***Miracle Girl vol.18 〜F4×つくし〜***


お城の中にある図書室へ入ろうとして。

窓際で本をめくる西門さんの姿が目に入り、そのままくるりと向きを変えるが

「何で逃げるわけ?」

後ろからかけられた声に、ぴたりと足が止まる。

「冷たいよなあ、つくしちゃんは」

溜め息とともに呟かれた言葉に、思わず振り返る。

「に、逃げてるわけじゃないよ。ただ、読書の邪魔しちゃ悪いかなって―――」

「ただの暇つぶしだよ」

そう言った西門さんは、いつの間にかあたしのすぐ傍まで来ていた。

「ここって、遊ぶとこもねえし、退屈なんだよな」

「そう、だね・・・・・」

「何か面白いもんでもないかと思って、さっき屋上から望遠鏡で外眺めてたんだけど―――」

あたしの後ろにある、図書室の扉をさりげなく閉める西門さん。

逃げ場をなくされたような気がしてくる。

「面白いもんが、見えたよ」

「え・・・・・何?」

「類が、昼寝してた」

壁に両手をつき、あたしの体を囲うようにしてしまう。

「あ、あたしもさっき、散歩してて会ったよ、類に」

「知ってる」

「え?」

「見てた。―――2人が、キスしてるとこもな」

声も、その表情も穏やかだけれど。

その瞳には、燃え盛る炎が見え隠れしているようで。

あたしは、息をのんだ。

「あれは―――」

「それから―――お前の体に触れるとこも」

西門さんの顔が、あと数センチのところまで近づき、思わずぎゅっと目を閉じる。

「お前の意思は尊重するつもりだけど」

耳元に息がかかるのに、ぞくぞくする。

「けど―――あんな場面見せられたら、俺も黙っちゃいられねえ」

そして次の瞬間には

西門さん唇が、あたしのそれを塞いでいた―――。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おう、どした?」

キッチンに駆け込むと、そこにはコーヒーをいれてる美作さんがいた。

「あ―――あれ?みんなリビングいるんじゃないの?お昼ごはんだって・・・・・」

「ああ。ちょっとコーヒーの味が納得いかなくて。入れなおしてるとこ」

「へえ・・・・・」

「お前は?こんなとこに何しに来たの」

「あたしは・・・・・」

どう言おうか迷っていると、あたしの顔をじっと見ていた美作さんが口を開いた。

「総二郎か、類に迫られた?」

「え・・・・・なんで・・・・・」

驚いて美作さんを見つめると、くすりと笑みを零す。

「そんなことじゃねえかと思った。お前は、迫られると弱いタイプだよな」

「そんなこと・・・・・」

「いつも自分からガンガン攻めてくタイプだからか、攻められることに慣れてねえんだ。けど・・・・・戸惑ってばっかりいたって答えは見つからねえぜ」

「―――分かってるよ」

「自分と、じっくり向き合ってみな。1人じゃ難しかったら俺が手伝ってやるよ」

そう言って、美作さんがあたしのそばへ歩いてくる。

それに合わせて、あたしは扉へと後ずさる。

「俺が選ばれなくっても、それは仕方ねえことだと思ってる。けど・・・・・」

「けど?」

「ちゃんと、俺が納得のいく答えを出せよな」

そう言って間近であたしを見つめる美作さんの瞳は

怖いくらいに真剣そのものだった・・・・・



  

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