-tsukushi-
「不安がないって言ったら嘘になるけど・・・・・。でも、信じてるの。あたしには彼しかいないから。きっとその思いが最後には通じるはずだって」 美幸さんの目に迷いはなかった。 愛する人を信じて、自分を信じてる目。
「あたしも、信じます」 「牧野さん・・・・・」 「頑張ってください。あたしで役に立つことがあれば、喜んで協力しますから!」 「・・・・・ありがとう!嬉しいわ。頼もしい味方がいてくれて」
「思いの他、いい人っぽかったな」 美幸さんが行ってしまってから。 あたしはそのままバーに残り、類たちと合流した。 西門さんの言葉に、美作さんも頷く。 「だよな。最初は演技かと思ったけど・・・・・ありゃあどう見ても惚気てるだけ。その彼のことしか見えてない。幸せいっぱいって感じだったな」 「うん。あたしもそう思った・・・・・。だからね、その幸せを守りたい・・・・・・。美幸さんにも、教授にも白井先生にも・・・・・幸せになる権利は、あるよね」 あたしの言葉に、3人は顔を見合わせる。 そして暫くして・・・・・類が口を開いた。 「多少強引だけど・・・・・・あの2組と、俺たちのために・・・・・一か八かの賭けに出てみる?」 「「「え?」」」 3人同時に声を上げ・・・・・ それを見た類が、おかしそうにくっと笑った・・・・・。
「え・・・・・花沢類君に・・・・・?」 翌日、大学に行ったあたしは、吉野教授に会いに行った。 「はい。会っていただけませんか?」 教授はあたしの言葉に、目を瞬かせた。 「しかし、どうして僕が・・・・・?」 「あの・・・・・実は、今回のこと、彼に話したんです」 「え?」 「ごめんなさい。誰にも言わないって約束していたのに。でも、彼は絶対にあたしとの約束は守ってくれる人です。先生のことも、絶対に誰にも言わないって約束をしてくれました」 あたしの言葉に、教授はちょっと困ったように頭をかいた。 「そうか・・・・・。いや、実は君には悪いことをしたと思っていたんだ。夫婦の間に隠し事があるなんて、良くないよね。だから・・・・・ご主人である花沢君には言っても良いんじゃないかと、恭子とも話していたところなんだ」 「え・・・・・」 「それで、恭子が言うには君たちの仲間・・・・・西門君と美作君もとても素晴らしい人物だから、彼らにはちゃんと全部話して、協力してもらうことが出来るんじゃないかというんだ。僕は、そこ君たちに頼るわけにはいかないと―――」 「そんなこと!!」 教授の言葉に、あたしは思わず椅子から立ち上がった。 教授が、驚いてあたしを見上げる。 「あ―――すいません」 あたしは慌ててもう一度座りなおした。 「あの・・・・・類も、西門さんも美作さんも、本当に信頼できる人たちなんです。少なくとも、あたしとの約束を破ったり、裏切ったりするような人たちじゃありません。昨日・・・・美幸さんとお会いして、すごくあたしも励まされたし、美幸さんには幸せになって欲しいって心から思いました。もちろん、お世話になってる教授や白井先生にも幸せになって欲しいんです。だから・・・・・協力、させてください」 あたしは頭を下げ・・・・・・ それを見て、吉野教授はくすりと笑った。 「まったく・・・・・。君には敵わないな。その、西門君や美作君にも、もう話してあるんじゃないのかい?」 「・・・・・ごめんなさい」 「いや・・・・・。僕も、この計画には少し不安もあったし、協力者が必要かなと思っていたんだ。君のような妊婦さんを巻き込むのはどうかと思っていたんだけど・・・・・。ここは、お願いすることにするよ」 そう言ってにっこりと微笑んでくれた教授に、あたしはほっとして胸をなでおろした。 「良かった・・・・・。じゃあ、早速ですけど、今夜うちまで来ていただけますか?」 「今夜だね、わかった。お邪魔するよ」
そうして、あたしたちの計画はスタートしたのだった・・・・・。
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