部屋の窓から、星空を見上げる。
東京の空とは違う、満天の星空。
瞬く、なんてもんじゃない。
まるで数え切れない数の宝石をぶちまけたみたいだった。
これが見れただけでも、ここまで来た甲斐があったのかな。
なんて、暢気に構えている場合じゃないんだけれど。
正直に言えば、まだ結婚なんて考えられない。
でも、それぞれの家のジュニアである彼らには、間近に迫った問題なのだ。
そして、何でだか4人ともあたしのことを想ってくれている。
だからやっぱり、あたしも彼らの思いを受け止めなくちゃいけないんだと思う。
だけど、4人の中から誰か1人を選ぶなんて・・・・・・
そんなこと、できるだろうか。
「5人で結婚、なんてわけにもいかないしね」
自分の気持ちに正直に。
だけど・・・・・・
4人とも、あたしにとってはかけがいのない仲間なのだ。
4人とも失いたくない。
それがあたしの、正直な気持ちだった・・・・・
「どうすればいいんだろう・・・・・」
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ふと窓の外を見ると、広い庭の片隅で海を眺めている道明寺の姿があった。
1人きりで、じっと動かない道明寺。
何をしているんだろう?
気になって、あたしは外に出て道明寺の元へ行ってみた。
「何してるの?」
「お前か・・・・・。ちょっと、考え事だ」
ちらりと、あたしを見て道明寺はまた視線を海へ戻した。
「何かあった?」
「いや・・・・・。これから、どうなるのかと思ってよ」
「どうなるって・・・・・」
「この状況を作り出したのは俺たち、それから俺たちの親どもだ。お前には悪いことしたと思ってるよ」
らしくない言葉に、あたしは戸惑った。
「何、それ。気持ち悪いよ」
道明寺は、あたしの言葉にふっと笑った。
「こういうとき、お前は人を責めないんだよな。自分が本当に苦しいとき、お前は1人で乗り切ろうとするんだ。そういうとこ、すげえ好きだし・・・・・もっと頼って欲しいと思ったりもする。だけど実際は俺なんかの手には負えねえ女なんだよ」
「なんか、ずいぶんなこと言われてる気がするけど」
「本当のことだ。お前にかかったらF4も形無しだ。けど・・・・・1人じゃ無理でも、4人一緒なら何とかなるかも知れねえと思った」
「あたしはモンスターか」
「モンスターのほうがまだ勝ち目ありそうだぜ」
「あのね」
「とにかく」
突然、道明寺の手があたしの肩を掴んだ。
「これからお前が誰を選んでも―――誰と結婚することになっても、俺の―――俺たちの気持ちはかわらねえ。ずっと、お前のことが好きだ」
そう言ったかと思うと、道明寺の唇があたしの唇を塞いだ。
何がどうなってるんだか―――
誰を選んでも変わらないって、どういうこと・・・・・?
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お城の敷地内にある広い森の中を1人で散歩する。
これが、ここへ着てからのあたしの毎日の日課になりつつあった。
鳥がさえずり、リスが木の上を走り回っている。
こんな状況ではあっても、自然に触れるとやはり落ち着くものだった。
やがて、森を抜けて原っぱのような開けた場所に出る。
そこでう〜んと伸びをし、更に歩こうとしたそのとき―――
「うわっ」
「きゃあっ!?」
何かにつまずき、あたしは見事にすっころんでしまった。
「いたあ・・・・・」
と、そんなあたしの腕をぐいっと引っ張り助け起こしてくれたのは・・・・・
「大丈夫?牧野」
「花沢類・・・・・なんでここに」
「昼寝してた。散歩してたら眠くなっちゃって」
そう言って微笑む類は相変わらずマイペースで。
「・・・・・あたしも、散歩してたの。ごめんね、痛かったでしょ?」
「大丈夫。それよりも、牧野が来てくれて嬉しい」
優しく見つめられて、ドキッとする。
「あ・・・・・・でも、昼寝の邪魔しちゃ悪いから、もう行くよ」
そう言って立ち上がろうとして、逆にその腕を引っ張られ、思わずよろける。
「わっ、ちょっ、類っ」
「もうとっくに邪魔してるよ」
「だから、もう行くって・・・・・」
「だめ。ここにいて」
気付けば、あたしは草の上に横たえられていて。
花沢類の腕が、あたしを腕の中に閉じ込めていた。
心臓の音が、うるさいくらいに激しく鳴り出す。
「せっかく、2人きりになれたんだし」
にっこりと、天使の笑顔。
「だ、だから―――?」
あたしの顔は、たぶん引きつってる。
「いっぱい、キスしよう」
そう言って。
あたしが何か言うより先に、その唇を、類の唇が塞いだ・・・・・。
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