「何拗ねてんのさ」
「拗ねてなんかない」
あたしの言葉に、類がため息をつく。
可愛くない態度。
自分でもよくわかってる。
だけど止まらなくて。
花沢の会社の取引先に頼まれて、あるファッション誌の表紙を飾ることになった類。
出来上がってきたその写真を今日見せられて。
言葉が出てこなかった。
長身で小顔。薄茶のさら髪とビー玉のようなきれいな瞳、陶器のような白い肌。
思わず見惚れてしまう類の姿はさすがだけど。
それ以上に目を引いたのはその類の首にしなだれかかるようにして寄り添っているモデルの女性。
細く括れたウエストも、流れるような栗色の髪も、整った目鼻立ちも、あたしにはないものばかり。
少し静さんに似た面差しのそのモデルと類の姿が、一瞬本当に静さんと類に見えてしまったのだ。
「―――きれいなモデルさんだね」
「そお?モデルなんて、みんな同じに見えるよ」
「でもきれいだよ。―――静さん、みたい・・・・・」
あたしの言葉に、類は一瞬目を見開き。
ああ、というように大きく頷いた。
「それで拗ねてたんだ」
「だ、だから拗ねてなんか―――」
「モデルの顔なんか、覚えてないけど」
そう言って類はポケットをごそごそと探り始めた。
「これ、牧野に似合うかと思って、撮影で使ってたやつもらってきた」
差し出されたのは、ハート型にカットされたインカローズのピアス。
小さなキュービックジルコニアが3つ、ハートと一緒に揺れていた。
「ピアスの穴、せっかく開けたから、プレゼント」
そう言ってにっこり笑う類は。
本当にあたしだけを見つめてくれてるみたいで、あたしは途端にうれしくなってしまう。
「ありがと・・・・・」
「機嫌、治った?」
類の言葉にこくりとうなずくあたしは。
かなり類にべた惚れだと、自覚せざるを得なかった・・・・・。
fin.
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