***導火線 vol.19 〜類総つく〜***



 -rui-

 総二郎が、牧野に出した『問題』。

 それは、俺が聞けばすぐに答えは分かるもので。

 でも、それを牧野に教えるわけにはいかない。

 「・・・・・で、答えはわかったの?」
 そう聞いてみると、うつらうつらと半分眠っているような状態で揺れながら、口を開く牧野。
「う〜ん・・・・・。でも、まさか・・・・・」
 ぶつぶつと呟くように。
「今日は・・・・・何を言われたの?」
 バルコニーに2人きりでいた牧野と総二郎。
 キスするんじゃないかと思うくらい、接近していた2人。
 そんな光景を見て、俺が平気なわけない。
「・・・・・あたしに、答えを当てて欲しいって・・・・・。最近ずっと、ある人のことばっかり考えてるんだって。西門さんは・・・・・その人に恋してるんだって・・・・・それが・・・・・最大のヒント、だって・・・・・」
 そこまで話すと、牧野はぽすんと力なく俺の胸に寄りかかった。
 顔を覗き込んでみると、口を半ば開けたまま、目を瞑り静かな寝息をたてていた。
「・・・・・牧野、寝ちゃった・・・・・?」
「・・・・・ん・・・・・・」
「牧野・・・・・愛してる・・・・・」
 夢の中をゆらゆら揺られているような状態の牧野の唇を塞ぐ。
 深く口付けると、微かに反応が返ってくる。
 髪に手を差し入れながら、もっと深く、貪るように、夢中で口付ける。

 誰にも、渡せない。

 たとえ何があっても、牧野だけは、譲れない・・・・・。


 -tsukushi-
 頭がガンガン痛かった。
 すぐに二日酔いだということは理解できたけれど。

 ベッドに半身を起こし、溜息をつく。
 隣では、類が静かな寝息をたてていた。

 昨日、部屋に戻ってきてシャワーを浴びたあと、また類とワインを飲みながら話してたことは覚えてる。
 滋さんのことを話して、それから・・・・・
 西門さんことを、聞かれた気がするけど・・・・・そこから先のことは、ほとんど覚えてなかった。

 あたしはそっとベッドから出ると、シャワーを浴びようと浴室の扉を開けた。

 シャワーを浴びながら、ゆっくりと昨日のことが頭に蘇ってくる。

 西門さんが、バルコニーで話していたこと。

 『・・・・・俺の出した問題。俺が最近変なのは、お前のせいだって。それがどうしてかって・・・・・今のが、最大のヒントだよ』

 そんなこと、あるわけないってすぐに打ち消したかったのに。
 
 『俺は、そいつに恋してる』
 そう言って、あたしを見つめる西門さんの真剣な瞳が、あたしの頭にこびりついて離れない。

 ―――まさか、そんなことありえない。

 それでもその考えを、完全に否定することは出来なくて。

 「もう、どうすりゃいいのよ・・・・・」

 思わず溜息が漏れていった・・・・・。


 シャワーを終えて部屋に戻ると、類がベッドに座っていた。
「起きてたんだ」
「ん、今起きた。牧野、大丈夫?」
「うん、まー何とか」
 そう言ってちょっと笑って見せると、類は傍に行ったあたしの手を引き、ベッドに座らせた。
「昨日、ずいぶん飲んでたから」
「類が飲ませたんじゃん」
 そう言ってちょっと睨んでやると、類はにっこりと微笑む。
 まるでいたずらっ子みたいだ。
「何話してたか、覚えてる?」
「あんまり・・・・・滋さんのこととか、話してたよね」
「うん。それから・・・・・総二郎のこともね」
 探るような瞳に、思わずドキッとして目を逸らす。
「あ、朝ごはんて何時だっけ。みんなもう起きてるかな」
「まだ寝てるよ。朝食は8時って言ってた。まだ1時間以上あるよ」
 そう言いながら、あたしを逃がさないようにするように腰に手を回し、引き寄せる類。
「あの・・・・・」
「総二郎のことは、話したくない?」
 類の手が、あたしの頬を撫でる。
「俺といても・・・・・気になる?」
「そんな、こと・・・・・」
 胸がどきどきして、うまく答えられない。
 類の唇が、優しく唇に触れ、すぐに離れる。
「でも・・・・・離さないよ」
 耳元に囁き、頬にキスが落ちる。
「俺といるときは・・・・・他の男のことなんて、考えさせない・・・・・。そんなこと、出来ないくらい・・・・・俺でいっぱいにしてあげるから・・・・・」
 
 そしてまた唇に。
 
 息もつけないくらいの激しい口付け。

 気付けばあたしの体は、ベッドに横たえられていた・・・・・。








  

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