*** Smile for me 3 vol.3 〜総つく〜 ***



 -soujirou-

 大学を出ようとしたところで何人かの女の子に捕まって、何とか切り抜けようと愛想笑いを振りまいていたときだった。
 ふと見れば、牧野と類が裏門のほうへと歩いていくところ。

 ―――なんで牧野がここに?

 今日大学に来るなんて話は聞いてない。
 確か今日もバイトだったはずで・・・・・

 俺は適当に女の子たちをあしらい、2人のあとを追った。

 門を出たところで2人に追いつき、牧野を捕まえる。

 俺の質問にも、しどろもどろで明らかに何か隠してる様子が見え見えだ。

 それでも追及する俺を振り切り、行ってしまった牧野の後姿をいらいらする思いで見ていると・・・・・
「バイトって、なんだろう?総二郎聞いてなかったの?」
 類の言葉に肩をすくめる。
「何も。あいつ、何こそこそやってるんだ」
「・・・・・ちょっと心配だな。夜のバイトなんて、怪しいのじゃないのかな」
「変なこと言うなよ。大体・・・・なんでお前が牧野と一緒にいるんだよ」
 俺の言葉に、類はちょっと目を瞬かせた。
「さっき牧野が言ってただろ?前に牧野に貸した本、返しに来たんだよ。急がなくても良いって言ったんだけど、あいつ律儀だし。それよりバイトのこと、ちゃんと聞いておいたほうが良いんじゃないの?牧野のことだから、三条あたりにそそのかされて怪しいバイトに手ぇ出してるのかも」
 類に言われ・・・・・

 俺もなんとなくそんな気がしてきて、心配になってきた。

 大体、俺と付き合いだしてからも桜子のやつは牧野を合コンに連れ出したりするし、ろくなことをしねえ。

 俺は早速桜子を追及するべく、携帯を取り出したのだった・・・・・。


 ようやく桜子を捕まえ、事情を聞きだしたのはもう夜の8時近かった。
 類の予想通り、牧野は桜子が興味本位で始めたキャバクラのバイトのピンチヒッターに借り出されていることがわかった。

 まったく冗談じゃない。
 キャバクラなんて、あいつに似合わないことこの上ない。
 てか、そう言う問題じゃない。
 あいつが俺以外の男の隣に座って酒を注いだりするのなんか、想像するだけでむかむかしてくるっつーの!

 牧野との約束だからとなかなか口を割ろうとしなかった桜子を宥めたり脅したり(!)しながら、ようやく店の場所を聞き出した俺は、早速その店に乗り込んでいった。

 俺の気迫に押されてか、途中俺に気付いてながらもぎょっと目を見開き道を開けるように後ずさるやつらを横目に、俺は牧野がいるらしいそのテーブルへと突き進んだ。

 派手なスーツを着た、見るからに気障ったらしい男が馴れ馴れしく牧野の横にべったりと座っていた。
 牧野はセクシーな、胸の開いたオフホワイトのミニワンピースを着て座ってる。
 戸惑った様子が普通のキャバ嬢に慣れたやつには新鮮なのだろう、いやらしい目で牧野の全身を嘗め回すように見つめ、グラスを握らせたその手を掴み顔を寄せる。

 完全に頭にきてた。
 あんないやらしい野郎に、俺の牧野が・・・・・!

 「そのきたねえ手を離せよ」

 握られていないほうの牧野の手を握り、ぐいっと引っ張る。
 驚いて俺を見上げる牧野。
 隣に座っていた男も、ぎょっとしたように俺を見上げた。
「西門さん!」
「―――お前、何してんの」
「な、なんで・・・・・」
「俺のことはいい。とにかく、帰るぞ」
 そう言って立たせると、隣に座っていた男が慌てて立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待てよ!なんだよあんた、勝手に入ってきて・・・・・!」
「ああ?」
 じろりと睨みつける。
 たぶん、このときの俺は相当不機嫌な顔をしていたと思う。
 男が、俺に睨まれるとさっと青ざめ、その場に座り込んでしまったのを見てもそれがわかるというもので―――

 結局、しんと静まり返ったその店から、俺は誰に咎められることなく牧野を連れ出すことができたのだった・・・・・。

 
 「に、西門さん!ちょっと待って!」
 牧野の腕を強く掴み、ひたすら歩き続けていた俺。
 早足で歩く俺に必死でついてこようと走るようにして引っ張られていた牧野が、とうとうついて来れなくなったように足をもつらせ、その場に立ち止まる。
「―――早過ぎ・・・・・。ついていけないってば」
 膝を押さえ、荒い息を繰り返す牧野。
 額からは汗が流れ、張り付いた前髪を鬱陶しそうにかき上げた。

 俺はただ黙って、大きく溜め息をついた。
「―――桜子に・・・・・聞いたの・・・・・?」
「・・・・・ああ。その前に、類が怪しんだんだ。で、桜子を捕まえて無理やり聞きだした。どういうことか、説明しろよ」
 低く抑えた声でそう聞くと、牧野は困ったように俺を見上げ・・・・・

 再び目を伏せ、溜め息をついたのだった・・・・・。






 

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