***君しか見えない vol.5 〜風爽〜***

 


「呆れるかもしれないけど」

言いづらそうに翔太が口を開くのに、爽子は首を傾げた。

「少し、心配なんだ」

「心配?」

「うん・・・・・。同じ家で暮らすって」

「あ―――えーじお兄ちゃんのこと?」

「ん。―――疑ってるわけじゃ、ないよ。ただ、その、従兄弟って言ってもやっぱり―――男だしさ」

明らかに自分よりも大人で。

しかも爽子の初恋の相手だなんて聞かされたら、気にならないわけがなく。

「よく、わからないのだけれど―――それは、えーじお兄ちゃんが、あたしのことを女性として見ていると、そう思っているの?」

大きな瞳を瞬かせながら。

不思議そうに、でも冷静にそう言う爽子に、翔太はなんだか自分が恥ずかしくなる。

「そ、そうじゃないとは、言えないだろ?」

「でも・・・・・それはないと思うから」

「―――何でそんなこと言えんの?あの人と、何かあったの?」

訝しげに聞く翔太に対して、爽子はあくまでも冷静だった。

「だって・・・・・えーじお兄ちゃん、彼女いるって言ってたから」

「え」

その言葉に、翔太は一瞬目を丸くし。

ほっとしたのと同時に、恥ずかしさにカーッと頬を染めた。

「な、なんだ、そうか・・・・・・。ご、ごめん、知らなかったから―――」

そんな翔太の様子に、爽子もうれしそうに微笑み、頬を染めた。

「ううん。ちょっと嬉しい・・・・・。風早くんが、そんな風に思ってくれるなんて思わなかったから・・・・・」

無邪気に笑う爽子の笑顔が眩しくて。

少しでも疑ってしまった自分が恥ずかしくて。

翔太は熱くなった頬を手で押さえ、そっと息を吐きだしたのだった・・・・・。


                          fin.







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