My Little Angel 3


「何で俺が、おめえと一緒に住まなきゃなんねえんだよ。しかもこんなきったねえ部屋で」
 これ以上ないくらいの仏頂面で新一が呟く。
 快斗の部屋で、人間の子供の姿から悪魔の姿へ戻った新一。
 ぼやきたいのは快斗も同じだった。
「そりゃあこっちの台詞だっつーの。聞いてなかったぜ、こんな話。おめえは聞いてたんじゃねえのか?」
「チラッとはな。俺、哀のヤツとは気があわねえんだ。いつもこうるせえし。適当に聞いてたから詳し
い内容まではわかんなかったんだよ」
 苦虫を噛み潰したような表情の新一。
 ―――ま、普通は天使と悪魔って気が合うわけねえよな。
 1人納得して、頷く快斗。
「そういや、おまえ何やらかしたんだ?」
「ああ?」
「何かまずいことやったんだろ?で、それを助けたらんが天上界を追い出された」
 その内容までは、快斗は聞いていない。
 と、新一の顔が今までのふてぶてしいものとは違う、どこか傷ついたような表情を見せた。
「―――おめえに、話す気はねえよ」
 ぷいっと顔を背けてしまう。
 それ以上聞いても何も答えないということを態度で示しているようで、快斗は肩を竦めて諦めた。
「ま、いいけどよ。」

 どう考えても、うまくいくようには思えない2人の生活が、今始まった。
 これから、どうなることやら・・・。


 一方・・・

 らんは、マンションの窓からボーっと外を眺めていた。
 それを見た哀が、そっと後ろに立ち、声をかける。
「気になる?彼らが」
 らんは哀のほうをチラッと見て、少し微笑んだ。2人とも、元の子供の姿に戻っている。
「大丈夫かなあ。あの2人」
「ま、相性は最悪ね。新一が魔界に戻るか、快斗が出ていくか・・・」
 それを聞いたらんが、ちょっと驚いたように目を見開いた。
「え?相性悪いの?あの2人」
 らんの言葉に、今度は哀が驚く。滅多に表情を変える事のない哀が、目を瞬かせる。
「その心配をしてるんじゃないの?」
「わたしは・・・あの2人、ごはんちゃんと食べられるかなあって・・・。ね、ごはんくらい作りに行
っても良いでしょう?」
 両手を合わせ、上目遣いに哀の瞳を覗き込む。このかわいらしいお願いポーズに、普段クールな哀の
ポーカーフェイスが崩れる。
「・・・仕様がないわね。でも、終わったらすぐにここに戻るのよ」
「うん!!ありがとう、哀!」
 嬉しそうに、にっこりと微笑むらんを見て、哀は苦笑いする。
 ―――甘いわね、わたしも・・・
「ねえ、哀、さっき言ってたこと・・・」
「さっき言ってたこと?」
「うん。2人の相性は最悪だって・・・。どうしてそう思うの?」
「どうしてって・・・。らんはそう思わないの?」
「うん。だって、あの2人良く似てるもの」
「ええ?似てる?あの2人が?」
「うん。2人とも、すっごく優しいでしょ?」
 満面の微笑でそう言い切ったらんを、哀は呆然と見つめた。
「優しすぎるくらい、優しいの。快斗も、新一も・・・。あんなふうに言い合っててもね、きっとお互
いのこと、嫌いなんかじゃないと思うよ?」
 まるで、何年も付き合ってきた恋人のことを話しているような、その優しい表情を見て、哀は溜息を
ついた。
 ―――これだから、あなたは・・・。大天使様のご心配も分かるというものだわ・・・。



 
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