***恋心 75 〜類つく〜***



  手すりにもたれてまどろんでいる。

そんないつもの光景に、なぜかドキッとする。

やわらかな風が、牧野の髪を揺らし、ピンク色の頬にかかった。

そっと手を伸ばし、指先で髪を掬う。

「ん・・・・・」

わずかに身じろぎし、ゆっくりと瞼が開く。

「・・・・・類」

「おはよ・・・・・昨日もバイトだった?」

「あー、うん。あたし、また寝ちゃってたんだ」

「疲れてるんでしょ。たまには休めば」

「そうもいかないよ。うーん、でもちょっとすっきりしたみたい。良く寝た!」

腕を伸ばして気持ちよさげに深呼吸する牧野。

そんな姿も眩しくて。

思わず目を細める。

「―――たまには、2人でどこか行こうよ」

俺の言葉に、牧野がキョトンとする。

「どこかって、どこに?」

「どこでもいいよ。牧野が行きたいところい連れてってあげるから・・・・・デートしよう」

その瞬間、牧野の頬が朱に染まる。

こういう反応が、可愛くて好きだ。

「ダメ?」

だめ押しに、じっと目を見つめる。

「だ、だめじゃないけど―――急に言われても―――」

「じゃ、考えといて。今度の休みは俺とデート」

カーッと顔を赤らめ、こくこくと頷くその様子は、小動物みたいでかわいい。

「―――牧野」

「え?」

顔を上げた瞬間に、チュッと触れるだけのキス。

途端に固まる牧野。

俺はそんな牧野の耳元で、そっと囁いた。

「―――楽しみにしてるから」

だから―――その日は牧野を1人占めさせて。

俺だけを見ていて・・・・・







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