「お、きたな」
道明寺がにやりと笑った。
「すげえなその服」
西門さんが目を丸くする。
「うひゃあ、うちの母親が見たら喜びそうだな」
美作さんが複雑そうな顔をして肩をすくめる。
「かわいいよ、牧野」
類がにっこりとほほ笑んで。
あたしは大きくため息をついた。
「なんでこんなドレスしかないわけ?しかもあたしだけ!」
見れば、F4はみんないつもと同じラフな服装だった。
「さあな。違う部屋にあるんじゃねえの?お前用の部屋、5つくらいあるはずだから」
道明寺の言葉に、あたしはがっくりと肩を落とした。
「なんで5つも・・・・・」
「それくらい女なら必要だろ?」
「いらん!あーもう、いいや。後で他の部屋探すから。もうお腹すいた。食べる!」
そう言って席に座ると、次々に目の前に現れる豪華な食事の数々。
それを一心不乱に食べ始めるあたしを見て。
「やっぱり牧野はこうだろ」
「うまそうに食べるよな、ほんと」
「見てて飽きねえよ」
「イキイキしてるよね」
そんな風に言いながら。
F4があたしのことを優しく見つめていたことなど、このときのあたしは気づく余裕すらなかった・・・・・。
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「あ、この部屋がいいかも」
扉を開けて覗いてみると、白とピンクを基調にしているのに変わりはないが、シンプルで飽きの来ないデザインの家具で統一されたその部屋はあたしにもしっくり来るものがあった。
「ああ、いいね。牧野にぴったり」
後ろにいた類も頷いた。
「ここにも衣裳部屋があるのかな?」
「たぶん・・・・・ここじゃない?」
さっさと先にたって行き、白塗りの扉を開けると、なるほどそこは衣裳部屋になっていた。
さっきのドレスばかりの部屋とは違い、ここにはあたしの普段着ているのに近い服がたくさん置いてあった。
もちろんブランドのものばかりで、あたしが持っている服とは値段が格段に違うのだろうけど。
中にあったシンプルなワンピースを取って着替えると、あたしはようやくほっとすることができた。
「安心した。ここにいる間中、あんなドレス着なきゃいけないのかと思った」
あたしが溜め息をつくと、類がおかしそうにくすくすと笑った。
「あれも似合ってたよ。動きづらそうだけどね」
「やだ、あんなゾロゾロしたの・・・・・。ね、ここって電気来てるの?」
「ああ、自家発電だって。電話はないけど携帯は使えるし、意外と便利だよね」
「暢気なんだから・・・・・」
「―――俺は牧野といられればいいから」
そう言って、類があたしの髪をそっと撫でた。
どきんと胸が鳴る。
「牧野といられるなら・・・・・どこだって俺にとっては天国だよ」
にっこりと天使の微笑。
気付けば、類の唇があたしの唇に重なっていた・・・・・。
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