***もっと酔わせて vol.1 〜総つく〜***



 
 -tsukushi-

「なんで何も言わないんですか?」

カフェテリアで紅茶を飲むあたしの横に、いつの間にか座っていたのは桜子。

「何よ、突然」

「西門さんですよ。さっきからたくさんの女の子相手に―――先輩、彼女なんですから文句言う権利あるじゃないですか」

「文句なんて―――」

「もう!そんな暢気に構えてたらいつか取られちゃいますよ!?ただでさえもてるのに!」

興奮して身を乗り出す桜子を、ちらりと睨む。

「ここであたしが出てったりしたら、また嫌味言われるだけでしょ。だいたい・・・・・」

そこで言葉を止め、ちらりと女子大生たちに囲まれている西門さんを見る。

「あたしのこと、本当に彼女と思ってるかどうか・・・・・」

「はあ?」

「だって・・・・・あたし、好きって言ってもらったこととかないし」

「でも―――」

「酔った勢い。周りに乗せられて、『じゃ、付き合っちゃうか』って言われて、あたしも酔った勢いで乗っちゃったけど・・・・・」

「―――先輩は、本気じゃなかったんですか?」

桜子の言葉に、すぐには答えることができなかった。

「あたしは―――本気で向き合える人とじゃなきゃ、恋愛なんてできないよ」

逃げてるだけかもしれない。

でも。

あたしは、自分が傷つくのが怖かった・・・・・。



 -soujirou-

さっきから気になってるのはあいつのこと。

俺に背中を向けて、1人紅茶を飲んでいる。

俺がさっきからずっと、女子大生に囲まれてるってのにこっちを見ようともしない。

気にならないはずはない。

だけど一生懸命それを悟られないようにしてる感じ?

そういう意地っ張りなところもかわいいなんて、密かに思ってることなんて気づいちゃいないんだろうけど。

この西門総二郎が。

酔った勢い。

『じゃ、付き合っちゃうか』

その言葉に、あいつもげらげら笑いながら『いいよ〜』なんて頷いてた。

言っとくけど、俺は全然酔ってなんかなかった。

いつ言おうかってタイミングをはかってた。

酔ってたからって、いまさらあの言葉を撤回なんかさせない。

何とかごまかしてしまおうとしているあいつの、一挙手一投足も見逃さない。

この俺から、逃げられると思ったら大間違いだ。

これから、俺の『本気』を見せてやるから。

覚悟しとけよ、つくしちゃん―――。





  

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