「牧野、こんなところにいたの」
振り向くと、類がいた。
「うん。目が覚めちゃって。日の出、見てたの」
類はにっこり微笑むと、あたしの隣に座った。
この砂浜で、こうして朝日を見るのも何度目だろう。
「もう2週間か。早いね」
「助けって、なかなか来ないんだね。道明寺家が動けば、すぐに見つかるかと思ったのに」
「・・・・・わざと、そうしてるのかもね」
類の言葉に、あたしは目を見開く。
「わざと!?」
「何か、考えがあるのかもしれないって思ったんだ。単なる勘だけどね」
こんな無人島に、あたしたち5人を置き去りにして、いったい何を考えてるっていうんだろう・・・・・?
やっぱり金持ちの考えることはわからない、とあたしは首を傾げるしかなかった。
「でも俺は、こうして牧野と過ごせる事ができて嬉しいと思ってるけどね」
そう言って、甘い眼差しであたしを見つめる類。
どきんと、胸が高鳴る。
「な、何言ってるの」
「司とは婚約解消したんだから、俺にも牧野を口説く権利あるよね?」
あたしの手に類の手が重なる。
「権利って―――」
類から離れようとするあたしを逃がすまいとするかのように、類がぐっとあたしの手を引き寄せる。
「好きだよ、牧野・・・・・」
避ける間もなく、重ねられる唇。
誰もいない浜辺。
静かな波の音だけが、耳に響いていた・・・・・・。
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「いつになったら助けがくるのかなあ?」
あたしの呟きに、薪にする枝を折りながら、道明寺が顔を上げた。
「ああ?何言ってんだ?」
「だって、もう3週間だよ?そろそろ助けが来てもいいころじゃない?」
「―――こねえよ」
ぼそっと呟かれた道明寺の言葉に、一瞬固まる。
「―――今、なんて?」
「助けなんか、こねえつってんの」
「ど・・・・・どういうこと?あんた、何か知ってるの?」
道明寺が、肩をすくめる。
「まあな」
「って・・・・・なんで助けが来ないのよ!?」
「まだ勝負がついてねえからな」
「はあ?何よそれ、何の勝負?いつまでここにいるのよ?」
「お前が、F4の中から誰か1人を選ぶまで」
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「逃げるなよ」
西門さんに腕を掴まれ、あたしはそれ以上離れられなくなる。
「だって、無理だよ。F4の中から誰か1人を選ぶなんて」
「無理じゃねえよ。お前が俺らの中の誰が好きか、はっきりさせればいいだけだ」
「簡単に言わないで」
「簡単なことだ。自分の胸に聞いてみりゃいい。そうじゃなきゃ・・・・・」
一瞬、怪しげな笑みを浮かべた後、あたしを抱きしめる西門さん。
「ちょ・・・・・、離して!」
慌てるあたしの耳元に、西門さんの甘い声が響く。
「俺が、お前の体に聞いてみてもいいけど・・・・・?」
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「あせんなくてもいいんじゃね?ここの生活もそこそこ楽しいし」
「何のんきなこと言ってんのよ!」
「それじゃあ俺にしとけば?」
にやりと妖しげな笑みを浮かべる美作さん。
「そんなこと、できないってば」
「だからさ、ゆっくり考えればいいじゃん」
肩をすくめる美作さんに、あたしはため息をついた。
そんなのんびり構えてらんない。
あたしのことを好きだと言っているF4とこの無人島に流れ着いて。
4人のうち1人を選ばないとここから脱出できないなんて。
罰ゲームじゃないんだから!
「俺は、お前の気持ちを素直に聞くつもりだけど?」
「え?」
「選ばれるのが俺でも、そうじゃなくても。お前が幸せになるならそれでいい」
そう言って微笑む美作さんの笑顔にどきんとする。
「こんな優しい俺に、惚れちゃいそうだろ?」
にっこりと微笑む美作さんに。
思いっきり蹴りを入れてやったのは、言うまでもない・・・・・
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