「おれたちの結婚なんて、結局政略結婚なんだよ」
道明寺が言った。
「親たちが考えてるのは常に会社や家のことだ。そんなのは昔からずっと言われてきたことで、いまさら不思議にも思わねえけどな」
「そういうの、あたしには理解できないよ」
あたしの言葉に、道明寺がくっと笑った。
「お前はそれでいいよ。おれたちはお前にそんなこと理解してほしいと思ってねえし。逆に、だから俺たちはお前が好きなんだし」
面と向かって言われ、頬が熱くなる。
「俺たちがこの先誰と結婚しても変わらねえって言ったのはそういうことだよ」
「どういうこと?」
「ずっとお前が好きだ。牧野つくし以上の女なんて、いるわけねえ。会社や家のために他の女と結婚して子供作っても、それは変わらねえってこと」
道明寺の言葉に、あたしは戸惑った。
ずっとあたしを思い続けるっていうの?
そんなこと―――
「ここでお前がどんな結論出しても、俺たちは受け入れる。だから、お前も受け入れろ。この先もずっと、俺たちはお前のそばにいるってこと」
それはつまり。
あたしが誰か1人を選んだとしても、他の3人も一緒にいるということ?
誰か1人と結婚しても、他の3人との関係もずっと変わらない・・・・・?
あたしは、う〜んと空を見上げて考えた。
それって、いいことなんだろうか・・・・・?
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「結婚なんて、できなくてもいいんだ。ずっと一緒にいられれば」
類が、穏やかに微笑む。
「でも、ジュニアとしてはやっぱり結婚が必要だって言われるし。だけどその気のない相手と結婚したって幸せになれないよ」
「それは、あたしにもわかるけど」
「だから、親の顔を立てる意味で縁談は受けるけど、結婚するつもりはない」
「でも、それじゃあ―――」
「約束なんだ、そういう。おれが一番好きな相手とじゃなければ結婚しない。それ自体は納得してくれてる」
「そう―――なの?」
上流社会の話は理解できないことが多い。
例えばあたしに、そんな世界でうまくやっていく自信はなかった。
「いいんだ、結婚できなくても。俺にとって、牧野はそういうの全部乗り越えた存在だから」
無邪気な笑顔でそう言う類に、どう答えたらいいかわからない。
「ただ、いつもそばで牧野の笑顔を見れたらいい。もちろん、それが俺だけのものならなおいいと思うけど」
そう言って、目にも止まらぬ速さでかすめるようなキスを奪う。
そして、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。
―――結局最後はこうなるのね・・・・・
あたしは顔が熱くなるのをごまかすように、長い溜め息を吐いたのだった・・・・・。
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