「類・・・・・牧野・・・・・。俺は認めねえぞ!俺が今まで何のために・・・・・!」 司が肩を震わせ、俺たちを睨みつける。 俺は、その視線を受け止めながら口を開いた。 「・・・・・ごめん、司。司ががんばってたのは知ってる。でも・・・・・それは牧野のためだけじゃないはずだよ。道明寺のため・・・・・自分のためでもあるだろ?司はもう、立派な道明寺の後継者だ」 「知った風な口を聞くな!」 「それでも・・・・・俺はもう、牧野を離すつもりはないよ」 「類、てめえ―――」
司が、俺に掴みかかろうと1歩踏み出す。
俺はその瞬間、牧野の手を握りなおし、走り出した。
司の横をすり抜け、教会の前の通りを駆け抜ける。
「待て!!」 司の声が追いかけてくる。 当然そんなの待てるわけがない。
教会の前を通り過ぎようとした時――― 総二郎とあきらが、呆気に取られてこちらを見ているの目に入った。 そして―――
「類!牧野さん!」
教会からウェディングドレス姿で出てきたのは、静だった。 「静さん!ごめんなさい!」 牧野の言葉に、静がふわりと微笑むのが見えた。 「牧野さん!受け取って!!」 そう言って―――
真っ白なブーケが、放り投げられた。
牧野が手を伸ばし、ブーケをキャッチする。
「類!牧野さん!幸せにね!」 手を振る静。 俺はそんな静に笑みを返し・・・・・ 「おい!捕まんなよ!」 「そのまま日本まで逃げちまえ!!」 総二郎とあきらの声が、俺たちを後押しした・・・・・。
俺は牧野の手を握ったまま走り続け―――
ちらりと振り向けば、牧野も懸命に俺の手を握り、走っていた。
そして、その向こうにはあきらと総二郎に抑えられている司の姿が見えた。
「お前ら、ふざけんな―――!」
暫く走り続けた俺は、牧野の息が苦しそうに響き始めたのを感じ、足を緩めた。 もう、司の姿はなかった。 「・・・・・後悔、しない?」 手を繋ぎ、ゆっくり歩きながら牧野の顔を見つめる。 牧野が俺を見上げ、にっこりと微笑んだ。 「するわけ、ない。道明寺にはすごく悪いことしたって思うけど・・・・・。でも・・・・・もう、自分に嘘はつけない」 揺ぎ無い、牧野の瞳。 ずっと、見守ってきた牧野。 司と一緒に幸せになるなら、それでいいと思ってた。
だけど今は・・・・・・
「幸せに、するよ」 俺の言葉に、牧野が驚いて俺を見上げる。
目の前には、小さな教会。 おれたちはその前に立ち、お互いを見つめた。 「たとえ何があっても、もうこの手は離さない。俺がきっと幸せにしてみせるから・・・・・。俺に、ついてきて・・・・・」 「類・・・・・」 牧野の大きな瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。
「・・・・・愛してる・・・・・」 そっとその体を抱きしめ、耳元に囁く。 「類・・・・・あたしも・・・・・愛してる・・・・・」 涙声で紡がれる牧野の言葉。 その言葉がゆっくりと俺の胸に響いてきたころ―――
目の前の教会の鐘が、静かに鳴り始めた・・・・・。
俺たちは自然に体を離すと、そのまま見つめあい―――
ゆっくりと、唇を重ねた。
鐘の音が鳴り終わるまで、何度も口付けながら。
俺たちは、永遠の愛を誓った・・・・・。
fin.
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