちがちゃんと守ってやらなくちゃな」 「ああ、当然」 そう頷いて・・・・・俺は頭につくしを笑顔を思い描いていた。
-rui- 「妬いてたの?あきらの話に」 あきらたちが帰ると俺はつくしの肩を抱き寄せて聞いた。 つくしはちょっと困ったように、眉を寄せた。 「そういうつもり、なかったんだよ。ただ・・・・・子供が大きくなるってことはその分あたしも年をとるわけだし・・・・・。そうしたらもう、あたしよりも娘なのかなあと思ったらちょっとさびしくなったって言うか・・・・・」 「・・・・・それが、ヤキモチなんじゃない?」 苦笑して言うと、つくしの頬が染まる。 「あきらにっていうのが気に入らないけど・・・・・そんな顔見せられたら、俺も怒れなくなるよ」 「そんな顔って・・・・・」 「かわいくて・・・・・キスしたくなるような顔」 そう言って、俺はつくしの唇に触れるだけのキスを落とした。 「・・・・・心配しなくても、俺も・・・・・きっとあきらたちも、ずっとつくしのこと思ってるよ。年をとっても関係ない。俺たちだって一緒に年をとるんだから・・・・・。ずっと、つくしのことが好きだよ」 腕の中に閉じ込めて、つくしを見つめる。 恥ずかしそうに俺を見上げるつくし。 「・・・・・そういうこと、よくさらっと言えるよね」 「本当のことだから」 「・・・・・ありがとう」 「ん?」 「・・・・・あたしも、ずっと類が好き、だよ」 「・・・・・うん」
もう一度、抱き寄せてキスをする。 今度はもっと深く、長く・・・・・。
「一生ずっと、傍にいて・・・・・」 耳元に囁けば、ぴくりと震える体。 「・・・・・言われなくても・・・・・離れない・・・・・」 「離さない・・・・・」
そのまま暫く抱き合っていると・・・・・ 突然腹部の辺りに、とんっと軽い衝撃。 「あ、動いた」 俺の声に、つくしがくすくすと笑う。 「赤ちゃんが、パパ、きついよって言ってるみたい」 「・・・・・ちがうよ、きっと・・・・・」 「え?」 「・・・・・早く仲間に入りたいって、言ってるんだよ・・・・・」 その言葉につくしが顔を上げ、嬉しそうに微笑んだ。 「・・・・・そうかも」 幸せのヴェールに包まれながら、俺たちはこつんとおでこをくっつけ・・・・・ 何度も、啄ばむようなキスを繰り返した・・・・・。
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