「お前、それ虫刺され?」
「へ?」
道明寺の視線の先、自分の胸元を見ると、そこに赤い花弁のような痕。
「気をつけろよ、そこ、意外と目立つぜ」
「そお?気づかなかったよ、あたし」
自分の胸元なんて、そんなじっくり見るもんじゃないし。
こんな無人島じゃ姿見なんてないし。
道明寺が、1歩あたしに近づく。
「人から見たら、最初に目に付く―――」
ぴたりと足を止める。
その視線は徐々に険しくなっていって・・・・・
「お前それ・・・・・キスマークか・・・・・?」
「は?何言ってんの?そんなわけ―――」
「誰だ!?」
道明寺の両手があたしの肩を掴み、その強い力にあたしは顔をしかめた。
「痛いってば!」
「お前いったい誰と!!」
「違うって言ってんでしょうが!!離してよ!!」
冗談じゃない。
キスマークなんて、つけられるようなことした覚えないっつーの!
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「あ、それ、おれ」
にっこりと、無邪気に微笑む類に、思わず固まる。
「―――って、いつの間に!?」
道明寺に指摘された、胸元のキスマーク。
まるっきり身に覚えのないあたしは、絶対に虫刺されだと言い張ったのだけれど。
道明寺はまったく信じてくれなくて・・・・・。
「昨日の夜、2人で砂浜にいたとき、牧野俺に寄りかかったままうとうとしただろ」
「そう―――だっけ?」
「うん。その寝顔があまりにもかわいくって、我慢できなかった」
「我慢できなかったって・・・・・!まさか、それ以上のことはしてないでしょうね?」
「それ以上のことって?」
「え・・・・・」
類が一歩、あたしに近づく。
「たとえば、どんなこと?」
「や、だから・・・・・」
後ろ向きに逃げようとしたあたしは、すぐに類の腕の中に捉えられてしまう。
すぐ間近に、魅惑の笑みを浮かべた花沢類。
「・・・・・これから、実践してみようか・・・・・?」
近づいてくるそのビー玉のような瞳に。
あたしは思わず、目を閉じた・・・・・。
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