***Miracle Girl vol.26 〜F4×つくし〜***


「牧野つくしは、F4を変えた。私たち親はそう思っているんだよ」

そう言って類のお父さんは笑った。

「それもちょっとした変化ではなく、劇的な変化だ。そんなことができる女性は、きっと牧野さん以外にはいないだろう。だったら―――牧野さんとの関係が変わらないことが、4人にとって一番なんじゃないかと思ったんだ。そうすることで仕事に対する姿勢も変わってくるだろう。単なる後継ぎとしてじゃない。1人の大人の男として―――おまえたちにはもっと成長していってほしい。そのために、牧野つくしは必要なんだと、私たちはそう思ったんだ」

「それで・・・・・あたしはこれからどうしたら」

あたしの言葉に、類のお父さんがさらに笑みを深くした。

「牧野さんがこの話に納得してくれるのなら、すぐにでも結婚の話を進めたいと思っているよ」

「え・・・・・」

すぐにって、だって大学は?

「もちろん、大学には行ってもらって構わない。結婚はこちらの都合だ。あなたの生活は希望通りになるよう万全のフォローをさせてもらうよ。形として、結婚というものが必要なんだ」

「形としてって・・・・・」

類の方を見ると、類がちょっと複雑そうな表情であたしを見た。

「―――牧野に、話したいことがある」

ピンと、何かが張り詰めたような気がした。

一気に緊張した空気に、一緒にいた3人もそっと顔を見合わせた。

「俺たちは、外で待ってる」

そう言ったのは道明寺だ。

それに類のお父さんも頷き、全員が部屋を出たのだった。

「類―――」

「ごめん、急に。でも、こうするしかなくて―――」

「どういうこと?」

「俺の父親―――実は、癌なんだ」

その言葉に。

あたしはすぐに言葉を発することはできなかった・・・・・


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「胃癌で、もう手術もできない状態だって言われた。今はまだ元気そうにしてるけど、かなり無理してるんだ。本当は仕事なんてしてられる状態じゃない。だけど、立場上そうもいかなくて・・・・・。今は、母親が代わりにできる部分はやってくれてる状態なんだ」

そうか・・・・・

だから、この場に類のお母さんはいなかったんだ・・・・・

「もちろん、俺が後を継いだとしたってすぐに代わりができるわけじゃない。おれには経験も部下からの信頼もまだないからね。それはやっぱり現場に出ないと取得できないものだと思うんだ」

「じゃあ、仕事するの?」

「と、俺も思ったんだけどね。大学卒業まであと2年だ。その2年は何とか母親と会社の今の重役たちで何とかするって。大学ではしっかり勉強してほしいって、これは母親からの言葉」

「そうだったんだ・・・・・じゃあ、あたしは・・・・・」

「牧野は、俺のそばにいてくれればいい。俺は、牧野がそばにいてくれればどんなことでもできると思ってる。本当は結婚もすぐじゃなくていいって言われたんだ。だけど、父親の体のこともあるし・・・・・早く、安心させたい」

類のお父さんは、とても厳しい人だと聞いていた。

類とは正反対で、子供のころからとても厳しくしつけられたと。

だけどやっぱり親子だから・・・・・・

お互いを思いやる心が、今になってようやく芽生えてきたのだろうか・・・・・・

それならあたしは。

類のためにできることなら、何でもしたい。

それが、今のあたしの気持ちだった・・・・・



  

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