「お前のために、一生結婚しないっていえたら良いんだけどな」
美作さんが苦笑して言った。
「そうもいかない。俺たちの世界は・・・・・。だから、これが最後だと思ってる」
「最後?」
「親との約束だからな。お前が誰かを選んだら、その時点で選ばれたやつ以外は縁談を受けるんだよ」
「みんなが・・・・・?」
「そ。だから、牧野が誰か1人を選ぶまでは、俺たちの好きにさせてくれっていったんだ」
美作さんの優しい手が、あたしの髪をそっと撫でた。
「たぶん、俺たち4人がお前と過ごせるのはこれが最後だ。だから、悔いの残らないようにしたい」
「あたしは・・・・・どうしたら良いの?」
「お前は、自分の気持ちに正直になれば良い。俺たちは、お前の気持ちをちゃんと受け止める覚悟を最初からしてるから」
額に、そっと優しいキスを落ちてくる。
ほっとするような、安心感を与えてくれるキスだった・・・・・。
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たどり着いたのは、最初に来たときと同じところとは思えないような、大豪邸が目の前に見える海岸で。
「―――最初に漂着したのとは、反対側になるんだよ」
類の説明に、かろうじて頷くことができたあたし。
道明寺って、どんだけすごいんだろうって感心するやら呆れるやら。
まるで、昔憧れたシンデレラ城の様な白亜の城。
いったい部屋はいくつあるんだろう?
船を下りると、目の前に現われたそれにまた驚かされる。
真っ白な馬が2頭、これまた真っ白な馬車に繋がれていて。
パステルピンクの燕尾服を来た男の人が、その前で恭しく頭を下げた。
「皆様、お待ちしておりました。どうぞ、お乗りください」
その言葉に、当たり前のように馬車に乗り込んでいくF4。
あたしは慌ててその後をついていった。
がたがたと小刻みに揺れながら進む馬車の中。
「部屋はたくさんあるから、好きな部屋選べよ。日替わりでも良いぞ」
との道明寺の言葉に、引きつった笑いしか返せない。
「最初のサバイバルと違って、着替えも食べ物も充分用意されてるから、ちょっとした旅行だと思って楽しめば」
あたしを気遣うような西門さんの言葉に、それでも納得しきれないあたし。
「牧野には、笑ってて欲しいんだ」
類の言葉に、はっとする。
「こうなったのは、俺たちの家のせいだけど。でも、そうそうできない経験だしね」
にっこりと無邪気な微笑みをあたしに向ける。
「そういうこと。牧野は、ただ楽しめば良い」
美作さんの言葉に。
なんとなく、悩んでるのが馬鹿らしくなってくる。
「―――わかった。もう、夢の中のことだと思って思いっきり楽しんでやる」
そう言ってぐっと拳を握るあたしを見て、4人は楽しそうに笑ったのだった・・・・・。
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