-rui-
淡いクリームイエローのミニワンピース。
柔らかなシフォン素材のそれは牧野をいつもよりも女の子らしく、とてもかわいらしく見せていた。
だけど、それが俺以外の男が選んだものだと思うと、平気な顔はしていられない。
くだらないやきもちだってわかってても、もやもやとした気持ちをどうすることもできなかった。
とりあえず、あいつの選んだ服をいつまでも着てる牧野をどうにかしたかった。
「ねえ、だったらうちに戻れば服なんて着替えられるし―――」
そう言う牧野の手を取り、店に入る。
「良いから、ここで好きな服選んで」
「そんなこと言われても・・・・・・」
「牧野が選べないなら、俺が選ぶ」
「類!」
ぐいっと俺の手を引き立ち止まる牧野。
俺はちらりと牧野を見て、そして小さく溜め息をついた。
「―――ごめん」
「どうしたの?らしくないよ?」
戸惑った表情を浮かべる牧野を、俺はじっと見つめた。
「俺が、アランにやきもち妬いたらおかしい?」
俺の言葉に、牧野が目を見開いた。
「アランは、静さんの恋人だよ?」
「わかってる。それでも、牧野がアランの選んだ服を着てるっていうのが気に入らないんだ。家に行くまで待ちきれない。ここで、着替えていこう」
そう言って俺はまた、牧野の手を引いたのだった・・・・・。
「―――満足?」
あの店で買ったピンクのチュニックブラウスにホワイトデニムのショートパンツ。
ワンピースよりもこっちのほうが活動的な牧野に似合ってると思うのは俺の勝手な思い込みかな。
「ん。かわいい」
にっこりと笑って見せると、牧野はちょっと呆れ顔で、息をついた。
「こんな高い服じゃなくっても、もっと安いので十分なのに」
「言っただろ?それまで我慢できない」
牧野の腰を引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
海の見える公園で、俺と牧野は潮風に吹かれていた。
「すごく、かわいい」
俺の言葉に、牧野の頬が染まる。
「ありがと・・・・・。すごく嬉しいけど。でもなんか悪い気がする」
「誰に?アランに?」
「それもだけど・・・・・類にも。こんな高い服・・・・・」
「これは、俺の我侭だから、俺に悪いなんて思う必要ないよ。アランには・・・・・俺もちょっと悪いかなとは思うけど。でもしょうがない」
「もう」
困ったように俺を見上げる牧野の唇に、素早くキスをする。
「・・・・・意外と、独占欲強い?」
照れ隠しのようにふざけてそう言う牧野を、逃げられないように腰を抱きながら俺は笑った。
「かもね。片想いが長かった分、独り占めしたい気持ちが強いのかも」
「服、ありがとう」
「どういたしまして。また、プレゼントさせて」
「理由もないのにもらえないよ。今日のは、特別」
「理由ならあるよ。俺が、牧野に着て欲しいんだ」
「無駄遣いはだめだよ」
困ったように眉を寄せる牧野に。
俺はあることを思いついて、牧野の耳元に囁いた。
「じゃあ、牧野が管理して」
「管理?」
「そ。俺が無駄遣いできないように・・・・・ずっと傍にいて、見張ってれば良いよ」
意味がわからない、という風に首を傾げる牧野。
しばらく俺がそんな牧野をじっと見つめていると―――
突然それに思い当たったように頬を真っ赤に染め上げた。
「そ、そんなこと―――」
「今すぐじゃなくていい。だけど、俺はそうなりたいと思ってるから―――ゆっくりで良いから、考えておいて」
牧野の瞳が揺れる。
でも、戸惑ってるだけじゃないって思っても良いかな。
牧野もきっと、俺と同じ気持ちでいてくれるって・・・・・。
「好きだよ、牧野」
もう何度目かの告白に、それでもその頬を薔薇色に染めて、牧野がはにかむ。
「あたしも、類が好きだよ」
チュッと、啄むようなキスを送る。
「さっきから、みんな見てるよ」
人目を気にし始める牧野に、俺はちょっと笑った。
「良いよ。牧野とだったら、誰に見られても構わない。―――それよりも」
「なに?」
「―――もっと、キスしよう―――」
fin.
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