あのまま、身を任せてしまっても良かったと思う。 でも、体が勝手に反応してしまった。 類に不満があるわけじゃない。 今まで、こんな気持ちになったことがないくらい、好き。 好き過ぎて、どうしていいかわからなくなるくらい、好きなのに。 あたしの心の中は、あたしが思っているよりずっと頑固みたいだった・・・・・。
翌日、類に車で家まで送ってもらったあたしは、家族達の追及を避けるようにさっさとバイト先へと向かった。 今日は、どうしても断れない仕事があるとかで類は迎えに来ない。 そのことになんとなくほっとしてるあたしがいた。 やっぱりちょっと気まずい気がしたから・・・。 「あれ、牧野、今日迎えは?」 店から出て1人歩き出したあたしに、話しかけてきたのは河野さんだった。 「あ、河野さん、お疲れ様です」 「お疲れ。今日、彼氏は?」 「今日は、仕事で・・・・」 「仕事?彼氏って大学生じゃないの?」 河野さんが不思議そうな顔をする。 「あ、ええと・・・彼の家、会社やってて・・・・」 「へえ、そうなんだ。すごいね」 どれほどすごいか、河野さんにはきっとわからないだろう・・・・・。 「じゃ、今日は1人か。それじゃ一緒に帰るか」 「そうですね」 とあたしは答えたが・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・」 なにやら後ろから不穏な気配を感じ、2人で恐る恐る振り返ると・・・・・・・・・・・・・ 「よォ、つくしちゃん」 「今お帰り?」 「に、西門さん、美作さん!?何で2人がここに?」 後ろには、にこやかに・・・?西門さんと美作さんが立っていた・・・・・。
「どうしたの?2人して」 河野さんは2人の迫力(?)に恐れをなしってそそくさと帰ってしまった・・・。 「お前に話があって」 と美作さん。 「今日は類が仕事で迎えに行けねえって聞いたからついでに送ってやろうと思ってきてみれば、誰かさんは浮気中と来たもんだ」 嫌味たらしく言う西門さんに、思わずむっとする。 「な!浮気なんてしてないわよ!」 「どうだかな〜。つくしちゃんは危なっかしいからな〜」 「類も大変だよな〜〜〜」 「ちょっと!」 どうしてこうも意地悪なんだか・・・。 この2人があたしを好きになるなんて、絶対ありえないっつーの。 「で?話って何よ?」 「ああ・・・・・お前、ゴールデンウィークってなんか予定ある?」 「ゴールデンウィーク?」 「どうせ暇だろ?」 「あのね・・・失礼だよ、西門さん。ゴールデンウィークは・・・まだ決まってないけど多分バイトが・・・」 「・・・・色気ねえなあ。いいか、バイト入れんなよ」 「はあ!?」 「出かけるからな」 「で、出かけるって?どこに!?」 「「NY」」
「NY!?」
「お前が司と話しつけられるよう、協力してやるよ」 「心配すんな、絶対会わせてやる」 「言っただろ?俺たちにできることならなんだってしてやるよ」
そう言って、西門さんと美作さんは自信満々で帰って行った・・・・。 「あの自信は、一体どこから来るんだろ・・・」 布団に入ってうとうとしながら、あたしはあの2人に言われたことを思い出していた。
「類には俺らから話しとく」 「大丈夫、あいつがいやだっつっても俺らが引っ張っていくから」 「旅費のことも心配すんな。出世払いにしといてやる」
何でそこまでしてくれるんだろ? あたしと類のことなのに・・・・・
少し不思議に思わないでもなかったが・・・・ 友達、だもんね・・・・ 押し寄せてくる睡魔には逆らえず、それ以上のことは考えられないまま眠りに落ちて行った・・・・・。
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