「あの浴衣、黒沼が縫ったんだって」
翔太の言葉に、爽子の頬がぽっと染まる。
「う、うん」
「すごいね。あんなことも、できちゃうんだ」
「い、意外と簡単で―――すごく、楽しかったし・・・・・」
翔太のことを想いながら。
一針一針、想いを込めながら縫った。
冬に帽子を編んだ時みたいに。
すごく、幸せな気持ちだった―――
「―――俺も、今度何か作ろうかな」
「え―――」
「黒沼のために」
「わ、わたし?」
「うん。黒沼の喜ぶ顔が、見たいから―――」
照れくさそうにえへへと笑う。
でもその顔が見れただけで。
わたしは嬉しいんだよ。
2人で歩く帰り道。
ちょっと寒い風が吹く中で。
2人の周りだけは春のように暖かかった・・・・・。
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