***恋心 76 〜つかつく〜***



  背の高いあいつの隣に、ブロンドの美女。

絵になる2人。

思わずそこに行くのに躊躇してしまうほど。

だけど・・・・・

「牧野!何やってんだよ、早く来いよ!」

あたしに気付いた道明寺の声に、あたしはあいつの元に駆け寄る。

何こいつ、というようにあたしを睨みつける美女。

「こいつは俺の婚約者だ。仕事のことはもういいだろ?今日はもう帰ってくれ」

道明寺の冷たい言葉に、女は一瞬悔しそうに顔を歪め、くるりと背を向けて行ってしまった。

「―――よかったの?怒ってたみたいだけど」

「いいんだよ。どうせどうでもいい仕事の話をしに来ただけだ」

「どうでもいいって―――」

「今は、こっちの方が大事」

そう言って、道明寺があたしの肩を引き寄せる。

きれいに整った顔が間近に迫って、胸が高鳴る。

「せっかく時間が取れたんだ。2人きりの時間を満喫したい」

「・・・・・うん、あたしも」

たまには素直になってみようかな。

そんな風に思ってその広い胸に擦りよれば、微かにあいつが照れてる気配。

「・・・・・キスしていいか?」

―――ムードないんだから。

でも、今日は特別。

黙ってそっと目を閉じれば。

優しくて甘い、キスが降りてきた・・・・・。







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