***Sweet Angel vol.13***




 -rui-

 翌日。

 俺たちは大学に北條を連れて行った。

 俺たち3人に挟まれるようにしてびくびくしながら歩く北條。

 周りは皆何事だろうと振り返っていく。

 もちろん俺たちの目的は1つ・・・・・。


 4人でカフェテリアに入り、中を見渡す。
 ざわざわと、学生たちの視線が集中する中・・・・・

 ぎょっとした表情で俺たちを見る3人の女の姿があった。
「・・・・・あれ?」
「は、はい。彼女たちです」
「明らかにびびってんな。まさかこいつと俺らが一緒に現われるとは思ってなかっただろ」
 総二郎の言葉にあきらも頷く。
「ああ。おい北條、あいつらのことは無視しろよ。今日はとにかく徹底的に俺らと一緒にいろ」
「はあ・・・・・あの、でも、こんなことして何の意味が・・・・・」
「うるせーよ。お前は俺たちの言うこと聞いてろ。良いか、牧野が許しても、おれたちはお前のことを許さねえからな」
 じろりと総二郎に睨みつけられ・・・・・
 北條は何も言えず俯いてしまった。

 北條を囲むようにしてカフェテリアで俺たち4人がテーブルについていると、昼近くになって牧野が現われた。
 俺たちを見つけやってくると、ちらりと周りに視線をめぐらせた後、俺の隣に座った。
「どう?」
 そう小声で聞いてきた牧野に、俺は頷いて見せた。
「・・・・・顔はわかったよ。たぶん、もうすぐ昼だからそのころここに来るんじゃない?」
 俺の言葉に、牧野は不安そうに眉を寄せた。
「どうするの?これから・・・・・」
「大丈夫だよ。そんな不安そうな顔しないで」
「だって・・・・・」
「今、田村に婚姻届を無効にする手続きが取れるよう動いてもらってる。たぶん2、3日中には結果がわかると思うよ」
「ほんと?」
「ああ」
 俺が笑って見せると、漸く安心したように牧野も微笑んだ。
 俺と牧野のやり取りを見ていた北條が、戸惑った表情をしていた。

 そのとき、あきらがちらりとカフェテリアの入口に目をやった。
「・・・・・来たぜ」
 入口から入ってきたのは、例の女3人組。

 こちらをちらちらと気にしながら、パンと飲み物を手にテーブルにつく。

 「・・・・・北條」
 総二郎が北條の肩を掴む。
「は?」
「いいか。お前は動くなよ。それから・・・・・あいつらの方を絶対に見るな。いいな」
 総二郎の有無を言わせぬ迫力に、ただ黙って頷く北條。

 総二郎とあきらが、俺を見る。

 俺はそっと背後の3人を目にいれ、3人がこちらを見ているのを確認すると・・・・・

 隣にいた牧野の肩を抱き寄せ、その唇を奪った。

 突然のことに、目を白黒させて驚く牧野。

 その隣で、馬鹿みたいに口をあんぐり開けてその光景に釘付けになる北條。

 そしてその突然のラブシーンに気付き、次第にざわついてくるカフェテリア。

 そしてあの3人も・・・・・・

 席を立ち、呆然とこの光景を眺めているのがわかった。

 「・・・・・そろそろいんじゃね?」
 椅子にふんぞり返り、ふてくされたように俺たちを見ていた総二郎が口を開いた。

 思い切り深く口付け、その甘さに酔いそうになっていたところに水を挿され・・・・・・
 それでも仕方なくその唇を開放し、牧野を見つめる。
 牧野はこれ以上ないほど真っ赤に顔を染め上げ、俺を睨みつけた。
「類!!いきなり何するの!!」
「ごめん。これも作戦なんだ」
 苦笑して言う俺を、不思議そうに見つめる。
「・・・・・作戦?」
「・・・・・早速効果が出たみたいだぜ?」
 あきらが言って、視線を俺たちの後ろへ向ける。
「え?」
 牧野と一緒に後ろを振り向く。

 そこには、もうあの女たちの姿はなかった・・・・・・。


 マンションへ北條が帰ると、程なくインターフォンが鳴った。

 玄関へ出ると、なだれ込むように入ってきたのはあの3人の女たちだった。

「ちょっと!どういうことか説明してよ!!」
「何であなたがF3と一緒にいるわけ!?」
「牧野つくしと入籍できたんじゃないの!?」
「何であの女と花沢さんがキスしてんのよ!!」

 目をむき、噛み付くように北條を攻め立てる女たちの迫力に、北條はたじろぎ、そのまま尻餅をついてしまった。
「あ、あの・・・・・」
「何よ、さっさと答えなさいよ!!」

 そのときだった。
「その勢いで責められたんじゃ、何も言い返せないと思うぜ?」
 3人がはっと顔を上げる。
 そこにいたのは・・・・・
「さあ、どういうことか説明してもらおうか?」
 にっこりと微笑む総二郎。
 その横に俺と、あきら。

 F3の刺すような視線に、女たちはさっと顔色を変えたのだった・・・・・。









  

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