「帰る?」
みんなの視線が、類に集中する。
「帰るって、家に?急にどうして?」
あたしの言葉に、類はちょっとふてくされたように肩をすくめた。
「親の都合。急に帰国する予定ができたから、帰って来いって」
「親が帰国するのに、わざわざお前も帰るのか?何か他にあるんじゃねえの?」
西門さんの言葉に、類はちらりとそちらに視線を投げ、またすぐにそっぽを向いてしまった。
「―――見合いをしろって」
「見合い、って・・・・・」
確か、縁談はあたしが誰かを選んでからって・・・・・
「もう、セッティングしてるからって。見合いだけして、結婚はまだしなくていいからってさ」
「怪しいなそれ。何か企んでんじゃねえの、お前の親も」
美作さんの言葉に、類は溜め息をついた。
「知らないよ。とにかく、今回だけは絶対に帰って来いって。結婚なんかしない。見合いしたら、すぐに戻ってくるよ」
類の言葉に。
なんだか、あたしは落ち着かなかった。
もしも、そのまま類がその相手と結婚してしまったら・・・・・・
ふと、そんな考えが頭を掠めていった・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
類がこの島を出て行ってからもう1週間が過ぎようとしていた。
類からは連絡もなく、帰ってくる気配すらなかった・・・・・。
あたしはいつの間にか、毎日港まで歩いて行って船を捜すことが日課となってしまっていた。
「―――帰ってくるのかな・・・・・」
そう呟いた時。
「あいつは約束を破ったりしねえよ」
振り向けば、そこには道明寺、その後ろに西門さん、美作さんが立っていた。
「類の親が、もし何かを企んでたとしても、あいつはお前以外の女と結婚したりしない」
西門さんの言葉に、2人も頷いた。
「それだけは、絶対だ。信じてやれよ、あいつのこと」
美作さんの言葉に、あたしも頷くけれど・・・・・
それでも消えない不安が、あたしを海の方に向かせていた。
3人が、ちらりと視線を交わす。
「―――そんなに気になるなら、お前もいくか?」
道明寺の言葉に、あたしは一瞬目を瞬かせた。
「行くって・・・・・」
「類のところに。見合いなんか、お前がぶち壊してやればいい」
他の2人も頷き、にやりと笑う。
「あたしが・・・・・?」
「そう。お前にしか、できないことだぜ」
そう言われて。
あたしは遠い海の向こう、類の姿を思い浮かべて拳を握り締めたのだった・・・・・。
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