「呆れるかもしれないけど」
言いづらそうに翔太が口を開くのに、爽子は首を傾げた。
「少し、心配なんだ」
「心配?」
「うん・・・・・。同じ家で暮らすって」
「あ―――えーじお兄ちゃんのこと?」
「ん。―――疑ってるわけじゃ、ないよ。ただ、その、従兄弟って言ってもやっぱり―――男だしさ」
明らかに自分よりも大人で。
しかも爽子の初恋の相手だなんて聞かされたら、気にならないわけがなく。
「よく、わからないのだけれど―――それは、えーじお兄ちゃんが、あたしのことを女性として見ていると、そう思っているの?」
大きな瞳を瞬かせながら。
不思議そうに、でも冷静にそう言う爽子に、翔太はなんだか自分が恥ずかしくなる。
「そ、そうじゃないとは、言えないだろ?」
「でも・・・・・それはないと思うから」
「―――何でそんなこと言えんの?あの人と、何かあったの?」
訝しげに聞く翔太に対して、爽子はあくまでも冷静だった。
「だって・・・・・えーじお兄ちゃん、彼女いるって言ってたから」
「え」
その言葉に、翔太は一瞬目を丸くし。
ほっとしたのと同時に、恥ずかしさにカーッと頬を染めた。
「な、なんだ、そうか・・・・・・。ご、ごめん、知らなかったから―――」
そんな翔太の様子に、爽子もうれしそうに微笑み、頬を染めた。
「ううん。ちょっと嬉しい・・・・・。風早くんが、そんな風に思ってくれるなんて思わなかったから・・・・・」
無邪気に笑う爽子の笑顔が眩しくて。
少しでも疑ってしまった自分が恥ずかしくて。
翔太は熱くなった頬を手で押さえ、そっと息を吐きだしたのだった・・・・・。
fin.
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