自分だけが好きなんじゃないかと。
爽子は自分が思うほど、自分を好きじゃないかもしれないと、時々不安に思うことがある。
だけど―――
「か、風早くん」
いつの間にか、翔太の席の傍まで来ていた爽子の声に、翔太が振り向く。
「何?黒沼」
「あの、これ・・・・・」
そう言って爽子が差し出したのは、かわいらしくラッピングされた小さな包みで・・・・・
「え?これって・・・・・」
「カップケーキ、あの、調理実習で作ったの。よかったら―――」
頬を染め、震える手でおずおずと差し出されるそれを見つめ―――
感動して、思わず周りが見えなくなる。
「あ―――ありがとう、黒沼!すげえ嬉しい!!」
その大きな声に、教室中の注目を集めているのにも気づかず。
「俺、大事に食べるから!」
満面の笑顔でそういう翔太に、爽子の顔はこれ以上ないくらいに赤く染めあがり―――
「憎たらしいほど初々しいね」
「いっそのことマイクつけて全校生徒に聞かせてやりゃあいいのに」
と、あやねと千鶴が言っていたことなど、2人は知る由もなかった・・・・・。
fin.
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