「まあ〜〜〜!こんなに大きくなって!」
屋敷に着くなり、玄関まで出迎えに出てきてくれていたお義母さまが双子に駆け寄る。
「ま〜、もうたっちができるのね?あんよも?ま〜、なんてお利口さんなの!」
涙でも流しそうに勢いで感激しまくっているお義母さまの後ろでは、お義父さまが咳払いし、ゆっくりと双子の元へ。
「ほら、中へ入ってもらいなさい」
その言葉に、お義母さまがはっとして顔を上げる。
「あら、そうだったわね、ごめんなさい。じゃあ私が抱っこして行ってあげるわ」
そう言ってお義母さまが2人を同時に抱き上げようとするのを見て、あたしは慌てて駆け寄った。
「あ、危ないですから快斗は私が」
そのあたしの手を止めたのは、お義父さまだった。
「いや、私が抱いて行こう」
そう言ったかと思うと、さっと快斗を抱き上げさっさと行ってしまい、お義母さまがそのあとに続く。
あたしはしばし呆気にとられ―――
類が、あたしの肩をポンと叩いた。
「―――抱っこしたかったんでしょ、2人とも」
「―――みたいだね」
家族と友達だけを招いての、双子の誕生日パーティー。
主役の2人はあちこちを走り回って落ち着かないけれど。
それでも賑やかに、温かい雰囲気の中パーティーは進められていた。
「類さま」
あたしと一緒にシャンパングラスを手に立っていた類のところへ、田村さんがやってきた。
「何?」
類の声に、田村さんがにっこりと微笑む。
「お客様が、お見えですよ」
「客?」
類が目を瞬かせる。
もう、全員集まったと思っていたけれど。
あたしも不思議に思って田村さんを見る。
と、その後ろから姿を現したのは―――
「久しぶりだな」
強い癖っ毛の黒髪が懐かしい、道明寺司その人が、まるでその場の主役のように登場したのだった―――。
「来るなんて言ってなかったのに、びっくり」
あたしの言葉に、道明寺がにやりと笑う。
「こねえとも言ってねえだろ?これでも必死にスケジュール調整してきたんだぜ。結婚式以来だからな。子供の顔、ちゃんと見たかったんだ」
そう言って、道明寺は身をかがめ、不思議そうに道明寺を見上げる双子の顔を見た。
「すげえ、類のガキの頃そっくりだな」
おかしそうに言って快斗の頭をぐりぐりとなでる道明寺。
「だろ?ところが性格はつくしだからな、特にそっちの快斗の方。優斗はおとなしいけど、類のガキの頃とは違う。やっぱ2人とも牧野家の血が入ってるって感じだぜ」
そう分析しだすのはあきら。
「そうそう、類とつくしが合体したみてえで妙な感じだぜ」
そう言って総二郎も笑う。
「何よ、2人とも快と優がかわいくて仕方ないくせに」
あたしの言葉に顔を見合わせて。
「そりゃ、お前の子だからな」
あきらの言葉に、総二郎も頷いた。
「そういうこと。お前の子供ってことは俺らの子も同然。目の中に入れても痛くねえって感じ?すげえかわいいよ」
快斗と優斗は道明寺にいとも軽々と抱き上げられ、ご機嫌な表情だ。
高いところにもビビらず、キャッキャッと楽しそうに声を上げるあたり、そう言われてみればあたしの子供のころに似てるかも、と我ながらおかしくなる。
「けど、やっぱ女の子も見てみてえよなあ。そろそろ2人目つくらねえの?」
総二郎の言葉に、類と顔を見合わせる。
「俺はいつでもいいんだけど。つくしが、せめて大学卒業してからって」
「だって、卒業式に大きいお腹でとか、ちょっと勘弁って感じだし。でも、あたしもいつか女の子は欲しいな」
自分が子供を産んで。
ふと周りを見渡してみれば、こんなに子供ってたくさんいたのかと思うほど、同じような子供が目に着いてしまうのだ。
そしてそうするとやっぱりかわいい服や髪型でおしゃれされてる女の子が目に着いて。
男の子と違って、女の子はお母さんが自分のしたい格好をさせているという感じで、すごくおしゃれな子が多いのだ。
そういうのを見ていると、あたしだったら女の子にどんな格好させるかな、なんてついつい考えてしまって。
類にそっくりの女の子もかわいいだろうなとか。
実は結構いつも考えていたりするんだけれど。
でもやっぱり、卒業してからがいいな、とか・・・・・。
「じゃ、次の子は俺とつくるか?」
と言ってにやりと笑う道明寺を見て。
「冗談でしょ。司の遺伝子なんて、強烈過ぎてきっとごまかしようがないくらい司に似そう」
ぞっとしたように言う類がおかしくて、思わず吹き出す。
「てか、その前に触れさせないから。つくしが生むのは、俺の子だけ」
そう言って後ろから抱き締められて。
身内しかいないとはいえ、みんなの注目の的だ。
「ちょ、ちょっと、類!」
思わず赤くなってじたばたするあたしを見て、みんなが楽しそうに笑っていた・・・・・。
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