-rui-
翌日。
俺たちは大学に北條を連れて行った。
俺たち3人に挟まれるようにしてびくびくしながら歩く北條。
周りは皆何事だろうと振り返っていく。
もちろん俺たちの目的は1つ・・・・・。
4人でカフェテリアに入り、中を見渡す。 ざわざわと、学生たちの視線が集中する中・・・・・
ぎょっとした表情で俺たちを見る3人の女の姿があった。 「・・・・・あれ?」 「は、はい。彼女たちです」 「明らかにびびってんな。まさかこいつと俺らが一緒に現われるとは思ってなかっただろ」 総二郎の言葉にあきらも頷く。 「ああ。おい北條、あいつらのことは無視しろよ。今日はとにかく徹底的に俺らと一緒にいろ」 「はあ・・・・・あの、でも、こんなことして何の意味が・・・・・」 「うるせーよ。お前は俺たちの言うこと聞いてろ。良いか、牧野が許しても、おれたちはお前のことを許さねえからな」 じろりと総二郎に睨みつけられ・・・・・ 北條は何も言えず俯いてしまった。
北條を囲むようにしてカフェテリアで俺たち4人がテーブルについていると、昼近くになって牧野が現われた。 俺たちを見つけやってくると、ちらりと周りに視線をめぐらせた後、俺の隣に座った。 「どう?」 そう小声で聞いてきた牧野に、俺は頷いて見せた。 「・・・・・顔はわかったよ。たぶん、もうすぐ昼だからそのころここに来るんじゃない?」 俺の言葉に、牧野は不安そうに眉を寄せた。 「どうするの?これから・・・・・」 「大丈夫だよ。そんな不安そうな顔しないで」 「だって・・・・・」 「今、田村に婚姻届を無効にする手続きが取れるよう動いてもらってる。たぶん2、3日中には結果がわかると思うよ」 「ほんと?」 「ああ」 俺が笑って見せると、漸く安心したように牧野も微笑んだ。 俺と牧野のやり取りを見ていた北條が、戸惑った表情をしていた。
そのとき、あきらがちらりとカフェテリアの入口に目をやった。 「・・・・・来たぜ」 入口から入ってきたのは、例の女3人組。
こちらをちらちらと気にしながら、パンと飲み物を手にテーブルにつく。
「・・・・・北條」 総二郎が北條の肩を掴む。 「は?」 「いいか。お前は動くなよ。それから・・・・・あいつらの方を絶対に見るな。いいな」 総二郎の有無を言わせぬ迫力に、ただ黙って頷く北條。
総二郎とあきらが、俺を見る。
俺はそっと背後の3人を目にいれ、3人がこちらを見ているのを確認すると・・・・・
隣にいた牧野の肩を抱き寄せ、その唇を奪った。
突然のことに、目を白黒させて驚く牧野。
その隣で、馬鹿みたいに口をあんぐり開けてその光景に釘付けになる北條。
そしてその突然のラブシーンに気付き、次第にざわついてくるカフェテリア。
そしてあの3人も・・・・・・
席を立ち、呆然とこの光景を眺めているのがわかった。
「・・・・・そろそろいんじゃね?」 椅子にふんぞり返り、ふてくされたように俺たちを見ていた総二郎が口を開いた。
思い切り深く口付け、その甘さに酔いそうになっていたところに水を挿され・・・・・・ それでも仕方なくその唇を開放し、牧野を見つめる。 牧野はこれ以上ないほど真っ赤に顔を染め上げ、俺を睨みつけた。 「類!!いきなり何するの!!」 「ごめん。これも作戦なんだ」 苦笑して言う俺を、不思議そうに見つめる。 「・・・・・作戦?」 「・・・・・早速効果が出たみたいだぜ?」 あきらが言って、視線を俺たちの後ろへ向ける。 「え?」 牧野と一緒に後ろを振り向く。
そこには、もうあの女たちの姿はなかった・・・・・・。
マンションへ北條が帰ると、程なくインターフォンが鳴った。
玄関へ出ると、なだれ込むように入ってきたのはあの3人の女たちだった。
「ちょっと!どういうことか説明してよ!!」 「何であなたがF3と一緒にいるわけ!?」 「牧野つくしと入籍できたんじゃないの!?」 「何であの女と花沢さんがキスしてんのよ!!」
目をむき、噛み付くように北條を攻め立てる女たちの迫力に、北條はたじろぎ、そのまま尻餅をついてしまった。 「あ、あの・・・・・」 「何よ、さっさと答えなさいよ!!」
そのときだった。 「その勢いで責められたんじゃ、何も言い返せないと思うぜ?」 3人がはっと顔を上げる。 そこにいたのは・・・・・ 「さあ、どういうことか説明してもらおうか?」 にっこりと微笑む総二郎。 その横に俺と、あきら。
F3の刺すような視線に、女たちはさっと顔色を変えたのだった・・・・・。
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