***秘密の花園 vol.4 〜?つくし〜***



   「菅野コンツェルンは道明寺財閥と肩を並べるほどの大財閥だ。それは知ってるだろ?」
 西門さんの言葉に、あたしは頷く。
「―――一応」
「ただ、あそこは後継ぎの問題があって―――今の会長の甥が後を継ぐって話だったんだけど、昔から体が弱いのと結婚もしてないってことでその辺が微妙だった」
「―――こないだ、亡くなった人だよね」
 ママの、従兄弟だって言ってた人だ。
「ああ。―――で、一時期菅野家が養子をとるんじゃないかって話があったんだ」
 その後を引き継ぐように、美作さんが口を開く。
「最初はその甥の嫁探しだって話だったんだけど、どうにも体が弱くて子供を作るのは無理そうだって言うんで―――噂で、候補に挙がってたのが俺ら4人だ」
「ええ?F4が?だって―――」
 養子ったって、F4はF4で自分の家の跡継ぎなはずだ。
 そんなこと―――
「F4の評判をどこかで聞きつけたらしい会長が、一時的にでもF4の誰かを菅野家の人間にして後継ぎを作るつもりなんじゃないかって噂だった。で―――実際にはそんな話なかったんだけど―――先月、菅野家主催のパーティーに俺らが招待されたんだ」
「菅野匠―――会長の甥の誕生日パーティーのはずだったんだけど、当の本人は入院中で欠席。妙な空気の漂うパーティーでさ。会長が俺ら1人1人に話しかけてきて―――まるで試されてるみたいな感じだった。だから俺らもその噂が本当なのかって疑ったほどだ」
 西門さんの話を聞きながらも―――
 あたしは首を傾げた。
「それで?あたしが菅野家の人間だったからって、それがあんたたちにどう関係してくるの?」
 その言葉にF4は顔を見合わせ―――
 美作さんが、ちらりとあたしを見た。
「これは俺らの予想だけど―――つまり、会長は俺らをお前の花婿候補にしてるんじゃねえかって思ったんだ」
 その言葉に、思わずぎょっとする。
「はあ!?花婿!?」
「そ。甥の病状が悪化して―――後継ぎ問題がますます深刻化してきたとき、当然駆け落ちした実の娘の存在が浮上するだろう。本気になって調べりゃあ、なんだってわかるはずだ。まあたぶん、それまでわかってても連れ戻さなかったのは会長自身の意地もあったんだろうよ。で―――重要なのはお前たち姉弟―――孫たちのことだ。娘の旦那の今までの仕事ぶりを見れば、後継ぎとしてふさわしいかどうかってのはすぐに判断できる」
「―――パパじゃ無理ってこと?」
「ま、そうなるな。駆け落ちまでしたんだ。無理やり別れさせるようなことをすれば娘が反発して戻ってこないことはわかってる。そこで、2人のことは認めることにして―――その子供たちに、希望を託そうとしたってところじゃねえかって、これは俺らの考えだけど」
「あたしと、進に?だったら、進は男なんだし進に―――」
「ところがそうはいかねえ」
 あたしの言葉を遮ったのは西門さんだ。
 さっきから、話をしてるのは美作さんと西門さんだけ。
 花沢類はじっと聞いてるだけで、道明寺は―――あんまりわかってないのかもしれない・・・・・。
「会長夫婦と会ったなら、わかるだろ?もう2人とも70を超えてる」
「―――うん」
「お前の弟はまだ中学生だ。その弟の成長を待って跡継ぎとして育てるには時間が足りねえ。下手すりゃ弟が成人を迎える前にお迎えが来るってことも考えられる」
「ちょっと、縁起でもないこと言わないでよ」
「けど、事実だぜ。当然会長はそのことを考えたはずだ。菅野コンツェルン存続のため―――菅野家存続のためにはお前ら2人の結婚がキーポイントになってくるんだ」
「あたしたちの―――」
「そうだ。だとすれば、残るはお前。お前は女だから、当然婿をとることになるよな。で、問題はその婿が誰かってことになる。菅野家の跡継ぎとしてすぐにでも家を任せられるような―――そんな人間が必要だ。で―――幸か不幸かお前はこの学園にいて、そのすぐ身近な存在としてF4がいる。そうなりゃあ答えは簡単だ。お前の婿として、俺らの中の誰かを後継ぎにすりゃあいいってな」
「ちょ、ちょっと待って―――頭がついていかない」
 あたしは頭を抱えた。

   昨日、ママが菅野コンツェルンの会長の娘だったって事実を知って。

 もうそれだけでいっぱいいっぱいになってたのに。

 今度は、あたしの婿?

 しかもそれがF4?

 あり得ない。

 そんなこと―――

 「パニックになってる場合じゃないぜ。これはおそらく会長の頭の中ではすでに決定事項として進んでる話だ。だからこそ、甥が亡くなる1ヶ月も前に俺らに会ったんだ。その時からもう計画は動き始めてる。お前が菅野家の人間だったって聞いて―――ようやくパズルのピースが見つかった気がした。これで辻褄が合うんだよ」

 西門さんの言葉に

 それでもあたしはまだ理解できなかった。

 あたしの婿に、F4?

 自分が菅野家の人間だったってこともまだ信じられないのに。

 こんなこと―――

 すぐに受け入れられるはずがない。

 それでも―――

 確かに、あたしの周りでは何かが急激に変わり始めていたんだ・・・・・。







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