-tsukushi-
「牧野が、好きだよ」
まさに直球勝負。
普段はあまり感情を表に出さない花沢類の言葉は、まっすぐにあたしの胸に入り込んできてその薄茶色のビー玉のような瞳から、逃れられなくなる。
F4が高校を卒業して1年。
あたしと道明寺は結局別れることになり、F4との交流もなくなる―――はずだった。
でも、花沢類は相変わらずあの非常階段に顔を出すし、美作さんや西門さんも3日と開けず高等部に顔を出す。
わざとらしくうざがって見せても、あの人たちには何の意味もないんだ・・・・・。
そんなことを実感して結局はF3とつるんでいることの多いあたし。
そして今日、あたしが高等部を卒業する日。
花沢類から何度目かの告白をされたのだった・・・・・。
「あ、ありがと」
何度聞いても、この人に言われると照れてしまう。
だって絵に描いたような王子様が、あたしのことを好きだなんて、やっぱり信じられなくて。
「俺、本気だよ?あんたがまだ司を忘れられないって言うなら、忘れるまで待つよ。俺の気持ちはずっと変わらない」
「道明寺のことは、もう吹っ切れてるよ。そんなに未練がましくない」
「だったら、付き合おうよ」
にっこりと、天使の微笑。
「でも・・・・・」
「俺のことが嫌い?」
「嫌いなわけ、ないでしょ」
あたしの答えに、花沢類は満足そうに微笑む。
「じゃ、問題ないよ。俺、ずっと牧野のこと大事にするよ」
ドキッとするほどきれいな男の子。
嬉しくないわけない。
本当は、あたしだって類のことが好きになってた。
だけど、この人の瞳を間近に見てしまうと言えなくなる。
素直じゃないのは、昔からだけど・・・・・
チュッと、唇が軽く触れる。
ボーっとしてる間にまたキスされて、あたしは真っ赤になる。
「ちょ、ちょっと、ずるい!また勝手に・・・・・!」
「ボーっとしてるからだよ。油断してるとまたするから、気をつけたほうがいいよ」
「何よそれ、自分勝手なんだから!」
「いいじゃん、彼女なんだし」
「彼女って―――」
あたしまだ、付き合うって言ってないのに。
そう思ったけど、否定する気はなくて・・・・・
そのまま口をつぐんでしまったら、花沢類がまた優しく微笑み、あたしの髪を撫でた。
「俺には、牧野だけ。だから、付き合って―――」
いつもの軽い調子じゃなくて。
真剣な瞳でそう言うから、あたしの胸が異常な速さで鼓動を打ち始める。
「俺の、彼女になって―――」
自然に、頷いていた。
何も言えなくて。
類の瞳に映るあたしを見ていた。
類の顔がゆっくり近づいて、また唇が重なる。
でも今度のは触れるだけじゃない。
何度も、啄むような口付けの後、あたしの唇を割って入ってきた類の舌が、歯列をなぞり、あたしの舌を絡め取った・・・・・・。
背中がぞくっとするような、感じたことない快感があたしを熱くしていった・・・・・。
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