「俺も、実際のところ結婚なんてどうでもいいって思ってたんだけどな」
そう言って西門さんはソファーに身を沈め、その長い足を投げ出した。
「けど、お前のこと考えたら―――他のやつと結婚なんて、してほしくないって思った。で、俺自身も、お前以外のやつとは結婚したくないって思ったんだ」
「でも・・・・・」
「わかってる。お前が俺を選ばなきゃ、いずれはそうなるって。正直、そん時の状況は想像したくねえけど。でも、お前が選んだことならそれを受け入れるしかねえとは思ってるよ」
「なんか、すごいプレッシャー感じるんだけど」
「だろうな。あいつらとも話してたんだ。いま俺たちがやってることは、おまえを苦しめてるだけなんじゃないかって」
そう言って、西門さんはあたしに視線を落とした。
「だから、協定を結ぼうかと思ってるんだよ」
「協定?」
「ああ」
なんとなく、聞くのが怖いような・・・・・
「それって・・・・・どんなの?」
「お前が誰か1人を選べないんなら、F4で共有しようかって話」
この人たちの頭の中は一体どうなってるんだろうと、思わずにはいられなかった・・・・・。
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「要するに、お前は俺と結婚するんだよ」
美作さんが、あたしを見てにっこりと微笑む。
「なんでそうなるの?」
「それが一番無難だから。司のところは絶対一番大変だろ?家自体もそうだけど、加えてあの母親だ。たぶん、結婚しても苦労が多いだけだ」
それはそうだろうということはわかる。
道明寺との婚約を解消した理由の一つでもあるし。
「類のところも、親父さんがかなり厳しい人だからな。お前とぶつかることはまず間違いない」
「会ったことないけどね・・・・・」
「それから総二郎のところも。お茶の世界はたぶん一般庶民には想像のつかない世界だぜ」
「でしょうね」
「そうなると、一番ましなのは俺の家ってわけだ」
「ましって・・・・・」
「おやじは忙しいし、たぶん俺も海外に行くことが多くなるけど、その分家では自由だ。うちでは母親や妹の相手をしててくれればいいし、習い事も好きにしていい。もちろんパートナーとしてやらなくちゃいけないことはあるけど、心配しなくても俺や母親のいうことを聞いてくれれば問題ないし」
「待ってよ。でも、それであたしをF4で共有って、どういうことなの?」
「俺の家には、あいつらは出入り自由だ。俺がいなくても、勝手に来て寛いでやがる。だから、結婚してたって、だれが家に来てても誰も気にしない。妙な噂も立てられにくいってわけだ」
「あたしに―――そういう生活しろっての?」
「お前が1人だけを選べないって言うんなら、の話だよ」
そう言ってにやりと笑う美作さん。
その後ろにF3の笑顔。
これは・・・・・・
またあたし、嵌められてるんじゃないんだろうかと、頭を抱えるのだった・・・・・・。
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