-tsukushi-
「滋さんが言ってた発表したいことって何だと思う?」 館山に向かう車での中であたしが類に聞くと、類は前を向いたまた口を開いた。 「ああ、そうか。牧野は知らないんだよね」 その言葉にあたしは驚いた。 「え?類は知ってるの?」 「なんとなく、予想はついてるっていうか・・・・・。たぶんあきらと総二郎のほうが詳しいと思うけど」 その話にあたしは言葉がなかった。 そんなこと、何も言ってなかったのに・・・・・。 「きっと、牧野に一番に伝えたかったんだと思うけどね。そういう情報って、流れてくるものなんだよ」 類がちらりと優しい笑みをあたしに向ける。
それがどんな情報かは知らないけれど。 類の優しい表情で、きっとそれがいい知らせなんだと確信した・・・・・。
「つくし!久しぶりい!」 別荘に着いた途端、部屋から出てきた滋さんが飛びついてきて、あたしは転びそうになる。 「良かった、来てくれて!楽しんで行ってね!」 「う、うん、ありがと」 滋さんに手を引かれ、部屋に入るとそこにはすでにお馴染みのメンバーが揃っていた。 「よお、遅かったな牧野」 西門さんがあたしに気付いて手を上げる。 「ごめん、ちょっと出るのが遅れちゃって・・・・・。みんな揃ってるんだ」 「お前らが着くの待ってたんだよ。優紀ちゃんと桜子が、ファミリーパークに行きたいんだって」 美作さんが呆れたように言うのを、桜子がちょっと横目で睨む。 「いいじゃないですか!行ったことないんですもの。テレビで見て・・・・・すごくきれいなところだったから」 「わたしも、行ってみたかったの。きっとつくしも好きなんじゃないかと思って・・・・・」 優紀が言うのを聞いて、あたしは頷いた。 「うん、あたしも行ってみたかったからいいよ。美作さんたち、面倒ならあたしたちだけでも・・・・・」 あたしの言葉に反応したのは西門さんだった。 「俺は行くよ。ここにいてもやることねえし。行く人数考えたら車2台は必要だろ?1台は俺が運転してくから」 「じゃ、俺も行く。1人で残っててもしょうがねえし」
結局全員で行くことになり・・・・・ 類の車にはあたしたちと優紀たちカップルの4人、残りは美作さんの車に乗っていくことになった。
「優紀は、滋さんに何か聞いてる?」 あたしが後部座席のほうに体を捻って聞くと、優紀が首を傾げた。 「何か発表があるってことは聞いてるけど・・・・。詳しいことはまだよ。でも、滋さんの様子だといい知らせみたいだね」 「うん、あたしもそう思う。すごく幸せそう」 そう言ってあたしも笑った。 道明寺のことを好きだった滋さん。 きっと・・・・・ あたしと道明寺が付き合っていた頃、本当はとても辛かったと思うから。 彼女には、幸せになって欲しいと思っていた。 ファミリーパークでは、女の子4人できゃあきゃあとはしゃぎながら見て回っていた。 色とりどりの花が溢れたその場所は楽園のようで、その香りに囲まれていると、本当に夢の中にいるようで・・・・・バイト漬けの毎日を一時忘れられるような気がしてた・・・・・・。 ついでに家族へのお土産のお花も買い、パークを出るころにはもう、日が落ちかけてきていた。
再び別荘に戻ったころには星が瞬き始め・・・・・
その別荘の前に、1台の黒塗りの車が止まっていることに気づいた。 「着いたみたい」 その車を見て、滋さんがにっこりと微笑む。 「誰かまだ来ることになってたの?」 そう聞くあたしに、満面の笑みで微笑む。 「まあね。後で紹介するから、部屋で待ってて」
「なんとな〜くだけど・・・・・わかってきたみたい」 部屋に戻ってそう言うと、類がくすりと笑った。 「牧野にしては察しがいいね」 「だって、滋さんがあんまりにも幸せそうなんだもん。あんなにしあわせそうな滋さんを見るのは久しぶり・・・・・」 あたしの言葉に、類はただ黙って微笑んでいた。 大きなダブルベッドに寝そべり、体を伸ばす類。 「疲れちゃった?」 あたしの言葉に頷いて 「少しね。ああいう場所って、女は好きだよね。良くあれだけ歩き回って疲れないな」 そう言う類がおかしくって、あたしは類の傍に行くとベッドに腰掛けた。 「なんか、親父くさいよ。類は出不精だもんね」 そう言って笑うあたしをちらりと見上げたかと思うと、ベッドについていたあたしの手をぐいっと引っ張った。 「わっ」 バランスを崩し、ベッドに倒れるあたし。 類が体を起こし―――
あっという間にベッドに組み敷かれる。
「な・・・・・」 「歩き回るのは疲れる。でも・・・・・牧野をこうするくらいの体力は残ってるよ?」 そう言ってにやりと笑うと、あたしの髪に手を差し入れた。 耳の後ろを擽るように掠める手の感触に、思わずビクリと体が震える。 「あ、あの、類・・・・・」 「―――夕食まで、まだ時間があるから・・・・・」 逃げようとするあたしの体を抑え、ゆっくりと覆いかぶさるように類の顔が近づき―――
きゅっと目を瞑った途端、唇が触れる感触。
何度も繰り返されるキスに、次第にあたしの体は痺れるような感覚を覚え、静かに類を受け入れていった・・・・・。
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