ケーキ作りを習いたくて。
そんなの、単なる口実。
だって、そうでもしなくちゃここに1人で来る理由なんか思いつかなかったから。
だけど、そんなあたしの気持ちもどこか見透かしてる美作さんがそこにいて。
「今日は、ビターなチョコレートケーキが食いてぇな」
にやりと笑っておねだり。
その視線にドキドキして、うまく目が合わせられない。
「ど、努力はする、けど、うまくできるかどうか―――」
「いいよ、お前が作ったものなら」
ドキッとして、思わずボールを落としそうになる。
「な、何急に―――」
「俺は、お前が作ったものなら何でもいい」
じっと見つめる瞳はいつもよりも熱っぽい気がして。
ドキドキして、手が震えてしまう。
「―――意味、わかる?」
「い―――意味って―――」
「お前のことが好きだって、言ってるつもりなんだけど」
「じょ、冗談なら―――」
「あいにく、俺もお前に対してそんな冗談言えねえよ」
美作さんの手が、震えるあたしの手を包む。
「俺の勘違いじゃなきゃ―――この手が震えてるのは、俺のせいなんじゃねえの?」
ドキドキが、止まらない。
あたしの頬に、美作さんの唇が触れる。
「―――お前の気持ち、聞かせろよ」
耳元に囁かれる声は、どんなケーキよりも甘くって。
勇気を出して、彼の顔を見上げれば。
優しい彼の瞳にぶつかる。
「ん―――?」
きっと。
どんなあたしでも包み込んでくれる。
「―――あたしも、好き―――」
明日もきっと。
あなたに会いに、甘いケーキを作りに来るよ―――。
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