***Sweet Angel vol.23***




-akira-

 マジで参った。

 俺の選んだ純白のウェディングドレスを着て試着室を出てきたつくし。

 似合うとは思っていたけれど・・・・・

 予想以上にきれいなその姿に、俺たちはつくしを直視できないでいた。

 「もう、何か言ってよ!」
 ついには怒り出すつくしに、俺たちは慌てて口を開く。
「あ、ああ、わりいわりい。思わず見惚れてた」
 そう総二郎が言えば、途端につくしが赤くなる。
「ほ、ほんと?」
「ああ、マジで。すげえ似合ってるよ」
 俺の言葉に、嬉しそうに微笑むつくし。
 その顔はやべえ。
 かわいすぎる・・・・・。
「他のも、着てみれば」
 総二郎が言うと、つくしはそうだねと頷いて、また試着室のカーテンを閉めた。
 
 俺たちは、ほぼ同時に溜息をついた・・・・・。

 「・・・・参ったな」
 総二郎が手で口を押さえ、溜息とともに呟く。
 その頬は赤く染まっていて・・・・・
 ポーカーフェイスが得意な総二郎には珍しいことだったが・・・・・
 こと、つくしに関わるとそう珍しいことじゃないことを、俺は知ってる。
「あいつ・・・・・ずいぶんきれいになったな」
 俺も溜息をつきながら言った。
 きっと、俺の顔も赤くなってる。
 
 惚れてる女が、他のやつのために着るウェディングドレスを選ぶのを手伝うなんて・・・・・
 普通だったら御免蒙るところなんだろうけど。
 俺たちは、普通じゃないんだろうな。
 こうしてつくしのウェディングドレス姿を見ることに、喜びを感じている。
 一緒にドレスを選んで、一緒に結婚を祝って・・・・・・
 どんな形でも、つくしと同じ空間にいられるということが、嬉しかった。

 「・・・・・なあ、あきら」
「ん?」
「俺たちも・・・・・白いタキシード、用意しとくか?」
 総二郎の言葉に、俺は目を丸くした・・・・・


 「それもいいな」
「うん。けど、さっきのベビーピンクの方がつくしの黒髪が映えてる気がするぜ」
 6着目、最後の試着。
 さすがに俺たちも照れはなくなってきたが、つくしはちょっと疲れてきているようだ。
 何せ妊娠中の体だ。
 無理は禁物。
「つくし、お前はどれがよかった?」
 俺が聞くと、つくしはちょっと小首をかしげた。
「うーん、どれも素敵で・・・・・。でも、さっきのピンクのはかわいかったな。篠原さんもかわいいって言ってくれたし」
「篠原?」
「あ、さっきから試着を手伝ってくれてるスタッフさん。あのピンクのが、一番似合うって言ってくれたの」
 にっこりと満足そうに微笑むつくし。
 後ろのほうで、試着の終わったドレスを整理しながら微笑む女性が目に入る。
 この短時間で、ずいぶん仲良くなったようだ。
「そうだな。さっきのが一番似合ってたかも。じゃ、1着はそれにするか?」
 総二郎の言葉に、つくしは目を丸くする。
「え、まだ選ぶの?」
「当然。基本、式で着るドレスは白だろ?ピンクのは、披露宴用にしとけよ」
「あ、そうか・・・・・。えと、じゃあ・・・・・一番最初の白いのは?」
「・・・・俺が選んだやつ?お前、気ィ使ってんの?」
 さっき選んだベビーピンクのドレスは、総二郎の見立てだ。
 俺が選んだやつからも1つ、と思っているのかと思った。
「まさか。そんなこと考えてないよ。本当に気に入ったの。シンプルだけど、すごく素敵だった」
 そう言ってふわりと微笑むつくし。
 俺たちはその笑顔を見て、頷いた。
「じゃ、決まりだな」
「お疲れ。お茶でもして、帰ろう」
 そうして俺たちは、椅子から立ち上がったのだった・・・・・。


 「あ、類?」
 店を出ると、目の前に車が止まり、中から類が出てきた。
「つくし・・・・・・なんであきらたちと?」
 途端に顔を顰める類につくしは困ったような顔をし、俺たちは顔を見合わせ肩を竦めた。
「えと・・・・・優紀がこれなくなっちゃって、それで・・・・・」
「言っとくけど、俺たちは頼まれたわけじゃねえぜ。優紀ちゃんに話を聞いて、つくしにくっついてきただけ」
「そういうこと。怒るなよ。大体、こんな大切な日のこと俺たちに黙ってるなんて、お前も人が悪いぜ?」
 俺の言葉に、類は肩を竦めた。
 特に悪びれた様子もなく、さっさと俺たちの間に割って入り、つくしの肩を抱く。
「別に、言う必要ないかなと思っただけ。―――で、決まったの?ドレス」
 類の問いにつくしは満面の笑みで頷く。
「うん!すっごく素敵なの!」
「ああ、きれいだったぜ。当日、楽しみにしてろよ」
 にやりと笑って言う総二郎に、類はおもしろくなさそうな視線を送る。
「・・・・・あ、そう」
「んな顔すんなよ。俺らが先に見たからって減るもんじゃねえし。当日の相手はお前だからな。それまで、ちょっと代わってくれてもいんじゃね?」
 俺の言葉に、類は呆れたような顔をした。
「何それ。当日だけじゃなくって、つくしの相手はいつも俺だよ。譲る気はないからね」
「わかってるって。けど、つくしにとっては俺らだって大切だろ?」
 総二郎が、つくしに甘い視線を送れば。
 途端につくしの頬が染まる。
 類のこめかみに、ピクリと血管が浮き出るが・・・・・
「花嫁1人に、花婿が3人手のも悪くないんじゃねえの?」
 そう言って俺が笑って見せれば、類は目を丸くして
「冗談じゃないよ!」
 と、珍しく大きな声で否定し、天を仰ぐように溜息をついたのだった・・・・・








  

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