「よお!座敷わらし!」
突然後ろから聞こえてきた声に、爽子と翔太は驚き、その場に立ち止まった。
「おい、爽子だろ?」
そしてその声に爽子が振り向き―――
「えーじお兄ちゃん!?」
黒い単車に乗り、ヘルメットを外したその男は、にっと笑って見せた。
ブリーチした金髪に切れ長の目、目鼻立ちの整ったその男は、バイクを降りると爽子の隣に立ち、その頭をぐしゃぐしゃとなでた。
「懐かしいなあお前!すぐわかったぜ」
馴れ馴れしいその様子に、思わずむっとする翔太。
「―――黒沼、誰?」
「あ―――あの、いとこのお兄ちゃんなの」
その言葉に、男は初めて翔太の存在に気付いたように目を瞬かせた。
「あれ―――もしかして爽子の彼氏?」
途端に、カーッと赤くなる爽子。
「へーえ、やるじゃん。ずいぶん爽やかくんだな」
「あの―――お兄ちゃんどうしてここに?」
「おお、お前のうち行ったら、まだ学校だって聞いたから、迎えに来てやったぜ」
「迎えにって―――」
「今日からおまえんちに世話になるから」
「「は!?」」
爽子と翔太の声が重なる。
「バイクのケツ乗って」
「あ、あの―――」
「ほら、早く」
「でも―――」
「座敷わらし!急げって!」
「は、はい!」
「あ、黒沼―――」
「か、風早くん、ごめんね、また明日―――」
そうしてあっという間に行ってしまった2人。
呆然とその場に立ちすくんでいた翔太は。
その後、部活を終えて学校から出て来た龍に、
「翔太、何してんの」
と声をかけられるまで動くことができなかったのだった・・・・・・。
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