***Sweet Angel vol.37***




 *あきつくっぽい要素を含みますので、抵抗のある方は読まれないほうが良いと思います。当作品に対するクレームなどは一切受け付けておりませんのでご了承ください。

 -tsukushi-

 車に乗って、どこに行くのかと思ったら、着いたのは美作さんの家だった。
「お前との思い出って言ったらここだろ」
 美作さんがにやりと笑う。
「去年のクリスマス、覚えてるか?」
「あ・・・・・」
「お前が一生懸命類の為にマフラーと帽子編んでて・・・・・教えるのは楽しかったけど、やっぱちょっと切なかったな」
 そう言いながらも、美作さんの笑顔は優しかった。
「司に拉致られたり、いろいろあったよなあ」
 くっくっとおかしそうに笑う美作さん。
「そんなこともあったね。美作さんにはいっつも心配かけちゃってたね」
「心配なら、いつもしてる。けど、お前の心配するのは俺にとって幸せでもあると思ってるから。お前が、俺を頼ってくれたりするのが嬉しいし。何でもしてやりたくなる。それでお前が笑ってくれれば満足で・・・・・自己満足でしかなくても、それが俺にとってはすごく幸せなことなんだよ」
「美作さん・・・・・」
 涙が、出そうになる。
 強引でもなく、いつも気付かないところで背中を押してくれる。
 助けて欲しいと心の底で思うとき、必ず助けてくれる。
 寂しいと思うとき、さりげなく傍にいてくれる。
 いつも気付けば美作さんがそこにいて、あたしはいつの間にかその姿を見て安心してた。

 「すげえ昔、類がファンに手編みのセーター送られた時のこと、思い出した。あいつ、その子の前で表情も変えずに、言ったんだ。『いらない。どうせ着ないし。重いから』ってね。『重い』ってのは、そのセーターが手編みだからって意味だったんだろうけど、その子の気持ちが重いっていう風にも聞こえたな。隣で聞いてて、きっついなーと思ったけどさ。でも、類ってそういうやつだったんだよ。優しそうに見えて、興味のない対称にはグサリ。それはたぶん、今でも変わらないんだろうけど・・・・・。今ならたぶん、そこに優しさも含まれるんじゃねえかな。相手に、期待を持たせないっていう。あいつを、そんなふうに変えたのはお前なんだよな」
 美作さんの、優しい瞳があたしを真っ直ぐに見る。
「きっと、類ならお前を幸せに出来る。今ならそう確信できるよ」
「ん・・・・・。ありがと」
「お礼言うのはこっち。すげえ楽しかったし・・・・・充実してたと思うよ」
 もう過ぎてしまったような美作さんの言葉に、あたしの目からは涙が零れ落ちた。
「そんなふうに・・・・・言わないで・・・・・・・寂しく、なるよ・・・・・」
 下を向いてしまったあたしを、美作さんがそっと抱きしめる。
「ごめん、泣かせるつもりじゃなかった・・・・・。俺の気持ちはずっと変わらない。お前との関係も、変わらない。だけど、子供が生まれたらさすがに今まで通りこうして2人きりで会うことはなかなかできねえだろうし。どう言ったらいいのかわかんねえけど・・・・・俺との時間を、忘れないで欲しいと思ったのかな。女々しいこと言うけど・・・・・。俺の作ったマフラーと帽子とか、そういうの大事にしてくれたらいいなとかさ、いろいろ考えてた」
「大事にするよ。すごく大事。美作さんがあたしのために作ってくれたものだもん」
「ん・・・・・。お前が、熱出してぶっ倒れたとき、思い出すな。掃除のバイトしててさ・・・・・。俺がここに連れてきた」
「そういえば、あったね、そんなこと」
「あん時はマジで焦ったけど・・・・・ここに連れてきて、お前の寝顔を見てるときはすげえどきどきしてさ。このまま俺のものになんねえかなとか考えてた。類が慌てて迎えに来るまでの間・・・・・ちょっと幸せだったよ」
 くすくすと、その時のことを思い出したのか楽しそうに笑う美作さん。
 そう言われてみれば、あの頃から類は美作さんの気持ちも西門さんの気持ちも知ってて・・・・・2人と一緒にいると不機嫌だったかも・・・・・
 今更ながら、振り返る。
 鈍感だったあたしに・・・・・呆れながらもいつも変わらない愛情をくれた人たち。
「あん時、寝てるお前にキスしたんだ、俺」
「え!?美作さんも!?」
 つい言ってしまってから、あっと口を押さえる。
 見上げると、美作さんはにやりと笑っていて。
「総二郎も、だろ?まったく、考えることが同じでいやになるよな。だけどあの時は止まらなくて・・・・・類の電話に邪魔されなかったら、やばかったかもな」
「やばかったって・・・・・」
 顔を引き攣らせるあたしを見て、ぷっと吹き出す。
「嘘だよ。いくらなんでも熱出してぶっ倒れてる女相手に無理なことはしねえよ」
 
 じゃあ、熱がなかったらどうなったんだろうと、一瞬馬鹿なことを考えてしまい急いで打ち消す。
 
 「俺はお前にすげえ惚れてるけど、すげえ大事だから。無理やり抱いたりはしねえよ」
 考えを見透かしたみたいにそう言われて、赤くなる。
「言っただろ?俺はお前の笑顔が見たい。そのためなら何だってしてやる。だから、俺のことを少しでも好きなら、俺の前ではいつも笑っててくれ。お前が笑っててくれるなら俺はそれで幸せになれるから」
「あたし・・・・・好きだよ、美作さんのこと。美作さんがそれで幸せになってくれるなら、あたしはずっと笑ってる」
「ん・・・・・サンキュ」
 柔らかく、優しい笑顔。
 いつも励まされてた、かけがえのない人の笑顔・・・・・。

 あたしも、あなたの笑顔が大好きだよ・・・・・。

 そっと重ねられた唇から、優しさが伝わってくる。

 言葉にしなくても、気持ちが伝わってくる。

 あたしの幸せが、美作さんの幸せ。

 そう言ってくれた人の、優しい気持ちにあたしも応えたい。

 ずっときっと、この気持ちは変わらない・・・・・。


 それからあたしたちは、ソファーに並んで座り、ずっと手を繋いだまま話をしていた。
 今までのこと、これからのこと・・・・・。
 時折笑いながら、からかう美作さんを軽く叩いたりしながら、穏やかに時間は過ぎて・・・・・

 日付が変わる頃、美作さんの車で類の待つ家まで送ってもらったのだった・・・・・。









  

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