-tsukushi-
「お前ら、俺をナメてんのか?」
道明寺の額に、青筋が浮かぶ。
「別に、なめちゃいねえけど」
肩を竦めて、西門さんが答える。
「俺のいねえ間に何があった?」
「何って言われても・・・・・」
と首を傾げる花沢類。
「ま、なるべくしてなったって感じ?」
と、穏やかに微笑む美作さん。
「だから、なんで!!」
道明寺が、わなわなと震え始める。
あたしは見て見ない振り・・・・・。
「3人とも牧野に惚れたって、どういうことだよ!!」
道明寺の言葉に3人は顔を見合わせ・・・・・
「相変わらずものわかりの悪いやつ」
「好きなものは好きなんだから、しょうがないでしょ」
「言っとくけど、俺たちは手ごわいぜ?」
F3の不敵な笑みに、道明寺は言葉をなくし・・・・・
あたしはこれから起こるであろうバトルに、天を仰いだのだった・・・・・・。
-akira-
家に帰ると、牧野がリビングで眠りこけていた。
「疲れてたみたいなの。起こすのかわいそうだから、このまま泊まってもらったらどうかしら」
どうかしらって・・・・・
母親の言葉に、俺は絶句する。
「あきら君、客間に運んであげてくれる?」
「・・・・・わかった」
俺は牧野を横抱きにし、部屋まで運ぶとベッドに横たえた。
スースーと穏やかな寝息。
無邪気な寝顔が、天使のようにも見えた。
胸が高鳴る。
そっとその頬に触れてみれば、微かに睫が震える。
僅かに開かれたその唇に誘われるように、そっと口付けた・・・・・。
「「おにいちゃま!!」」
突然勢いよく開かれた扉。
おれは慌てて牧野から離れる。
「「つくしおねえちゃまと一緒に寝てもいい?」」
天使の笑顔の小悪魔たちに、思わず溜息が漏れていった・・・・・
-tsukushi-
「あきらの家に泊まったって本当?」
怒りを含んだ類の視線にドキッとする。
「と、泊まったっていうか―――」
「泊まったの?」
「つい、寝ちゃって、よく覚えてな―――」
「泊まったんだね」
「―――――うん」
じっとあたしに注がれる視線。
類が怒っているのが伝わってくる。
でも、あたしと類は付き合ってるわけじゃないし。
そんなに怒らなくても・・・・・。
「美作さんのお母様と一緒におしゃべりしてたらつい、長居しちゃって・・・・・。気付いたらあの双子ちゃんと一緒にベッドに寝かされてて・・・・・そのベッドがまたふっかふかで気持ちよくって、だから熟睡しちゃったんだよきっと」
あたしは悪くない、なんて思っててもつい言い訳しちゃうから、また余計に睨まれたりするのかな・・・・・。
「双子の部屋・・・・・ってことは、あきらは一緒じゃなかったってこと?」
「あ、当たり前じゃない!何で―――」
泊まるにしたって、美作さんの部屋のわけないのに。
「よお牧野。昨日はよく眠れたか?」
後ろから聞こえた声に、あたしははっとして振り向いた。
「美作さん!」
「お前、寝顔は意外とかわいいんだな」
「は!?」
「・・・・・あきら、それどういうこと」
また一段と、類の声が低くなる。
その言葉に、美作さんがにやりと笑う。
「妹たちを寝かしつけるのは、俺の役目だから」
そして一瞬、2人の間に火花が散る。
「楽しい夜を、過ごさせてもらったよ」
美作さんのその言葉に、類が顔を顰め・・・・・・
確かに、何かがぶちっと切れる音がした・・・・・。
「あきらの家に泊まったって?」
突然目の前に現れた西門さんが、鋭い視線であたしを睨む。
「何でそれ・・・・・」
「んなことどうでもいい。何考えてんだよ、お前」
「何って・・・・・だって、気付いたら寝ちゃってたんだもん」
「寝ちゃってた、じゃねえだろ!?それじゃあ襲ってくださいって言ってるようなもんじゃねえか!」
「い、言ってないよ、そんなこと!」
「あきらだったらそう受け止める」
「何でそんなこと」
「俺があきらの立場だったらそう思うからだ!」
「威張らないでよ!」
「とにかく」
ぐっと手首を掴まれる。
「な、何・・・・・」
「俺を怒らせた責任、取ってもらおうじゃねえか」
にやりと口の端をあげて笑った西門さんの顔は。
ぞっとするほど殺気を帯びているように見えたのは、あたしの気のせいだろうか・・・・・
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