-tsukushi-
2人からの思わぬプレゼントに感激していると―――
「おい!!お前らこんなとこで何やってんだよ!」 そう言って、甲板に顔を出したのは道明寺だった。 「あれ、司、どうかした?」 滋さんがきょとんとして聞くと、呆れたように肩をすくめる。 「どうかしたじゃねえよ。せっかくのパーティーだってのに、こんなところで何やってんだよ。来いよ、レイが呼んでる」 「レイが?何かあんのか?」 美作さんの問いに、にやりと笑う道明寺。 「娘の婚約発表だってさ」 「マジ?そりゃあ行かなきゃな。おい、行こうぜ」 西門さんが声をかけ、みんなで頷き合いながら歩き出す。 「牧野?どうしたの?」 類も歩き出そうとして、動こうとしないあたしを不思議そうに振り返る。 「ご、ごめん、あたしちょっと、忘れ物・・・・・・!」 「忘れ物?」 「すぐに追いかけるから、先に行ってて!!」 そう言って、あたしはみんなとは別方向へ走り出した。
向かうは自分の部屋。 道明寺を見たときに、なぜかそんな気がした。 きっと、今しかない。 あいつはまた行ってしまうから・・・・・・。
ホールでは、サラと、あのブロンドの男との子が肩を寄せ、満面の笑顔で中央に立っていた。 何度も見つめあい、微笑み合う2人が微笑ましくて、本当に幸せそうだった。
「牧野」 ホールに入ってみんなの一歩後ろに立って息を整えていたあたしの横に、いつの間にか道明寺が立っていた。 「道明寺」 「何してた?息切れしてるぜ」 「う、ちょっと・・・・・。それより道明寺、今回はいつまでいられるの?」 「ああ・・・・・俺は、そろそろ行く」 そう言って道明寺はちょっと笑った。 ―――やっぱり・・・・・。 「・・・・そっか」 「おどろかねえんだな。わかってたのか?」 「なんとなくね。この前が特別長かっただけで・・・・・あんたがそんなに長くいられるわけないよね」 「ん・・・・・仕方ねえな。仕事だから」 「・・・・・道明寺」 「ん?」 「・・・・・メリークリスマス。これ、あげる」 そう言ってあたしは、道明寺に持ってきたものを渡した。 道明寺が、ちょっと目を見開いてそれを受け取る。 「俺に?」 「ん。いろいろ、感謝の意味でね」 あたしの言葉に、道明寺がおかしそうにくっと笑った。 「なんだそりゃ。お前が俺に感謝?」 「してるんだよ、これでも」 「そうかあ?これ、開けてみていいか?」 と言って道明寺が包みを開けようとしたところへ、F3があたしたちに気づいてやってきた。 「牧野、いつの間に・・・・何してるの?」 類があたしの隣に来て、道明寺の様子に首を傾げる。 「これ、牧野からクリスマスプレゼントだってさ」 と言う道明寺の言葉に、3人が目を見開く。 「プレゼント?司に?」 「何で司だけ!俺らは牧野にだけ、用意したってのに」 「おい牧野、どういうことだよ、これ?」 3人の剣幕に後ずさりながらも、あたしは持っていたものを3人の前に差し出す。 「ちょ、ちょっと待って!あのね、美作さんと西門さんにも、用意してきたんだってば!類へのプレゼントは美作さんに預かってもらってたけど、3人へのプレゼントはあたしの部屋に置いてあったの。だから・・・・・」 「え・・・・・」 「マジで?」 美作さんと西門さんの顔色がぱっと変わる。 ただ1人、類だけはおもしろくなさそうだったけど・・・・・・。 「いつの間に、準備してたの?」 類が横目であたしを見る。 「家に1人でいたときに・・・・・。時間なかったから、たいしたもの用意できなかったんだけど・・・・・」 目の前で、ほぼ同時に3人が包みを開ける。 そして中身を見て、3人が3人とも黙り込み・・・・・ 「?どうしたの?」 類が不思議そうに首を傾げる。 あたしはちょっと溜息をついて・・・・・ 「やっぱり・・・・・気に入らなかった?子供っぽいかなって思ったんだけどさ、その、経済的にも、時間的にもそんなものくらいしか・・・・・」 しどろもどろになるあたしの頭に、大きな掌がぽんと乗せられた。 「とんでもねえ。こんなクリスマスプレゼントもらったのは初めてだぜ。サンキュー」 「道明寺・・・・・」 「ああ、マジで感激。一生忘れらんねえクリスマスプレゼントだぜ」 と言って美作さんもにやりと笑う。 「ん。もったいなくって誰にも見せたくねえな。ずっと、大事にするよ」 西門さんも、にっこりと嬉しそうに微笑んでくれた。
あたしはほっとして・・・・・そして嬉しくて、ちょっと泣きたくなってしまった。 「メリークリスマス。来年も・・・・・一緒に過ごせるかな」 「ああ、いいぜ」 「もちろん、そのために空けとくよ。類、そんなに怖い顔すんな」 「そうそう。クリスマスくらい、みんなで仲良くやろうぜ」 「調子いいな・・・・・・。まあいいけど。俺は、牧野が隣にいてくれるなら何でもいいよ」 そうして類は、あたしの肩を抱き・・・・・・ あっと思う間もなく、唇が重ねられていた。
一瞬後には、いたずらっ子のような眼差しで、あたしの顔を覗き込む類の顔。 そして呆れ顔でそれを見ながらも、楽しそうに笑っている3人。 それを後ろから、ニヤニヤと眺めている滋さんと桜子。 それから、彼氏と2人、幸せそうに肩を寄せ合って笑っている優紀。
みんなあたしの大切な人たち。 ずっと一緒にいたい・・・・・。 きっとこのときのクリスマスを、あたしは一生忘れない・・・・・・・ 類の腕の中で、あたしはこの幸せをかみ締めていた・・・・・・
ちなみに、あたしが3人に何をプレゼントしたかっていうと・・・・・?
それは後日、美作さんと西門さん、それからTVに映っていた道明寺の携帯に揺れていたストラップ・・・・・・ 少し不恰好だけど、持ち主のミニチュアのようなマスコットが、それぞれと一緒に耳元で微笑んでいた・・・・・。
fin.
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