***君しか見えない vol.1 〜風爽〜***

 


「よお!座敷わらし!」

突然後ろから聞こえてきた声に、爽子と翔太は驚き、その場に立ち止まった。

「おい、爽子だろ?」

そしてその声に爽子が振り向き―――

「えーじお兄ちゃん!?」

黒い単車に乗り、ヘルメットを外したその男は、にっと笑って見せた。

ブリーチした金髪に切れ長の目、目鼻立ちの整ったその男は、バイクを降りると爽子の隣に立ち、その頭をぐしゃぐしゃとなでた。

「懐かしいなあお前!すぐわかったぜ」

馴れ馴れしいその様子に、思わずむっとする翔太。

「―――黒沼、誰?」

「あ―――あの、いとこのお兄ちゃんなの」

その言葉に、男は初めて翔太の存在に気付いたように目を瞬かせた。

「あれ―――もしかして爽子の彼氏?」

途端に、カーッと赤くなる爽子。

「へーえ、やるじゃん。ずいぶん爽やかくんだな」

「あの―――お兄ちゃんどうしてここに?」

「おお、お前のうち行ったら、まだ学校だって聞いたから、迎えに来てやったぜ」

「迎えにって―――」

「今日からおまえんちに世話になるから」

「「は!?」」

爽子と翔太の声が重なる。

「バイクのケツ乗って」

「あ、あの―――」

「ほら、早く」

「でも―――」

「座敷わらし!急げって!」

「は、はい!」

「あ、黒沼―――」

「か、風早くん、ごめんね、また明日―――」

そうしてあっという間に行ってしまった2人。

呆然とその場に立ちすくんでいた翔太は。

その後、部活を終えて学校から出て来た龍に、

「翔太、何してんの」

と声をかけられるまで動くことができなかったのだった・・・・・・。







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