***Sweet Angel vol.30***




 -tsukushi-

 「不安がないって言ったら嘘になるけど・・・・・。でも、信じてるの。あたしには彼しかいないから。きっとその思いが最後には通じるはずだって」
 美幸さんの目に迷いはなかった。
 愛する人を信じて、自分を信じてる目。

 「あたしも、信じます」
「牧野さん・・・・・」
「頑張ってください。あたしで役に立つことがあれば、喜んで協力しますから!」
「・・・・・ありがとう!嬉しいわ。頼もしい味方がいてくれて」


 「思いの他、いい人っぽかったな」
 美幸さんが行ってしまってから。
 あたしはそのままバーに残り、類たちと合流した。
 西門さんの言葉に、美作さんも頷く。
「だよな。最初は演技かと思ったけど・・・・・ありゃあどう見ても惚気てるだけ。その彼のことしか見えてない。幸せいっぱいって感じだったな」
「うん。あたしもそう思った・・・・・。だからね、その幸せを守りたい・・・・・・。美幸さんにも、教授にも白井先生にも・・・・・幸せになる権利は、あるよね」
 あたしの言葉に、3人は顔を見合わせる。
 そして暫くして・・・・・類が口を開いた。
「多少強引だけど・・・・・・あの2組と、俺たちのために・・・・・一か八かの賭けに出てみる?」
「「「え?」」」
 3人同時に声を上げ・・・・・
 それを見た類が、おかしそうにくっと笑った・・・・・。


 「え・・・・・花沢類君に・・・・・?」
 翌日、大学に行ったあたしは、吉野教授に会いに行った。
「はい。会っていただけませんか?」
 教授はあたしの言葉に、目を瞬かせた。
「しかし、どうして僕が・・・・・?」
「あの・・・・・実は、今回のこと、彼に話したんです」
「え?」
「ごめんなさい。誰にも言わないって約束していたのに。でも、彼は絶対にあたしとの約束は守ってくれる人です。先生のことも、絶対に誰にも言わないって約束をしてくれました」
 あたしの言葉に、教授はちょっと困ったように頭をかいた。
「そうか・・・・・。いや、実は君には悪いことをしたと思っていたんだ。夫婦の間に隠し事があるなんて、良くないよね。だから・・・・・ご主人である花沢君には言っても良いんじゃないかと、恭子とも話していたところなんだ」
「え・・・・・」
「それで、恭子が言うには君たちの仲間・・・・・西門君と美作君もとても素晴らしい人物だから、彼らにはちゃんと全部話して、協力してもらうことが出来るんじゃないかというんだ。僕は、そこ君たちに頼るわけにはいかないと―――」
「そんなこと!!」
 教授の言葉に、あたしは思わず椅子から立ち上がった。
 教授が、驚いてあたしを見上げる。
「あ―――すいません」
 あたしは慌ててもう一度座りなおした。
「あの・・・・・類も、西門さんも美作さんも、本当に信頼できる人たちなんです。少なくとも、あたしとの約束を破ったり、裏切ったりするような人たちじゃありません。昨日・・・・美幸さんとお会いして、すごくあたしも励まされたし、美幸さんには幸せになって欲しいって心から思いました。もちろん、お世話になってる教授や白井先生にも幸せになって欲しいんです。だから・・・・・協力、させてください」
 あたしは頭を下げ・・・・・・
 それを見て、吉野教授はくすりと笑った。
「まったく・・・・・。君には敵わないな。その、西門君や美作君にも、もう話してあるんじゃないのかい?」
「・・・・・ごめんなさい」
「いや・・・・・。僕も、この計画には少し不安もあったし、協力者が必要かなと思っていたんだ。君のような妊婦さんを巻き込むのはどうかと思っていたんだけど・・・・・。ここは、お願いすることにするよ」
 そう言ってにっこりと微笑んでくれた教授に、あたしはほっとして胸をなでおろした。
「良かった・・・・・。じゃあ、早速ですけど、今夜うちまで来ていただけますか?」
「今夜だね、わかった。お邪魔するよ」

 そうして、あたしたちの計画はスタートしたのだった・・・・・。









  

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