-rui-
牧野のアパートの前で、牧野が帰ってくるのを待つ。 総二郎の車で、帰ってくるって・・・・・・ なんとなくそれが気に入らない。 何で総二郎と? 今更、つまらない嫉妬だってわかってるけど・・・・・・ それでも、牧野が俺以外の男と一緒にいることに胸がざわつく。
暫く、赤く色づいてきた空をぼんやりと眺めていた。 そろそろ帰ってくるころだ。 そう思って視線をおろしたとき・・・・・・ 停められた車の前で、抱き合ってる2人の姿が目に入った。
あれは・・・・・・
その姿を目にするとすぐに、俺は駆け出していた。 「牧野!」 俺の声に反応して、牧野が俺のほうを見るが、総二郎は牧野を離そうとしない。
「総二郎、牧野離せよ!」 そう言って、牧野の肩を後ろからぐいっと引っ張る。 「何だよ、類。いいところだったのに」 ちっともそう思っていない口調で総二郎が俺を見る。 「どういうつもり!?」 俺が総二郎を睨み付けると、牧野が慌てたように俺を見る。 「る、類、これは・・・・・」 「怒るなよ。友情を確かめ合ってただけ。だろ?牧野」 「う、うん」 総二郎の言葉に素直に頷く牧野。 その頬は微かに赤く染まっていた。 「・・・・・何も、されてない?」 つい、疑りの目を向けてしまう。 「さ、されてないよ!送ってもらっただけだから」 「・・・・・・・」 「そういうこと。安心しろよ。俺は牧野にとって友達以上の何もんでもないからさ。お前が海外行っちまっても、俺が傍にいて変な虫が付かないようにするから安心しな」 「そういう総二郎が、一番心配」 「ひでえな、おい」 総二郎が楽しそうに笑う。 俺はちっとも楽しくなかったけど・・・・・。 「それより、お前の方はどうなの。問題は解決したのかよ」 総二郎の言葉に、俺ははっとして本来の目的を思い出した。 「ああ、そうだ。それを話したくて・・・・・牧野、これから時間いい?」 「あ、うん。じゃ・・・・・西門さん、送ってくれてありがとう」 牧野が総二郎の方を見ると、総二郎が微笑んで頷く。 「どういたしまして。何かあったらいつでも連絡寄越しな」 「うん」 そう言って牧野も微笑み・・・・・ 2人の間に、なんともいえない雰囲気が流れる。 なんとなく気に入らない。 俺の知らない間に、2人の距離が確実に縮まった気がする・・・・・。 ヤキモキしている俺を横目に見て、総二郎がくっと笑う。 「じゃ、そろそろ行くわ。類に睨まれてるし」 その言葉に、牧野ははっとしたように俺を見る。 「類、後で連絡しろよ。あきらも気にしてたし」 「・・・・・ああ、わかった」 そう答えると、総二郎は相変わらず口元に笑みを浮かべたまま、車に乗り込みさっさと行ってしまった・・・・・。
「・・・・・牧野、大丈夫だった?あきら・・・・・」 牧野の部屋に戻り、2人でお茶を飲みながら漸く落ち着いたころ、俺は聞いてみた。 「うん・・・・・。美作さんね、イタリアに行っちゃうんだって。仕事で・・・・・」 「イタリア・・・・・」 「うん。だから、あたしにプロポーズしたんだって言ってた。びっくりしたけど・・・・・ちゃんと話が出来てよかった。西門さんに一緒に行ってもらって・・・・・ちゃんと本当の気持ちが聞けたの。あたしも自分の気持ちを正直に話せて、良かったと思ってる。美作さんには・・・・・・それから西門さんにも、感謝してる。あたし、本当にいい友達もって良かったって思った」 「そっか・・・・・」 にっこりと、穏やかに微笑む牧野を見て、俺もほっとしていた。 あきらとは、俺もちゃんと話をしなくちゃいけないとは思ってるけど・・・・・・。 それより、なんとなくさっきからもやもやしているものを何とかしたい。 「・・・・・総二郎に、なんか言われた?」 そう聞いてみると、明らかにぎくりとした様子の牧野。 ・・・・・・わかりやす過ぎ。 「・・・・・・告白、されたんでしょ」 その言葉に、真っ赤になる牧野。 全く・・・・・ 嘘がつけないって言うのも厄介だよな。 そういうところもかわいいと思うけど・・・・・・ 「・・・・・牧野」 「え・・・・・んっ」 顔を上げた牧野の唇を、有無を言わせず塞ぐ。 驚く牧野の腰を引き寄せ、そのまま深く舌を絡め取る。 戸惑う牧野を抱きしめ、強引なキスを続け・・・・・・ 暫くして、牧野の体から力が抜けたのを見て、その体を解放する。 「はあ・・・・・・」 苦しそうに荒い息を繰り返す少し開いた唇と、潤んだ瞳が艶っぽくて・・・・・ 思わずそのまま押し倒しそうになるのを、牧野の腕が俺の胸を押し戻して止める。 「ま、待って、類・・・・・・」 「何で?」 「だって、話が・・・・・あるんじゃないの・・・・・?」 「そうだけど・・・・・牧野が悪い」 「は?あたし?」 「総二郎には、渡さないよ。誰にも、絶対渡さない」 じっと見つめて言えば、困ったように首を傾げる。 「西門さんは・・・・・友達だよ」 「でも、普通の友達じゃないよね」 「う・・・・・・」 「そうやって、無防備にするから・・・・・心配でしょうがない・・・・・・やっぱり、ダメだね」 「だ、だめって・・・・・・」 「牧野の傍からは、離れられない・・・・・ずっと、傍にいて離さないから・・・・・覚悟して」 そう言ってまた抱きしめて・・・・・ 何か言いたそうに口を開きかけた牧野の口を塞ぐ。
大事な話があるけど・・・・・・ その前に。 我慢は、体によくないから・・・・・・・・ね
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