*ここより、このお話は2バージョンに分岐されます。 『類つくバージョン』と『総つくバージョン』、交互にUP予定です。 紛らわしいと思われる部分もあるかと思いますが、どうぞ終了までお付き合いくださいませ。
〜類つくバージョン〜
-tsukushi- 甘い口付けに、思わず酔いそうになっていたところで我に帰る。
西門さんの胸を押し戻し、何とかそこから離れる。 「・・・・・止めて。こんなことまで・・・・・・聞いてないよ」 あたしの胸は、まだどきどきと落ち着かない。 西門さんが、切なげにあたしを見つめていた。
暫くの沈黙の後、急に西門さんは笑顔になり、明るい声であたしに言った。 「試してみる気はないか?」 「何を?」 「俺と・・・・・ちょっとでも付き合ってみようとか、おもわねえ?」 にやりと、口を端を上げて笑う。 まったく、この人は・・・・・ 「・・・・・どうしてそうやって、わざとナンパな言い方するの?」 あたしの言葉に、西門さんはちょっと目を瞬かせた。 「わざと?」 「あたしがどう答えるか分かってて・・・・・わざと怒らせるような言い方、してるみたいだよ」 西門さんは、黙ってあたしを見つめていた。 「本当は、そんなんじゃないでしょ?どうしてこんなことするの?」 あたしの言葉に、西門さんはふっと笑った。 何か、諦めきったような笑い方のような気がした。 「お前、俺のことなんだと思ってるわけ?俺は西門総二郎だぜ?お前のよく知ってる・・・・・女好きでちゃらんぽらんな、ただの遊び人だよ。最近、お前が妙にきれいになってきたからさ、ちょっと興味が湧いて来たんだよ。お前が、俺のこと好きになったりしたら類の奴がどんな顔するかなあなんて・・・・・」 「・・・・・からかっただけだって言うの・・・・・?あの日・・・・・館山であたしに言ったことも、全部冗談だったって言うの・・・・・?」
館山で、西門さんは確かにあたしに言った。
―――気付いたらお前に会いたくて、毎日お前のことばっかり考えてる。他の女と遊ぶことなんて、今の俺には出来ねえ―――
あのときの言葉が全部嘘だったとは、あたしには思えなかった・・・・・。
「・・・・・冗談だったら、よかったのにな・・・・・」 「西門さん・・・・・」 自嘲気味に、あたしから目を逸らして微笑む西門さん。 胸が、苦しくなる。 最近西門さんを見ていると、こんなふうに切なくなることが多い。
それはきっと、西門さんの気持ちが、痛いほどに伝わってくるから・・・・・。
「・・・・・冗談に、してくれよ。もう、こんなふうにお前を連れ出したりすることもない。これが最後だ・・・・・・。これで、類がヤキモキすることもなくなる。俺は・・・・・類を裏切りたくねえんだ」 「・・・・・終わり・・・・・?なかったことに、するの?全部」 「そのほうが、良いだろ?お前だって」 「そう・・・・・だね・・・・・」 でも・・・・・。 「じゃあ、そういうことで。家まで送るよ。あー、それとも類の家に送って行った方が良いか?」 「ううん、うちでいい・・・・・」 「ん、じゃあ行こうぜ」 歩き出す西門さん。 でも、あたしは動けなくて。
部屋を出ようとして、西門さんがあたしを振り返る。 「どうした?」 「それで・・・・・いいの?」 「は?」 「全部なかったことにして・・・・・。それで、またちゃらんぽらんな生き方をするの?それでいいの・・・・・・?サラさんのときみたいに・・・・・後悔はしないの?」 「・・・・・何が言いたいわけ?お前、俺に諦めて欲しいんじゃねえの?類が好きなんだろ?」 「そうだけど・・・・・」 「なら、俺が諦めた方が良いだろうが」 どう言ったら良いのかわからない。 だけど、このままにはしておけない気がした・・・・・。 「でも、ダメ。なんか違うよ。あたしのためとか、類のためとか、そういうんじゃなくて・・・・・西門さん、もっと自分のこと考えて。自分押さえ込んで、後悔だけ残して・・・・・それじゃきっといつか、西門さんだめになっちゃう」 「・・・・・俺は良いんだよ。これが、俺の生き方なんだ」 「嘘!そんなの無理してるだけだよ!何でもっと・・・・・本当の気持ち言ってくれないの!」 「本当の気持ち言ってどうなる?お前のこと好きだって言って・・・・・それでどうなる?お前の気持ちは変わらないんだろう?無理やり奪うことなんかできねえ!それなら・・・・・諦めるより他ないだろうが!」 「だけど友達だから!あたしは・・・・・西門さんと友達でいたい。だから、このままうやむやにしてしまうなんて、出来ないよ・・・・・・」 どうしたら良いのかわからない。 あたしの気持ちはどうしたって変わりようがなくて。 類のことが好き。 それは変わらない。 だけど・・・・・ 西門さんのことだって、友達としてとても大切で、失ったりはしたくない。
以前西門さんが好きだったって言うサラさん。 彼女とのすれ違いで、西門さんもサラさんもお互いを避けるようになり・・・・・ 優紀が作ったきっかけによって後悔を思い出に変えたけれど・・・・・
でも、あたしたちはどうなるの? サラさんのときみたいに・・・・・西門さんはあたしを避けるようになるんじゃないだろうか・・・・・? そうしたら・・・・・
「あたしは・・・・・西門さんと友達でいたいよ・・・・・」
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