手すりにもたれてまどろんでいる。
そんないつもの光景に、なぜかドキッとする。
やわらかな風が、牧野の髪を揺らし、ピンク色の頬にかかった。
そっと手を伸ばし、指先で髪を掬う。
「ん・・・・・」
わずかに身じろぎし、ゆっくりと瞼が開く。
「・・・・・類」
「おはよ・・・・・昨日もバイトだった?」
「あー、うん。あたし、また寝ちゃってたんだ」
「疲れてるんでしょ。たまには休めば」
「そうもいかないよ。うーん、でもちょっとすっきりしたみたい。良く寝た!」
腕を伸ばして気持ちよさげに深呼吸する牧野。
そんな姿も眩しくて。
思わず目を細める。
「―――たまには、2人でどこか行こうよ」
俺の言葉に、牧野がキョトンとする。
「どこかって、どこに?」
「どこでもいいよ。牧野が行きたいところい連れてってあげるから・・・・・デートしよう」
その瞬間、牧野の頬が朱に染まる。
こういう反応が、可愛くて好きだ。
「ダメ?」
だめ押しに、じっと目を見つめる。
「だ、だめじゃないけど―――急に言われても―――」
「じゃ、考えといて。今度の休みは俺とデート」
カーッと顔を赤らめ、こくこくと頷くその様子は、小動物みたいでかわいい。
「―――牧野」
「え?」
顔を上げた瞬間に、チュッと触れるだけのキス。
途端に固まる牧野。
俺はそんな牧野の耳元で、そっと囁いた。
「―――楽しみにしてるから」
だから―――その日は牧野を1人占めさせて。
俺だけを見ていて・・・・・
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