「あなたがつくし―――それからあなたが進ね」
そう言って微笑んだのは、小柄な白髪の老婦人。
その笑顔は優しく、目元がママに似ていた。
「こんなに大きくなっていたとは・・・・・会いたかったよ」
隣にいた上品な白髪の老紳士も目元を緩ませてあたしたちを見つめた。
この人たちが、ママの両親―――あたしたちの祖父母だなんて。
あたしも進も頭の中がこんがらがってどう対応していいのかさえ分からなかった。
菅野コンツェルンと言えば、大企業をいくつも抱える日本を代表する財閥だ。
それこそ、あの道明寺家と肩を並べる程の財力を持ち、世界にもその名を轟かせている。
それが、ママの実家だなんて。
ママは、この両親に反対されてパパと駆け落ちしていたなんて。
そんなこと、寝耳に水。
とてもじゃないけど、現実のこととは思えなくて。
「あの―――私も進も、何も知らなかったんです。本当に―――」
「ええ。あなたのお母様は、私たちの実の娘よ」
祖母が、あたしの後ろにいたママへ視線を移す。
「どんなに探したか―――あなたには、話したいことがたくさんあったのに」
その言葉に、ママは目を伏せた。
今まで引っ越しが多いのは、借金のせいだと思ってた。
家賃が払えないからだって。
だから住み込みで働いたりしてたんだって。
でも、それは違ってた?
ママは、実家に帰りたくなくて―――それで逃げていたの・・・・・?
あたしは、押し黙ったままのママを、じっと見つめた―――。
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