無人島で2人きりになるとしたら、誰がいい?
いつだったか、滋さんに聞かれたことがある。
F4の中で、誰か1人だけ。
その時はなんて答えたっけ?
浮世離れした人たちだから、誰が相手でも苦労しそう。
そう思ったのは覚えてる。
まさか、それが現実になるなんて。
でもその相手が1人じゃなくて、4人全員だったのはよかったのか悪かったのか・・・・・
そしてあたしはこの場所で、彼らの本音を知ることとなる・・・・・
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「ちょっと花沢類!寝てばっかりいないで手伝ってよ!」
F4と無人島に流れ着いて1週間。
毎日水の確保と食料の調達に四苦八苦しているあたしたち。
それでも花沢類のマイペースは相変わらずだった。
「海に潜って、魚捕まえてきてよ」
「簡単に言うけど、結構難しいんだよ」
「わかってる。でも、花沢類が一番うまいんだもん。他の3人には森のほうに行ってもらったから」
「・・・・・めんどくさ」
「花沢類!」
「わかったよ・・・・・でも、1つ条件」
そう言ってあたしを見つめる瞳に、どきりとする。
「な、何?」
途端に手を引っ張られる。
「キス、したい」
そして掠めるようなキスを1つ。
真っ赤になったあたしを満足そうに見て。
「じゃ、行って来るよ」
にっこりと天使の笑顔を残して、海へと走っていった・・・・・。
残されたあたしが、暫く固まっていたのは、言うまでもない・・・・・。
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「これ、もう火ぃつかねえぞ」
道明寺が、持っていたライターを放り投げた。
「とうとう?じゃあやっぱり火を起こさないと」
西門さんが持っていたライター。
それが使えなくなるまでには助けが来ないかと、微かに残っていた望みも絶たれてしまった。
「俺がやんのか?」
道明寺のうんざりした表情に、あたしは肩をすくめた。
「仕方ないじゃない。今あんたとあたししかいないんだから。急がないと、日が暮れちゃうよ」
「・・・・・お前と2人きりだったら、それもまた楽しかったけどな」
さりげなくあたしに近寄ってきた道明寺にぎょっとして、思わず後ずさる。
「な、何言ってんのよ!くだらないこと言ってないで早く火を起こして!」
「心配すんな。それくらいあっという間にやってやるから」
じりじりとにじり寄ってくる道明寺に、大きな木を背に、逃げ場をなくすあたし。
その両脇に手をつき、間近に迫ってくるきれいな顔。
「言っておくが、この俺から逃げられると思うなよ?」
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「この草は、何に使うの?」
あたしの言葉に、西門さんが顔を上げる。
「それは薬草。擦りむいたりなんかしたとき、傷口に塗るんだよ」
「へえ。それにしても、良くそんなことまで知ってたね。驚き」
「一応な。英才教育の中で、そんなことも教えてもらった。今の世の中、何があるかわからねえし。早速役に立ったってわけだ」
にやりと笑う西門さん。
意外と頼りになるその姿に、あたしもちょっとどきどきしていた。
「えっと、じゃあこっち・・・・・」
なんとなく緊張して、あたしはその場から動こうとして―――
「あぶねえ!」
ぐいっと、突然腕を引っ張られ、あたしは体のバランスを失った。
「わっ」
とっさに西門さんの腕につかまり、西門さんに抱きつくような格好に。
慌てて離れようとするあたしの肩を、さらにぐっと抱き寄せる。
「な―――」
「そこに、毒草がある」
「ど、毒草!?」
「かぶれるくらいだけどな。けど、2,3日は引かない強力なやつだから、気をつけろ」
「あ、ありがとう・・・・・。あの・・・・・そろそろ離してくれない・・・・・かな?」
どきどきしながらそう言うあたしの顔を、にやりと笑みを浮かべ覗き込む西門さん。
「俺に、ときめいちゃったりしてる?」
「ば、馬鹿!そんなこと―――!」
「俺は、ときめいてるよ。お前に―――」
そして次の瞬間。
西門さんの唇が、あたしの唇に重なっていた・・・・・。
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「この水ってもう飲めるの?」
500mlのペットボトルに溜った水は、とても綺麗に見えた。
「ああ、ろ過してあるからな」
「凄いね、美作さん。こんなの作れるんだ」
「誉めても何も出ねえぞ」
にやりと笑う美作さん。
「違うよ。本当に感動してるの」
「飲んでみてもいいぜ」
「え、いいよ!貴重な水なのに」
「水分取らなきゃ人間生きていけねえからな。喉が渇いたらちゃんと飲めよ」
「うん、ありがとう。優しいね、美作さん」
あたしの言葉に、美作さんはちょっと笑ってあたしを見た。
「お前に死なれたら困るからな」
あたしを見つめるその甘い瞳にドキッとする。
「お前と2人きりじゃないのが残念だよ」
「な、何言ってるの。みんな一緒だから協力しあえるんじゃない」
「もしお前と2人きりだったら・・・・・俺が、命に代えても守ってやるよ」
その瞳は真剣で・・・・・冗談を言っているようには思えなかった・・・・
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