いつものバーで飲んでいて。
ふと店の入り口に目を向ければ、あいつの姿。
久しぶりに見たあいつは、薄化粧して、見たことのない男と一緒だった。
予想以上にきれいになっていたあいつに、思わず目を奪われる。
もう、1年以上も会っていなかったけれど―――
忘れたことはなかった。
いや、いつもあいつのことを考えていた自分に、驚きさえ覚えていた。
いつの間にか、自分の中で大きくなっていたあいつの存在。
そして、今目の前に見知らぬ男といることにいら立ちを覚え―――
思わず、席を立った。
「どうしたの?西門さん」
隣にいた女が俺の腕に触れる。
別に一緒に飲んでいたわけじゃない。
1、2度会ったことがある程度だ。
それも俺は覚えていなかったけれど。
勝手に隣に座ってきただけの話。
俺は女の手を振り払うと、迷わず牧野の傍へ行った。
テーブル席で男と2人飲んでいた牧野が、俺に気付く。
大きく見開かれる瞳。
「西門さん!びっくりした。ここにいたの?全然気づかなくて―――」
牧野の言葉も全部聞かず、俺は牧野の腕をとり歩き出した。
「え?ちょっと、どこ行くの?あたし友達と―――」
「そんなの、放っておけよ」
「そんな―――何かあったの?ねえ―――」
店の外に連れ出し、くるりと振り返る。
戸惑ったように俺を見上げる瞳。
「―――西門さん?」
「―――あれ、誰?友達って?」
「同じ会社の人。1年先輩で、いろいろ仕事教えてもらってて・・・・・」
「よく2人で飲みに行ったりすんの?」
「よくってわけじゃ―――いつもは他の人も一緒だけど、今日はたまたま―――帰りが一緒になって、暇なら飲みに行かないかって誘われたから」
こんなバーに連れてくるってことは、相手は牧野に気があるんじゃないのか?
何となくそんな気がして。
「ねえ、もう戻らなきゃ。きっとびっくりしてるよ」
そう言って戻ろうとする牧野の手を、再び引き戻す。
「行くなよ」
「え?」
「行くな。あいつの―――他の男のとこへなんか、行かせねえ」
「何言ってるの・・・・・?」
首を傾げる牧野。
逃がさないように。
俺はその体を抱きしめた。
「ちょっと、何して―――!」
驚いて逃げようとする牧野の体を、さらに強く抱きこむ。
「―――会いたかった」
ぴたりと、牧野の動きが止まる。
「ずっと―――忘れられなかった。お前が・・・・・」
「―――嘘、でしょ」
「嘘じゃねえよ。ずっと―――会いたかったんだ。お前に―――」
想いが溢れて来て、うまく言葉にできない。
こんな経験は初めてで。
どうしたらいいかわからない。
ただずっと。
牧野を抱きしめていた。
もう二度と、離さないように―――
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