***Miracle Girl vol.17 〜F4×つくし〜***


部屋の窓から、星空を見上げる。

東京の空とは違う、満天の星空。

瞬く、なんてもんじゃない。

まるで数え切れない数の宝石をぶちまけたみたいだった。

これが見れただけでも、ここまで来た甲斐があったのかな。

なんて、暢気に構えている場合じゃないんだけれど。

正直に言えば、まだ結婚なんて考えられない。

でも、それぞれの家のジュニアである彼らには、間近に迫った問題なのだ。

そして、何でだか4人ともあたしのことを想ってくれている。

だからやっぱり、あたしも彼らの思いを受け止めなくちゃいけないんだと思う。

だけど、4人の中から誰か1人を選ぶなんて・・・・・・

そんなこと、できるだろうか。

「5人で結婚、なんてわけにもいかないしね」

自分の気持ちに正直に。

だけど・・・・・・

4人とも、あたしにとってはかけがいのない仲間なのだ。

4人とも失いたくない。

それがあたしの、正直な気持ちだった・・・・・

「どうすればいいんだろう・・・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ふと窓の外を見ると、広い庭の片隅で海を眺めている道明寺の姿があった。

1人きりで、じっと動かない道明寺。

何をしているんだろう?

気になって、あたしは外に出て道明寺の元へ行ってみた。

「何してるの?」

「お前か・・・・・。ちょっと、考え事だ」

ちらりと、あたしを見て道明寺はまた視線を海へ戻した。

「何かあった?」

「いや・・・・・。これから、どうなるのかと思ってよ」

「どうなるって・・・・・」

「この状況を作り出したのは俺たち、それから俺たちの親どもだ。お前には悪いことしたと思ってるよ」

らしくない言葉に、あたしは戸惑った。

「何、それ。気持ち悪いよ」

道明寺は、あたしの言葉にふっと笑った。

「こういうとき、お前は人を責めないんだよな。自分が本当に苦しいとき、お前は1人で乗り切ろうとするんだ。そういうとこ、すげえ好きだし・・・・・もっと頼って欲しいと思ったりもする。だけど実際は俺なんかの手には負えねえ女なんだよ」

「なんか、ずいぶんなこと言われてる気がするけど」

「本当のことだ。お前にかかったらF4も形無しだ。けど・・・・・1人じゃ無理でも、4人一緒なら何とかなるかも知れねえと思った」

「あたしはモンスターか」

「モンスターのほうがまだ勝ち目ありそうだぜ」

「あのね」

「とにかく」

突然、道明寺の手があたしの肩を掴んだ。

「これからお前が誰を選んでも―――誰と結婚することになっても、俺の―――俺たちの気持ちはかわらねえ。ずっと、お前のことが好きだ」

そう言ったかと思うと、道明寺の唇があたしの唇を塞いだ。

何がどうなってるんだか―――

誰を選んでも変わらないって、どういうこと・・・・・?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


お城の敷地内にある広い森の中を1人で散歩する。

これが、ここへ着てからのあたしの毎日の日課になりつつあった。

鳥がさえずり、リスが木の上を走り回っている。

こんな状況ではあっても、自然に触れるとやはり落ち着くものだった。

やがて、森を抜けて原っぱのような開けた場所に出る。

そこでう〜んと伸びをし、更に歩こうとしたそのとき―――

「うわっ」

「きゃあっ!?」

何かにつまずき、あたしは見事にすっころんでしまった。

「いたあ・・・・・」

と、そんなあたしの腕をぐいっと引っ張り助け起こしてくれたのは・・・・・

「大丈夫?牧野」

「花沢類・・・・・なんでここに」

「昼寝してた。散歩してたら眠くなっちゃって」

そう言って微笑む類は相変わらずマイペースで。

「・・・・・あたしも、散歩してたの。ごめんね、痛かったでしょ?」

「大丈夫。それよりも、牧野が来てくれて嬉しい」

優しく見つめられて、ドキッとする。

「あ・・・・・・でも、昼寝の邪魔しちゃ悪いから、もう行くよ」

そう言って立ち上がろうとして、逆にその腕を引っ張られ、思わずよろける。

「わっ、ちょっ、類っ」

「もうとっくに邪魔してるよ」

「だから、もう行くって・・・・・」

「だめ。ここにいて」

気付けば、あたしは草の上に横たえられていて。

花沢類の腕が、あたしを腕の中に閉じ込めていた。

心臓の音が、うるさいくらいに激しく鳴り出す。

「せっかく、2人きりになれたんだし」

にっこりと、天使の笑顔。

「だ、だから―――?」

あたしの顔は、たぶん引きつってる。

「いっぱい、キスしよう」

そう言って。

あたしが何か言うより先に、その唇を、類の唇が塞いだ・・・・・。



  

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