-tsukushi-
「なんで何も言わないんですか?」
カフェテリアで紅茶を飲むあたしの横に、いつの間にか座っていたのは桜子。
「何よ、突然」
「西門さんですよ。さっきからたくさんの女の子相手に―――先輩、彼女なんですから文句言う権利あるじゃないですか」
「文句なんて―――」
「もう!そんな暢気に構えてたらいつか取られちゃいますよ!?ただでさえもてるのに!」
興奮して身を乗り出す桜子を、ちらりと睨む。
「ここであたしが出てったりしたら、また嫌味言われるだけでしょ。だいたい・・・・・」
そこで言葉を止め、ちらりと女子大生たちに囲まれている西門さんを見る。
「あたしのこと、本当に彼女と思ってるかどうか・・・・・」
「はあ?」
「だって・・・・・あたし、好きって言ってもらったこととかないし」
「でも―――」
「酔った勢い。周りに乗せられて、『じゃ、付き合っちゃうか』って言われて、あたしも酔った勢いで乗っちゃったけど・・・・・」
「―――先輩は、本気じゃなかったんですか?」
桜子の言葉に、すぐには答えることができなかった。
「あたしは―――本気で向き合える人とじゃなきゃ、恋愛なんてできないよ」
逃げてるだけかもしれない。
でも。
あたしは、自分が傷つくのが怖かった・・・・・。
-soujirou-
さっきから気になってるのはあいつのこと。
俺に背中を向けて、1人紅茶を飲んでいる。
俺がさっきからずっと、女子大生に囲まれてるってのにこっちを見ようともしない。
気にならないはずはない。
だけど一生懸命それを悟られないようにしてる感じ?
そういう意地っ張りなところもかわいいなんて、密かに思ってることなんて気づいちゃいないんだろうけど。
この西門総二郎が。
酔った勢い。
『じゃ、付き合っちゃうか』
その言葉に、あいつもげらげら笑いながら『いいよ〜』なんて頷いてた。
言っとくけど、俺は全然酔ってなんかなかった。
いつ言おうかってタイミングをはかってた。
酔ってたからって、いまさらあの言葉を撤回なんかさせない。
何とかごまかしてしまおうとしているあいつの、一挙手一投足も見逃さない。
この俺から、逃げられると思ったら大間違いだ。
これから、俺の『本気』を見せてやるから。
覚悟しとけよ、つくしちゃん―――。
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