冷たい石造りの塀に囲まれた堂々としたお城。
一見ファンタジーの世界に迷い込んだようで、しっかりと作られたその城はまるで大昔からそこに立っていたかのような風格さえ感じさせた。
「まったく、道明寺財閥ってのは半端ねえよな。あっという間にこんな城建てちまうんだから」
美作さんの呟きに、あたしもただただ頷いた。
「ここでの生活のために、使用人が50人いるってさ」
花沢類の言葉に、「げっ」と顔を顰める。
「ここまできたら無人島っていわねえよな。孤島の城ツアー?」
西門さんもさすがに呆れた顔をしている。
その中でただ1人いつもと変わらないのはやっぱり道明寺で・・・・・
「腹減った!おい、お前らぼーっと突っ立てないで早く来いよ!飯にしよう!」
「―――あいつ、こんなとこにいていいの?仕事は?」
あたしの言葉に、3人が肩をすくめた。
「俺たち3人に負けるわけにはいかねえって、何でだか司のお袋がむきになってるって話。この嫁とり合戦に決着つくまでは戻ってくるなって言われたらしい」
美作さんの話に、思わずげんなりする。
「誰を選んでも、結局あの魔女とはうまくいかない気がするんだけど」
肩を落とすあたしの肩を西門さんがぽんぽんと叩き、花沢類があたしの手を引く。
そうしてお城に入って行くあたしたち。
こうして今度は、孤島のお城での生活が始まったのだった・・・・・。
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部屋はどこでもいい、と言われたけれど、とりあえず着替えなどが一式揃えてあるという部屋へ案内してもらう。
美作さんのお母さんの趣味か、と思うほどメルヘンチックな白とピンクを基調にした部屋の内装。
レースやフリルがふんだんに使われたカーテンやベッドカバーなど、圧倒されるほどの少女趣味。
極めつけは天蓋つきのベッド。
「ここで生活するわけ・・・・・・?」
1人では広すぎるそのゴージャスな部屋に、ただただ圧倒されるばかりだったが・・・・・・
「そうだ、着替えなきゃ。すぐ食事にするって言われてたっけ」
部屋の中をきょろきょろと見回し、洋服ダンスと思しき大きな箪笥の扉に手をかけ開けてみると―――
「―――何これ」
それは箪笥ではなく、もうひとつの部屋へ続く扉で、中はあたしのアパートよりも広い衣裳部屋になっていた・・・・・・。
「―――どれを着れば良いわけ?」
そこにあるのは、どれもマリーアントワネットが着ているような華やかなドレスばかりで―――
膨大なドレスを前に、あたしは頭を抱えたのだった・・・・・。
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