-rui-
総二郎が、牧野に出した『問題』。
それは、俺が聞けばすぐに答えは分かるもので。
でも、それを牧野に教えるわけにはいかない。
「・・・・・で、答えはわかったの?」 そう聞いてみると、うつらうつらと半分眠っているような状態で揺れながら、口を開く牧野。 「う〜ん・・・・・。でも、まさか・・・・・」 ぶつぶつと呟くように。 「今日は・・・・・何を言われたの?」 バルコニーに2人きりでいた牧野と総二郎。 キスするんじゃないかと思うくらい、接近していた2人。 そんな光景を見て、俺が平気なわけない。 「・・・・・あたしに、答えを当てて欲しいって・・・・・。最近ずっと、ある人のことばっかり考えてるんだって。西門さんは・・・・・その人に恋してるんだって・・・・・それが・・・・・最大のヒント、だって・・・・・」 そこまで話すと、牧野はぽすんと力なく俺の胸に寄りかかった。 顔を覗き込んでみると、口を半ば開けたまま、目を瞑り静かな寝息をたてていた。 「・・・・・牧野、寝ちゃった・・・・・?」 「・・・・・ん・・・・・・」 「牧野・・・・・愛してる・・・・・」 夢の中をゆらゆら揺られているような状態の牧野の唇を塞ぐ。 深く口付けると、微かに反応が返ってくる。 髪に手を差し入れながら、もっと深く、貪るように、夢中で口付ける。
誰にも、渡せない。
たとえ何があっても、牧野だけは、譲れない・・・・・。
-tsukushi- 頭がガンガン痛かった。 すぐに二日酔いだということは理解できたけれど。
ベッドに半身を起こし、溜息をつく。 隣では、類が静かな寝息をたてていた。
昨日、部屋に戻ってきてシャワーを浴びたあと、また類とワインを飲みながら話してたことは覚えてる。 滋さんのことを話して、それから・・・・・ 西門さんことを、聞かれた気がするけど・・・・・そこから先のことは、ほとんど覚えてなかった。
あたしはそっとベッドから出ると、シャワーを浴びようと浴室の扉を開けた。
シャワーを浴びながら、ゆっくりと昨日のことが頭に蘇ってくる。
西門さんが、バルコニーで話していたこと。
『・・・・・俺の出した問題。俺が最近変なのは、お前のせいだって。それがどうしてかって・・・・・今のが、最大のヒントだよ』
そんなこと、あるわけないってすぐに打ち消したかったのに。 『俺は、そいつに恋してる』 そう言って、あたしを見つめる西門さんの真剣な瞳が、あたしの頭にこびりついて離れない。
―――まさか、そんなことありえない。
それでもその考えを、完全に否定することは出来なくて。
「もう、どうすりゃいいのよ・・・・・」
思わず溜息が漏れていった・・・・・。
シャワーを終えて部屋に戻ると、類がベッドに座っていた。 「起きてたんだ」 「ん、今起きた。牧野、大丈夫?」 「うん、まー何とか」 そう言ってちょっと笑って見せると、類は傍に行ったあたしの手を引き、ベッドに座らせた。 「昨日、ずいぶん飲んでたから」 「類が飲ませたんじゃん」 そう言ってちょっと睨んでやると、類はにっこりと微笑む。 まるでいたずらっ子みたいだ。 「何話してたか、覚えてる?」 「あんまり・・・・・滋さんのこととか、話してたよね」 「うん。それから・・・・・総二郎のこともね」 探るような瞳に、思わずドキッとして目を逸らす。 「あ、朝ごはんて何時だっけ。みんなもう起きてるかな」 「まだ寝てるよ。朝食は8時って言ってた。まだ1時間以上あるよ」 そう言いながら、あたしを逃がさないようにするように腰に手を回し、引き寄せる類。 「あの・・・・・」 「総二郎のことは、話したくない?」 類の手が、あたしの頬を撫でる。 「俺といても・・・・・気になる?」 「そんな、こと・・・・・」 胸がどきどきして、うまく答えられない。 類の唇が、優しく唇に触れ、すぐに離れる。 「でも・・・・・離さないよ」 耳元に囁き、頬にキスが落ちる。 「俺といるときは・・・・・他の男のことなんて、考えさせない・・・・・。そんなこと、出来ないくらい・・・・・俺でいっぱいにしてあげるから・・・・・」 そしてまた唇に。 息もつけないくらいの激しい口付け。
気付けばあたしの体は、ベッドに横たえられていた・・・・・。
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